おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

日曜大工で「手作り防音室」 音楽好きが挑むオープンソースプロジェクト

 普段から音楽を嗜む方にとって、大きな悩みになるのが「音漏れ」。対策に防音設備を取り付けようとするものの、高価なために断念する人は多いはず。そんな「手軽に防音室が入手できれば」を叶えてみようと、Twitterユーザーのオープンソースプロジェクトさんがある提案を行っています。

  •  「防音室欲しい人がたくさんいるので作り方や性能をどんどん公開しています」というつぶやきとともに投稿された写真には、箱型の個室らしきものと、音響による周波数解析のグラフが写っています。実はこれ、防音室オープンソースプロジェクトさんが作った「手作り防音室」。

     「プロトタイプ(試作機)1号機がほぼほぼ完成したので、宣伝もかねて投稿したんですよ」と語る、防音室オープンソースプロジェクトさん自身は学生時代からジャズが趣味。

     現在では一般向けのジャズサークルを立ち上げ、他にも楽器レンタルやバンド活動など、音楽と密接な生活をしている人物。そのため、「防音室問題」に関しては、身近な課題として以前から捉えていたそうです。

     「防音室は市販品がかなり高価なんですが、そのため、自作をしてそれを情報公開している人は実は結構いたりします。私もそれぞれとても参考にしています」

     「ただ、多くの場合、『防音室を作ってみた』で止まってしまっているんです。『作って使って改善して』というサイクルまで回っていないのが現状です」

     「なので、『防音室オープンソースプロジェクト』は、そのサイクルを回しつつ、都度設計改善もしていき、さらにその情報をオープンソース化したら、みんなの参考になっていいんやないかなと思ったのがきっかけなんです」

     今回、防音室オープンソースプロジェクトさんが公開した「プロトタイプ防音室」は、ホームセンターで販売されている石膏ボードや発泡ポリエチレンシートなどを使用。これらを用いて、遮音シートを覆うような構造で設計されています。

    ホームセンターで販売されている石膏ボードを用いて組み上げた「プロトタイプ防音室」。

    遮音シートを発泡ポリエチレンシートと石膏ボードで覆う構造。

     肝心の防音性はというと、別の投稿でご友人がサックスで検証しているのですが、外では鮮明に聞こえた音色が防音室内では完全に遮断されています。これはすごい。

     ただ、この防音室はいわば「たたき台」。投稿のリプライ(返信)欄でも指摘があったように、通気性や空調面など改善すべき点があるのも確かです。

     また石膏ボードは、廃棄をする際に、一般の家庭ごみではなく、「産業廃棄物」として処理しなくてはいけない素材。その点も留意しなければなりません。

     さらに、安価とはいえ、今回要した材料費は約10万弱。そして組み上げるには一定レベルの工作スキルも必要。大いなる一歩を踏んだとはいえ、将来的に「オープンソース」として流通していくには、様々な設計改善をしなくてはなりません。

     とはいえ、興味深いプロジェクトであることも確か。それは、「正直こんなに反響がくるとは思わなかったですね(笑)」と、防音室オープンソースプロジェクトさんが思わず振り返るほどに、多くの人が寄せられた投稿に対する反応からもいえます。また音楽以外にも、ゲームや育児といった別ジャンルの「音」にも需要がありそうで、「完全体」が待ち遠しくもある挑戦です。

     そして一連の反響を振り返り、防音室オープンソースプロジェクトさんはある気づきを得たとのこと。

     「『防音室が欲しい人』というのは、本当は『部屋が欲しい』というより、『そこにしかできない、やりたいことがある』人だと思うんです。なので、このプロジェクトを通じて、そんな人が減少できれば何よりですね」

    今月10月に製作工房「防音室研究所」をオープン。

     ちなみに「防音室オープンソースプロジェクト」ですが、実は1人だけで行っている「ワンオペ」。そして今月10月に、福岡県福岡市にて製作工房「防音室研究所」をオープンしたとのことです。今後の動向に要注目ですね。

    <記事化協力>
    防音室オープンソースプロジェクトさん(@openbouonshitsu)

    (向山純平)

    あわせて読みたい関連記事
  • ジョウロが笛に、バットが弦楽器に シュールで美しい日用品楽器の世界
    インターネット, おもしろ

    ジョウロが笛に、バットが弦楽器に シュールで美しい日用品楽器の世界

  • 「CDが売れない時代」に衝撃のアイデア GLAYのCDプレイヤー付き限定盤が大反響
    エンタメ, 音楽・映像

    「CDが売れない時代」に衝撃のアイデア GLAYのCDプレイヤー付き限定盤が大反…

  • 音楽教育を守る会とJASRAC、音楽教室の著作権使用料規定で合意
    社会, 経済

    音楽教育を守る会とJASRAC、音楽教室の著作権使用料規定で合意

  • 「フリーBGMデータベース」が無償提供開始  のべ2万曲弱の中から検索可能
    企業・サービス, 経済

    「フリーBGMデータベース」が無償提供開始  のべ2万曲弱の中から検索可能

  • 任天堂が独自のスマホ向け音楽配信サービス「Nintendo Music」を開始
    ゲーム, ニュース・話題

    任天堂がスマホ向け音楽サービス「Nintendo Music」を発表 いきなり配…

  • 「くーるーきっとくるー(来る きっと来る)」は聞き間違い
    エンタメ, 音楽・映像

    ホラー映画「リング」主題歌の「くーるーきっとくるー」は聞き間違い な……なんだっ…

  • BGM作成アプリ『AmBeat』
    商品・物販, 経済

    動画や画像のイメージをもとにBGMを自動生成 ヤマハのiPhone向けアプリ「A…

  • 画像提供:木佐貫洋平さん(@LimbaTrip)
    インターネット, おもしろ

    カリンバ奏者のエレキカリンバ動画に「かっこいい!」「欲しい!」と称賛の声

  • 音楽と数学から生まれるカオス。両手タッピングギタリスト・出嶌達也。
    エンタメ, 音楽・映像

    「数式に記された愛」で知的好奇心を満たす希代のエンターテイナー 両手タッピングギ…

  • これが私の「Born this way」。最高に自分らしいスタイルでガガ様のライブを楽しんだ車椅子ギャルの最強な一日。
    エンタメ, 音楽・映像

    これが私の「Born this way」 最高に自分らしいスタイルでガガ様のライ…

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • YouTube、永久停止クリエイターに「再出発の機会」 新チャンネル申請を可能にする試験導入を発表
    インターネット, サービス・テクノロジー

    YouTube、永久停止クリエイターに「再出発の機会」 新チャンネル申請を可能に…

  • 南インド伝統のチキンカレー「ケララチキンカレー」
    商品・物販, 経済

    松のやが南インド伝統の味を再現 「ケララチキンカレー」新発売

  • 毛玉とるとる Pro(KC-NW825)
    商品・物販, 経済

    ストッキングやタイツも可の毛玉取り器誕生 マクセルイズミ「毛玉とるとる Pro」…

  • キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化
    商品・物販, 経済

    キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

  • 時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言
    社会, 経済

    時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

  • ゴロっとチキンのカレーナポ
    商品・物販, 経済

    パンチョ初の人気投票1位「カレーナポ」が進化 期間限定で復刻登場

  • トピックス

    1. 藝大卒の声楽家が1時間1000円で自分を貸し出す理由 フリー芸術家ならではの戦略

      藝大卒の声楽家が1時間1000円で自分を貸し出す理由 フリー芸術家ならではの戦略

      プロの声楽家として活動する傍ら、1時間1000円から自分の時間を「レンタル」している男性。キャリア豊…
    2. ドムドムが“カニまるごと”の衝撃バーガーを再販 新作コチュジャン味を食べてみた

      ドムドムが“カニまるごと”の衝撃バーガーを再販 新作コチュジャン味を食べてみた

      ドムドムハンバーガーは10月14日に、カニを丸ごと挟んだ「丸ごと!!カニバーガー」を販売開始しました…
    3. 丸山製麺が「ラーメン大好き小泉さん」とコラボ!小麦麺使用の新感覚「らーめん缶」を実食

      丸山製麺が「ラーメン大好き小泉さん」とコラボ!小麦麺使用の新感覚「らーめん缶」を実食

      丸山製麺が10月6日から、人気ラーメン漫画「ラーメン大好き小泉さん」とコラボした「らーめん缶」を、東…

    編集部おすすめ

    1. 毛玉とるとる Pro(KC-NW825)

      ストッキングやタイツも可の毛玉取り器誕生 マクセルイズミ「毛玉とるとる Pro」を発売

      マクセルイズミ株式会社は、ストッキングやタイツなどの繊細な衣類にも対応する毛玉取り器の新モデル、「毛玉とるとる Pro(KC-NW825)」…
    2. キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

      キヤノンの名機が「ガシャポン」で復活 歴代カメラ5種を精密ミニチュア化

      キヤノンが、バンダイの「ガシャポン」とコラボレーション。歴代のカメラとレンズをミニチュア化した「Canon ミニチュアカメラコレクション」を…
    3. 時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信、男性カメラマンを厳重注意 生配信中に「支持率下げてやる」発言

      時事通信社は10月9日、自民党本部での取材中に「支持率下げてやる」などと発言した本社映像センター写真部の男性カメラマンを厳重注意したと発表し…
    4. 「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      「ちいかわの世界に行きたい」ファン、考えた末に鎧さん化 再現度がガチすぎた

      言わずと知れた人気コンテンツ「ちいかわ」。かわいくもハードなあの作品世界に入っていきたいと願う人は多いはず。筆者もその1人です。しかし二頭身…
    5. ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      ネカフェの個室に不気味なトランプが……Xユーザーの“恐怖体験”に17万いいね

      キーボードに差し込まれたトランプのジョーカーと、その裏に書かれた「げぇむすたあと」の文字。Xユーザーの「たーけ」さんが、たまたま入ったネット…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト