奈良時代や平安時代の貴族たちというのは、現代でいうと上級公務員に当たります。そう考えると、参内も「出勤」と捉えることができるかも。

 奈良女子大学古代衣装同好会の寿奈理さんが、天平衣装の女性たちがエスカレーターに乗る場面を「奈良のごく一般的なキャリアウーマンたちの出勤風景です」とTwitterに投稿。まるで現代と古代の出勤風景が融合したような、不思議な動画となりました。

 この光景は、2022年1月22日・23日に開催された「大立山まつり2022 奈良ちとせ祝ぐ寿ぐ(ほぐほぐ)まつり」のステージイベントに出演した際、撮影されたオフショットとのこと。

 奈良女子大学古代衣装同好会は、今年で活動8年目となる学内非公認サークル。古代の服飾史やヘアスタイルなどを学ぶかたわら、主に奈良県内のお祭りやイベントに天平衣装や着物といった古代衣裳を着用し、参加しているといいます。

 活動を通じて伝統文化の発信や存続、また地域振興に寄与しているという、寿奈理さんら古代衣装同好会の皆さん。奈良ちとせ祝ぐ寿ぐまつりには、古代衣装愛好家の銀とき子さんからの誘いにより、毎年サークル内の有志が参加しているそうです。

 今回、新型コロナウイルス禍により有観客での開催が中止となり、映像配信での開催となった奈良ちとせ祝ぐ寿ぐまつり。古代衣装研究会の皆さんは、天平時代(8世紀中頃)の命婦(女性官僚)をイメージした衣装で参加しました。

 動画が撮影されたのは、イベント当日の空き時間。天平衣装を着た状態でギャップのある行動をとってみよう!と、遊び心で色々試したうちのひとつだったんだとか。

静々と上っていく(奈良女子大学古代衣装同好会 寿奈理さん提供)

 命婦が女性官僚ということは、現代でいうと上級職の公務員に当たります。もちろん当時にエスカレーターはありませんが、同じように始業時間前、このように連れ立って出勤(出仕)していたのかもしれません。

 同じく、参内する貴族の乗る牛車が通りに連なり、渋滞していたかもしれません。同僚と愚痴をこぼすこともあったかも……と思うと、古代が俄然身近に思えてきますね。

 新型コロナウイルス禍により各種イベントが中止となったことで、同好会は対外的に活動をアピールする機会が減り、新入部員の勧誘もままならなかった、と寿奈理さん。思わぬ形でツイートが注目を集めたことについて「サークルの活動に興味をもってくださる方が増え、大変喜ばしく思っております」と語っています。

 また「注目していただくことができたのは、素晴らしいお衣装ならびに機会を提供してくださった各関係者の皆様のおかげです」と、サークルの活動を支えてくれる方々への感謝も忘れません。

 これからも活動を通じ、服飾面から見た天平文化の紹介などを続けていく奈良女子大学古代衣装同好会の皆さん。見かけた際には、現代と地続きである太古の昔を生きた人々に思いを馳せてみるのもいいかもしれません。

<記事化協力>
奈良女子大学古代衣装同好会 寿奈理さん(@sunari_suyari)

(咲村珠樹)