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全68駅制覇の証!鋏痕だらけの「国電フリー乗車券」が物語る昭和56年のクリスマス

 自動改札ではなく、駅員さんの手で改札が行われていた昭和の時代。当時を物語る、鋏痕だらけの「国電フリー乗車券」の画像がXに投稿され、話題です。

 元は長方形だったであろう紙の切符が、あちこちをハサミにかじられ、唯一無二の形になっています。画像を投稿したXユーザーの「T+K@創作列車」さん(以下、T+Kさん)に、当時のお話をうかがいました。

  • ■ 駅員さんによる改札だからこそ生まれた、唯一無二の「国電フリー乗車券」

     小学校に入学したころからおよそ50年近く、鉄道ファンを続けているというT+Kさん。さまざまな路線や列車に乗り続ける「乗り鉄」でありつつ、SNS上では鉄道を題材にした創作活動を行う「書き鉄」でもあります。

     T+KさんがこのほどSNSに投稿した「国電フリー乗車券」の日付は昭和56年の12月25日。当時、小学6年生の冬休み期間だったそう。

     「国電フリー乗車券」は国鉄(現在のJR)が発行していた、1日限定で対象区間内(国鉄の東京23区内の全駅)での乗り降りが自由な乗車券のこと。

     T+Kさんはこの乗車券を使い、当日、東京23区内の全68駅で乗り降りをしたといいます。当時は自動改札ではなく、駅員さんが改札鋏を使って入場を確認していました。

     68駅で入場のたびに乗車券にハサミが入ったため、画像のように四辺が鋏痕(改札鋏を入れた痕)だらけの乗車券が生まれたというわけです。

    鋏痕だらけの乗車券

     T+Kさんはクリスマスが近づくとたびたび当時のことを思い出すとのこと。今回「そういえば」程度の軽い気持ちで投稿してみたところ、約9万件のいいねを集める結果となりました。

    ■ T+Kさんに当時の思い出を詳しくうかがってみた

    ――当時、「国鉄の東京23区内全駅」を制覇してみようと思ったきっかけについて、お聞かせください

     当日は冬休みだったのですが、家族で遠出をするような予定もありませんでしたので、自分なりに1日でたくさん電車に乗れることを考えたのではないかと思います。そういう意味では手頃でちょうどよい切符だったのだと思います。

     当日のお金については、クリスマスではありましたがクリスマスは全く関係がなく、お年玉の前借りでした。この切符だけではなく、各駅で記念に入場券も買いましたので、1日でほぼ使い果たしたと思います。今思えば、親もよく許可しました。

    各駅で購入した切符コレクションその1

    各駅で購入した切符コレクションその2

    ――切符は駅ごとに形が違うんですね……。「全68駅」を乗り降りしたとのことですが、だいたい何時間くらいかかったか覚えていますか?

     自宅は埼玉県の北の方だったのですが、その日の始発の電車で出発して帰宅は夜遅くなってからだったと思います。

     始める前は、夕方ぐらいには終われるのではないかと考えていたのですが、実際にやりはじめてみると意外と時間がかかってしまい、最後の駅(たしか有楽町駅だったと思います)についた頃には完全に夜になっていました。

     それから埼玉の自宅へ戻りましたので、帰宅はそれなりに遅い時間になってしまいました。もちろん、夕方ぐらいには親にも電話(もちろん公衆電話からですね)したと思います。

    ――当日の最後の方、これだけ形が変わった乗車券を見た駅員さんから、何か反応はあったでしょうか?

     どこの駅かは忘れましたが、苦笑いをしながら入鋏(改札口でハサミをいれることです)を諦めて切符をそのまま返してくる駅員さんもいらっしゃいましたし、「う~ん……」と少し考えてから切符を折ってハサミを入れる駅員さんもいらっしゃいました。

     私もそんな経験をしたのは、この時だけです。

    ――当日の思い出について、何か印象に残っているものがありましたらお聞かせください。

     当日は朝から晩まで丸1日かかってしまいましたが、全駅まわれたことでやはり達成感を感じることができました。

     断片的にではありますが、駅員さんにハサミを入れてもらったことや、駅の窓口で入場券を買うのに並んだりしたことを覚えています。

     もう43年も前のことになってしまいますが、切符を大事にとっていたことで今でもこうやって思い出せるのが嬉しいですね。

    * * * * *

     紙の切符どころか、スマホでの入場が主流になりつつある令和の時代。便利ではありますが、T+Kさんのお話をうかがっていると「手元に思い出が残らない」という寂しさを感じます。

     子ども時代、毎度のように切符をなくしていたおっちょこちょいの筆者としては、スマホさえ持っていれば追加料金を払わなくて済む現在は、非常にありがたいです。

     しかしながら今の便利さと引き換えに、将来に持っていくべき大切な何かを置き去りにしてしまっているのではないか、という気もしてきました。

     不便だった時代を闇雲に肯定するつもりはありませんが、不便だったからこその「良さ」というものは確実にあるのだと、T+Kさんのお話をうかがいながら感じました。

     たまには券売機で切符を購入して電車に乗ってみるのもいいかもしれません。途中でなくしても困らないよう、お金を多めに持って。

    <記事化協力>
    T+K@創作列車さん(@tokihirokoji

    (ヨシクラミク)

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