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PCE版「妖怪道中記」の隠しパスワードついに判明 30有余年の謎に終止符

 1988年にPCエンジンにて発売された、横スクロール型アクションゲーム「妖怪道中記」。このソフトには発売から30有余年が経過しても、判明していない「隠された秘密」がありました。

 タイトル画面で特定のコマンドを入力すると「スタッフインフォメーションボード」という画面に切り替わります。そこでパスワードを入力すると隠しメッセージが表示されるという、当時の開発スタッフが仕込んだ、いわゆる「裏ワザ」があるのですが、全33個あるはずのパスワードのうち、3つが判明していませんでした。

 この謎に挑んだのがYouTubeチャンネル「4ST(ヨンスタ)」の運営者であるSheNaさん(以下、シイナさん)。動画内やSNSで協力者を募り、総数531垓4838京4174兆4323億9822万9504通りというパスワード候補の中から探し当てるという途方もない作業の末、動画公開から約2か月後となる2022年2月に最後の隠しパスワードを探し当てることに成功しました。

  •  「4ST」は、なつかしのゲームに隠された秘密やウワサ、やりこみ要素などをとことん深掘りする、レトロゲームファン必見のYouTubeチャンネル。知的好奇心をくすぐられる動画が多数公開されています。

     今回のパスワード解析は2021年12月17日に投稿された「ナムコの知られざる天才スーパーハッカーが仕込んだ隠しメッセージの謎とそれを廻る都市伝説|妖怪道中記」という動画が発端となりました。

    4STにて公開されている「妖怪道中記」をテーマにした動画

     動画内で今回の裏ワザを紹介すると共に、当時ナムコに在籍していたプログラマー・宇田川治久氏が仕込んだ、いまだ明らかになっていないパスワードが3つ存在することを説明し、解析の協力者を募集しました。ちなみにシイナさんは今動画をつくるにあたり、宇田川氏とコンタクトをとっていますが、パスワードについては全く覚えていなかったそうです。

    動画内でパスワード解析の協力者を募集

     30年以上前に仕込まれたプログラムの解析に挑むという、ロマンあふれる企画には多数の協力者が参戦。その結果、2022年2月20日についに条件に合致するパスワードが発見され、宇田川氏への確認を持って、丸2か月にわたるパスワード探しに終止符が打たれました。

     今回のパスワード解析を、個人的に興味深く感じていた筆者。シイナさんに事の経緯をうかがってみました。

    ■ 順調に進むかと思われた作業……しかし最後の「14桁パスワード」探しは難航

     シイナさんがパスワード解析を開始したのは動画公開の約1か月前。2021年11月中旬ごろに解析ツールの制作者である「はむ」さん、以前から妖怪道中記のパスワードを調べていた「おばきい」さんと共にツールを走らせました。

     隠された3つのパスワードは8桁、11桁、14桁という情報以外はない状態からのスタート。3人では最も発見が容易であるはずの8桁のパスワードすら見つからない、という状況でしたが、動画を公開して協力者を募ると事態は一変。

     翌日には8桁のパスワードが発見され、さらに翌日SNSにて「妖怪道中記隠しパスワード解析選手権」と題して広く呼びかけを行うと、その日のうちに11桁のパスワードが発見。このまま順調に進むと思われました。

    8桁のパスワードは現在は使われていない電話番号

    11桁のパスワードは当時の開発スタッフの名前を示唆する内容

     しかし、最後の14桁のパスワード解析は難航します。作業を進めて行くうちに、アルゴリズム的に一致するパスワードは発見されるものの、宇田川氏の記憶にある条件(意味を成す文字列)に合致しておらず。これにより絞り込まれた1億6162万4586通りのパスワードの中から、目視と総当たりで「真の14桁パスワード」を探す作業に移行していきます。

     そしてその11日後、作業開始から丸2か月が経過した2月20日に、ついに真のパスワードが有志により発見されました。

     導き出された真の14桁パスワードは「なむこむな!756-2311」。パスワード入力画面で並列する文字を時計回り→反時計回りに入力した単語+ナムコの電話番号という、「意味を成す文字列」の条件とも合致しています。

    2か月も見つからなかった最後のパスワード

    ■ 531垓分の1を掘り当てる宝探し 「集合知の凄さをまざまざと見せつけられました」

     現代の科学と人間の力が融合することによって、約531垓通りという途方もない組み合わせの中から、たったひとつの正解を導き出すことに成功した今回の試みは、まるで大昔に地中に埋められた宝物を探すような、ロマンに満ちた発掘作業のよう。

     長年の謎に終止符を打った感想をうかがうと、開口一番「この解析は私の力ではなく『妖怪道中記・隠しパスワード解析選手権』に参加してくださったはむさんを始め、多くの方の力によって達成されたということを始めにお伝えしておきたいと思います」と、協力してくれた方への感謝の意を述べました。

     動画を通して興味を持ったプログラマーが集まり、そこから様々なツールができ、多様な考え方で抽出を進めることができ、大勢の方の力で一気に作業が進んだ、という今回のパスワード解析。「はむさんもおっしゃっていましたが、集合知の凄さをまざまざと見せつけられました」と、作業を振り返り感慨深げに話してくれました。

     動画制作は普段は一人で行っているというシイナさんですが、YouTubeチャンネル「4ST」の登録者数は18万人を超える人気チャンネルに。かねてより「いつか動画を見てくださっている方と一緒に何かしたいな」と考えていたのだそう。

     大勢の有志が集まり、ソフトに隠された秘密を解き明かしたことを「多くの方と同じ方向を向いて時間を共有できたことに嬉しさと楽しさ、喜び、興奮、そして感謝を感じています。スポーツの団体戦で入賞したときのような……」と表現。ひとりでは決して味わうことの出来ない、強い達成感を得られたようです。

    ■ 今後の展望は?「動画に限らず、多くの方と一緒に楽しめる企画ができれば」

     インタビューの最後に、今後も「隠しメッセージ」をテーマにした動画を取り扱う予定があるのか、について聞いてみました。

     「またいつか作れたらいいですね。知的好奇心をくすぐるいたずら心にあふれた動画を作りたいとの思いは変わりませんが、(チャンネル発足から)3年経過し少しずつ興味の対象も変化してきました。4ST開始時には思いもよらなかったことがいくつも起きていますので、動画に限らず、多くの方と一緒に楽しめる企画ができればいいな、というのが今現在の思いです」と回答。

     シイナさんは「4ST」にてレトロゲームネタをメインに取り扱っていますが、「当初は80年代90年代カルチャーのチャンネルにするつもりだった」「レトロゲームそのものよりも、ゲームを作っていた方々自身であったり、その方々をめぐる人間模様とでもいいますか、そういったもののほうに興味がそそられます」と自身のチャンネルへの想いを語っています。シイナさんの心の中はきっと、新たな挑戦への好奇心、探求心で満たされていることでしょう。

     なお、今回の妖怪道中記パスワード解析の一部始終は、YouTubeチャンネル「4ST」にて、より詳細に解説されています。

    https://twitter.com/4STUDIO4/status/1495305937216622593

    <記事化協力>
    4ST(Twitter:@4STUDIO4 / YouTube:「4ST」)
    SheNaさん(@SheNaTheKid)

    (山口弘剛)

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  • 山口 弘剛‌Writer

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    鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育てしながら、地元のサッカークラブを熱烈応援中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動。

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