にじさんじグループを運営するANYCOLOR株式会社は10月22日、所属ライバーである甲斐田晴さんをめぐる極めて悪質な誹謗中傷・荒らし行為への対応結果を、加害者側の意識調査結果まで含めて公表しました。
対応の進展自体が報告される例は見られるものの、“なぜそのような行為が起きたか”という背後の心理まで含めて開示したのは異例と言えます。
■ 発端と主な被害内容
発表によると2024年6月及び12月、甲斐田晴さんを中心とした所属ライバーに対し、以下のような悪質行為が確認されたと言います。
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・YouTube配信での執拗なコメント連投(荒らし行為)
・X上で、ライバーのビジュアル画像・動画の無断使用、タグ荒らし行為、グロテスクな画像の拡散
・ライバーがリアルイベント参加の際に行った殺害予告
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これらの投稿に対し、ANYCOLOR社はまず発信者情報の開示請求を実施し、発信者が同一人物であることを確認後、民事訴訟・被害届提出・刑事捜査等の手続きを着手したとのこと。
■ 対応結果の主なポイント
これを受け、2025年10月22日付で発表された報告では、次のような対応結果が示されています。
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・加害者に対し、業務妨害罪容疑で書類送検が行われ、その後、管轄裁判所にて罰金刑が言い渡された。
・民事責任に関して、加害者とANYCOLOR社との間で裁判上の和解が成立。主な内容は「損害賠償金の支払い」「今後、当社および所属ライバーに関するインターネット投稿を行わないこと」など。
・和解条件に付随し、「加害者に対して書面での意識調査」を実施。その調査内容および回答結果を公表。
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重要なポイントはやはり意識調査の公表が行われたことでしょう。その内容は誹謗中傷や荒らしが起きる“なぜ”に切り込んだものであり、以下のような回答が明らかになっています。
■ 加害者が語った動機と心理
【回答者:20代後半・女性】
・配信者とリスナーの距離が近い界隈のため、自分の“好きなライバー”との距離を一方的に縮めようとしてしまった。背景には強い承認欲求と日頃のストレス、精神的不安定な状態があった。
・自分の行為が刑事・民事で責任追及される可能性があると漠然と認識していたが、日常生活のストレスからその認識が薄れて止められなかった。
・当時は「面白がっているという感情」や「ライバーが自分に反応しているという異常な承認欲求」が混じっていた。
・投稿が拡散することのみを考えており、対象ライバーやファンの被害を想像できなかった。
・ある時期から開示請求意見書が届き始め「いつ警察が来るのだろうか」「家の前に警察車両が止まっていないか」と不安にかられた。
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このような「荒らし・誹謗中傷行為」に至る内的プロセスを明らかにした報告は、企業からの公表としては異例です。
■ なぜ詳細公表に踏み切ったのか
その理由について、ANYCOLOR社は声明文の中で以下のように説明しています。
「悪質な誹謗中傷行為や荒らし行為などが後を絶たない現状を踏まえ、これらの行為がなぜ発生してしまうのか、その根本的な原因や背景を当社として多角的に理解することが、誹謗中傷行為等への効果的な対策を講じていくうえで不可欠であると考えた点にあります」
つまり、単に加害者を処罰・和解させるだけでなく、「行為がどうして起きるか」を可視化することで、再発防止・リスク抑止に向けた意識改革を目指していると読み取れます。さらに、公表にあたっては対象者からの承諾を得ていることも明記されています。
通常、VTuberやライバーを擁する事務所が誹謗中傷・荒らし対応を公表する場合、概要報告にとどまるケースがほとんど。しかし今回、意識調査の設問・回答まで含めた詳細な開示されたことは、VTuber/配信者領域において先例が少なく、他社に対して一つのモデルケースとなる可能性があります。
当然ながら公表は状況に応じて判断すべきですが、それでもANYCOLOR社が示した「対応の透明性」と「原因の可視化」は、ライバー文化の成熟とともに求められてきたものとも言えます。今後、同社がこの公表をもとにどのような再発防止策・啓発活動を行うか、業界全体の注目を集めそうです。
【当社所属ライバー「甲斐田晴」に対する極めて悪質な誹謗中傷行為・荒らし行為等への対応結果について】
日頃よりバーチャルライバーグループ「にじさんじ」・「NIJISANJI EN」を応援いただき、誠にありがとうございます。…
— ANYCOLOR株式会社 (@ANYCOLOR_Inc) October 22, 2025
<参考・引用>
ANYCOLOR株式会社(@ANYCOLOR_Inc)
ANYCOLOR株式会社公式HP「当社所属ライバー『甲斐田晴』に対する極めて悪質な誹謗中傷行為・荒らし行為等への対応結果について」
(山口弘剛)