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人口密度を3Dマップで可視化 「数字では分からない街の個性」が見えてくる

 数値データを、色の濃淡をつけて可視化したグラフである「ヒートマップ」。「熱いor冷たい料理を食べた際の体温変化」といったもので、目にした方も多いのではないでしょうか。

 いわゆる「データ可視化」の最たる例として、そこから様々な「気づき」が得られるこのグラフですが、「地図を使ったデータ可視化」をライフワークにしているTwitterユーザーの投稿が、先日話題となりました。

  •  「東京・名古屋・大阪・福岡の人口密度を3Dマップにしてみた。ほぼ同一縮尺。こうしてみると東京はやっぱりでかいな・・・」

     そんなつぶやきとともに、にゃんこそばさんが自身のTwitter上に投稿したのは、日本の三大都市圏(東京・大阪・名古屋)に、福岡を加えた四都市周辺地図の人口密度※を3Dマップにしたヒートマップ図。オープンデータを元に、「メッシュ」と呼ばれる格子状に区切って、数値をグラフとして可視化。今回は100メートル間隔のメッシュで表しています。(※人口密度とは、1平方キロメートル当たりの面積における人口を表した数値)

     ひょっとしたら、「大都市の人口分布って大して変わらないんじゃない?」と思う方も多いのでは。しかしながら、今回にゃんこそばさんによって“見える化”されたそれは、それぞれ全く違う様相を見せているんです。

    ■ 東京

     まずは、日本の首都である東京を始めとした関東都市圏。「ドーナツ化現象」という言葉もあるように、23区や横浜市といった、行政機関や大企業の本社機能が集約している地域の人口密度はさして多くありません。

    東京を始めとした首都圏の3Dマップ。北関東に人口が密集。

     では、郊外に満遍なく点在しているのかというと、実はそうでもないんです。にゃんこそばさんのマップ図によると、集約しているのは埼玉県や栃木県といった「北関東」に至る地域。筆者は以前、埼玉県に住んでいた時期があるのですがこれは驚きです。

     ちなみに私は、千葉県にも住んでいた時期があるのですが、千葉に関しては、千葉市以東でも人口が密集している地域があることにびっくり。一方で、房総半島の特に南端は色の判別すらされていないことについては、改めて納得がいきました。

     とはいえ、船橋や市川といったベッドタウンになっている一帯でも、先述の埼玉や栃木ほどの「色」になっていないことを鑑みると、「住む」という選択肢においては優先度は低いのかもしれませんね。

    ■ 大阪

     さてお次は、いわゆる「京阪神」と呼ばれる関西都市圏。こちらは三者三様の結果になっています。

    「京阪神」の関西都市圏。三者三様の特色が。

     まずは大阪市ですが、こちらは東京と同じく、中心部よりも郊外に人口が集中しているドーナツ化現象が見られます。

     しかしながら、注目したいのはその集約地域。これが「北摂」と呼ばれる北部一帯に集約されているんです。これは恐らく、北部の方が京都や神戸への距離感や、新幹線の路線といった交通面のアクセスの利便性といったところで、こういう結果になっていると考えられますね。

     ちなみに大阪の場合は、南部に「関西国際空港」の存在もありますが、こちらについては、海外からの渡航者に対しての貢献度が高く、人口面には反映されていないと推察されます。

     京都市と神戸市も見てみましょう。まず京都ですが、これはやはりというべきか、京都市に圧倒的に集約されています。京都府というのは日本でもかなり特殊な地域で、「京都市」と「それ以外」では、その様相が180度異なる地域。

     筆者も京都で仕事をしたことがありますが、この“2つ”は全くの別物。関西の交通要衝のひとつでもある阪急電鉄が、支線の嵐山線を含めて京都市で止まっており、またJRの本線(新快速)に関しても、滋賀県に路線が延びていることもあり、“恩恵”はその一帯に得られる結果となっています。

     一方、神戸市ですがここもまた特殊。加古川市から大阪府に入る海沿いの一帯がほぼ同じ「色」になっています。実は、この神戸を仕事で訪問したことが、今回のマップを制作するきっかけだったそう。

     「山と海に挟まれた狭い空間に住宅がぎっしり立ち並んでいて、違った形での『密集』を実感したんです」と語るにゃんこそばさん。普段は東京在住のにゃんこそばさんにとって、この経験は大変衝撃的だったそうで、今回の結果についても、関東平野に街が広がっている「東京」に対し、大阪湾内に沿って人が密集している「大阪」の構図を見て、その「正体」が分かったことが一番だったそう。

     余談ですが筆者は兵庫県出身。“地元民”として、にゃんこそばさんの感想に大いに共感しました。

    私の場合、生まれは姫路市になるのですが、姫路もまた海沿いに面した街。兵庫はかつて5つの国に分かれていたこともあり、「日本の縮図」とも形容されるのですが、一方で交通網はというと、「逆T字」で瀬戸内海一帯に加え、姫路以北が整備されていましたが、他は残念ながらほぼ未開だった実情があります。

     また、古くから「天下の台所」として栄えた大阪に近く、「姫路城」といった城下町が栄えていた歴史的側面も相まって、兵庫に関しては現在でも、瀬戸内海沿いに集約していますね。

    ■ 名古屋

     これだけでも十二分な検証結果を得ているわけですが、にゃんこそばさんは今回、名古屋と福岡についても調査。これもまた個性的な結果に。

     まず名古屋市を始めとした中京都市圏については、オーソドックスなドーナツ化現象が起きています。さらにその集約地域についても、一宮市がやや集約してはいますが、比較的満遍なく分散。

     ただし、隣県の観点で見ると、新幹線の路線上であり、JR路線が充実している岐阜県の方が、三重県よりも密集しており、やはり交通の便というのは如何ともい難い優位性を出していることがうかがえる結果となっています。

    今回もっともオーソドックスな結果となった名古屋都市圏。

    ■ 福岡

     そして最後に福岡都市圏。ここは、「二大都市」である福岡市・北九州市ともに市中心部に人口が密集しています。それぞれ交通の要所として栄えた側面があるために、全てが密集していると推察されますね。

    地方都市の発展の典型ともいえる形状の福岡都市圏。今後大きな変化があり得るエリアでもあります。

     逆に考えると、今後郊外都市の開発が進んでくると、名古屋のように周囲も広く色づき、さらには東京や大阪のような構造になる可能性もある、今後もっとも変化が起きうる一帯とも考えられるのではないでしょうか。

     と、ついつい深く分析してみたくなる今回のにゃんこそばさんの「作品」。しかしながら、「データ可視化」というのは、本来はそういった用途になるものでもあります。

    ■ 数字では分からない街の個性

     「何をいまさらな話」と言う方もおられるかもしれませんが、逆に言えば、そのように「納得」させるために、こうしたデータ群は必要不可欠な存在です。筆者は長年、データ分析を生業のひとつにしておりましたが、こうしたデータを可視化させることが大変な作業を有することを、身をもって体感しております。

     これを、本業は金融関連の仕事をしながら、「ライフワーク」として、今回の四大都市に加え、ロンドン・ニューヨーク・上海・メルボルン・ナイル川といった海外都市にまで“食指”を伸ばすにゃんこそばの飽くなき探求心には、ひとりのデータ分析者として深く敬意を表したいと思います。

     ちなみに、にゃんこそばさんは今回のマップ図の結果を見て、「『人口○○万人』のような数字では分からない街の個性を知ることが出来ました」のが一番の気づきだったそう。

     それもあってなのか、先日5分・10分・15分間隔で行ける範囲が分かるという「15cities」という地図アプリを開発。

     こちらは、にゃんこそばさんが、自身のサイトで公開している地図を一定レベルまで拡大した上で、タップした地点からそれぞれ5分・10分・15分間隔で移動可能な地点を、徒歩もしくは自転車で示すという簡易ナビゲーションシステム。物件探しなどにおいて記される「徒歩〇分圏内」という表現を、自身が制作したマップ図で可視化させたものとなっています。

    徒歩もしくは自転車で5分・10分・15分で行ける地図アプリを開発したにゃんこそばさん。現在は一部機能を制限しているものの、公開当初は大きな反響に。

     これもまた反響を呼び、現在は機能を制限した上で公開しているとのことですが、今回ご紹介した3Dマップも含め、こういったものを作れるということだけでも特筆すべきことですが、それ以前に、そもそも作りたいという気概はあっても、そうそう具現化できるものではありません。

     微力ではございますが、この記事を通じて、にゃんこそばさんのこれまでの取り組みが少しでも多くの方に伝わればと願っています。

    <記事化協力>
    にゃんこそばさん(Twitter:@ShinagawaJP/HP:https://www.5656map.jp/

    (向山純平)

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