ギリシャ空軍は老朽化したF-4EファントムIIの後継として、フランスからラファールを導入することを決定。2021年1月25日(現地時間)にアテネにおいて、ギリシャのパナギオトプロス国防大臣とフランスのパルリ軍事大臣が出席し、調印式が実施されました。ギリシャはフランスを除くヨーロッパ諸国で、初めてラファールを採用する国となります。
日本でも2020年度限りで、航空自衛隊の実戦部隊からF-4EJファントムIIが引退しますが、ギリシャ空軍でもF-4EファントムIIの老朽化にともない、後継機を模索していました。ラファールを導入することでギリシャとフランス両国が合意したのは、2020年9月14日のことです。
現在ギリシャ空軍では、西ギリシャ地方イリア県にある、アンドラヴィダ空軍基地の117戦闘航空団に所属する第338飛行隊のみがF-4EファントムIIを運用しています。ギリシャではキプロス紛争に端を発する「ピース・イカロス」計画のもと、1974年からアメリカの支援を受けF-4EとRF-4Eを導入しました。
その後、近代化改修計画「ピース・イカロス2000」により、36機のF-4EがF/A-18Cで採用しているAPG-65GYレーダーやGPSシステム、ヘッドアップディスプレイ(HUD)にHOTAS概念を導入したコックピットなどに改修。視程外(BVR)ミサイルのAIM-120 AMRAAM運用能力のほか、レーザー照準ポッドも装備して精密誘導爆弾ペイブウェイも運用可能となりました。
しかし導入開始から40年あまり、近代化改修からも20年近くが経過して機体の老朽化が進行。ギリシャは財政破綻後の厳しい予算編成の中、後継機を模索することになっていました。そして、フランスのラファールを18機(中古機12機・新造機6機)導入することを決定したのです。
フランスは主力戦闘機ラファールを最新型のF3-Rに更新中のほか、さらに次世代型F4の開発を始めており、世代交代の時期に当たっていました。ギリシャ空軍は過去にミラージュF1、そして現在もF-16とともにミラージュ2000シリーズを運用しており、フランス製戦闘機の導入は2000年のミラージュ2000-5以来となります。
ラファールの輸出はカタール、エジプト、インドに続く4か国目となりますが、ヨーロッパに輸出されるのはギリシャが初めて。また、NATO加盟国でも初のケースとなります。
調印後、フランスのパルリ軍事大臣は、フランスとギリシャの緊密な関係がさらに深まることを歓迎すると語り、フランス航空宇宙軍の戦闘機が4月にギリシャで開催される多国間合同訓練に参加することを表明。4機のミラージュ2000、8機のラファールがホスト国ギリシャのほか、アメリカ、イスラエル、UAE、イタリアの各空軍部隊と訓練すると明らかにしました。
また、2月末から3月初めにかけては、フランス海軍の空母シャルル・ド・ゴールとギリシャ海軍のフリゲートが共同訓練を実施し、両国の相互運用性を高める取り組みを続けるとのこと。リビアやシリアをめぐる情勢から、ギリシャを含む地中海東部地域は緊張が高まっており、ヨーロッパ全体の平和と安定のため、フランスはギリシャと手を取り合っていくとコメントしました。
調印式に出席し、ギリシャ国防省のテオドロス・ラギオス装備調達局長と発注契約書にサインしたダッソー・アビアシオンのエリップ・トラピエCEOは「ギリシャはヨーロッパの主要なパートナー国、NATO主要加盟国であり、フランスの特別なパートナーであると同時に、ダッソー・アビアシオンにとっても45年以上にわたる関係を築いてきた国です。その関係をこれからも継続することができ、嬉しく思うとともにギリシャから寄せられた期待に応えるべく、私たちの持てるすべてを総動員することをお約束します」とのコメントを発表しています。
契約によると、導入する18機のうち12機はフランス航空宇宙軍で使用された中古機、6機は新しくダッソー・アビアシオンが製造するものとなり、これに付帯してパイロットや整備員の教育、各種のサポートが提供されるとのこと。ギリシャへの納入は2021年夏から始まり、2年間で納入完了となります。また、サポート契約の期間は4年半になるとのことです。
<出典・引用>
フランス軍事省 プレスリリース
ダッソー・アビアシオン プレスリリース
Image:フランス軍事省/ダッソー・アビアシオン/ギリシャ空軍
(咲村珠樹)