標準電波を受信して、自動的に誤差を修正する時計を俗に「電波時計」と呼びますが、その論理を用いて「電波のエネルギーで物体が動く」を実証した技術者が現れました。
「東京スカイツリーから2段スタック5素子八木アンテナで取った電力だけで動き続ける時計。これぞ本当の電波時計」
つぶやきとともに、動画と画像を投稿したのは早川槙一さん。家電ベンチャーの株式会社Cerevoで、回路設計の仕事をしている人物です。
併行して、電子工作やコスプレ用の電飾小道具作りを趣味としている早川さん。作品全般として、「技術で遊ぶ」をテーマにしています。
本作はその「技術」をこれ以上ないほど活用したもの。都内随一のランドマークであり、タワーとして世界一の高さを誇る電波塔「東京スカイツリー」が発するFM放送の電波で、電波時計が作動するかどうかを実験しました。
付近にあるビジネスホテルの部屋にて、泊まり込みで行った検証には、アマチュア無線などで広く使われる八木アンテナを持ち込み、そこに100均ショップで購入したアナログ時計を取り付けています。電波から得た「電力」が動力源のため、当然ながら電池は未使用。
ちなみに早川さんは、同じ場所でLEDを点灯させるという検証も行っています。基板に即席の回路を取り付けた結果、見事に成功させていますが、この際用いたアンテナ1基だと、電力不足が否めないため2基に増設。さらに設置位置や伝送線路の長さも微調整して、安定的な電力確保につとめました。
これにより、まるでジェットコースターのレールのような伝送線路が完成。「リボンフィーダー」と呼ばれるケーブルを購入しても可能だそうですが、早く実現させるため、その場にあるもので自作してしまいました。
その姿や、早川さんが評するパッチワークのような「無秩序」の回線に、「秩序」だった電波を受信するという構図に。しかしこれが絶妙にマッチングし、アナログ時計は「電波時計」へと変貌。物理のちょっとした応用には、多くの注目を集める結果に。
「投稿写真の受信装置ははっきりいって見た目はよくないですが、これが動作するということは物理法則を破ったうそは描いていないということでもあります。これを狙って出すというのは、難しい味があるのではないかと思いますね」
先述の電子工作に関する同人誌を執筆したり、トランジスタ技術の専門誌へ記事を投稿することもあるという早川さん。その姿やまさに「電波系探求者」。その探求心は凄まじく、検証終了後、翌日が出社にもかかわらず、取り付けた時計にアラーム機能をセットし、スカイツリーの電波で作動するか確認するという狂気の実験も行っていました。この人おかしい……(ほめ言葉)。
東京スカイツリーから2段スタック5素子八木アンテナで取った電力だけで動き続ける時計。これぞ本当の電波時計 pic.twitter.com/pOHGwD0u8M
— はやかわしんいち💉💉💉💉 (@shinichi_8o2) February 5, 2023
アラームなりました https://t.co/1X8fNBBwgM pic.twitter.com/g5Bd1NeT68
— はやかわしんいち💉💉💉💉 (@shinichi_8o2) February 6, 2023
<記事化協力>
早川槙一さん(@shinichi_8o2)
(向山純平)