お互いに惹かれ合い、結ばれる運命の出会い。恋物語ではありがちなお話ですが、それは物との間にも成立することがあります。

 多くの中からただ1つ売れ残ってしまったように見えた指輪。しかしそれは運命の人と結ばれるためだったのかも知れない……という、実話をもとにした漫画がTwitterに投稿されました。

 漫画家の関口かんこさんは、趣味で指輪作りをしています。ある程度の量がたまると、イベントに参加して頒布しているとのこと。

 2022年8月に参加した雑貨イベントでは、前日にツイートした指輪の写真がバズったこともあり、スペースは大盛況。開場から1時間半ほどで、用意していた指輪のほとんどがなくなってしまったといいます。

手作りの指輪をもって雑貨イベントに参加した関口さん(関口かんこさん提供)

 ところがそんな中、1つの指輪だけがなぜか残ってしまいます。関口さんの目から見ると、出来も悪くないのに、ポツンと最後まで残ってイベントが終了してしまいました。

 それから時間の経過した2023年1月。再び作りためた指輪を持って、関口さんはイベントに参加しました。すると、とある女性が「あっ!あーっ!!うそ、あったぁ〜」と嬉しげに指輪を手に取るではありませんか。しかもそれは、前回のイベントで1つだけ残ってしまった指輪です。

前回のイベントで1つだけ残った指輪を探しに来た女性が(関口かんこさん提供)

 女性は「前回のイベントではめてみたとき『これだ!!』って思ったんですけど、手持ちがなくて泣く泣くあきらめたんです」と語ります。イベント後もその指輪のことが忘れられず、今回似た物があったら買おうと思って来てくれたんだとか。

 そうしたら偶然、前回手に入れられなかった現物と再会。ついに入手することができたのでした。

 嬉しさから、そのまま指輪を身につけてお帰りになったそうなのですが、ネイルや肌の色、服の色、指とのバランスに至るまで、まるで専用にあつらえたかのごとく似合っていたとのこと。まるで、指輪が運命の人と見定め、再び巡り会うまで残り続けたのではないか……と関口さんは感じたといいます。

ひょっとしたら指輪が運命の人と結ばれたがっていたのかも(関口かんこさん提供)

 骨董などの世界では、よく「品物が人を選ぶ」といい、品物は持つにふさわしい人の手へ自然と渡っていくとされます。持つに値しない人の手に渡った場合は、なぜか早くに手放してしまうようになるんだとか。

 関口さんはこの出来事について、次のように語ってくれました。

 「今回みたいに分かりやすく漫画にかけそうと思ったほどの経験は初めてでした。でも『なにかの物と縁があった』みたいなことは何度もあったんだと思います。何度なくしても戻ってくる傘とかその程度の(笑)」

 心を込めて作ったものには魂が宿るといいますから、ひょっとしたら今回の一件は、指輪と女性とが互いに惹かれ合い、結ばれることを望んでいたのかも。きっと見えない赤い糸で結ばれた関係だったのでしょうね。

<記事化協力>
関口かんこさん(@pkb5648

(咲村珠樹)