島根県出雲市にある洋菓子店「グランシェノン」は、「上質な花とお菓子で幸せを継ぐ」という名前の由来もあり、色鮮やかなスイーツの花が店内を彩ります。
その中でもひと際異彩を放つのが、「花×お菓子」のコンセプトから生まれたバラのケーキ「ローズブラン」。オーナーシェフである福間将司さんのスペシャリテ(代表作)です。
「バラの蒸留水を使い、自然な香りを感じていただける点がこだわりです。原材料費が高価で手間もかかるため、価格は1300円(税込み)となりますが、『グランシェノン』『福間将司』を知ってもらうためには、まずこれを知ってもらわなければと思ったのが投稿の理由ですね」
「ローズブラン」は、7層構造で作られたケーキ。生地とピンクのムースの対比に、間を敷き詰めるベリーが彩りのアクセントを加え、てっぺんには生のバラの花がトッピング。さらにそこに“本物”を香り付けています。福間さんが「高価」と語る1300円の価格設定には、製菓関係の仕事に就いていた時期のある筆者からすると、「それで商品化できるのか……!」と驚きの感想しかありません。
幼少期は生花を習い事にするなど、花と密接にかかわってきた福間さん。それは、現在のパティシエという仕事にも強い影響を受けています。
「パティシエとしての感性、嗅覚、バランス感覚に生かされていると考えています。花は自分にとっての『原点』です」
ちなみに福間さんが、パティシエとして強みとする素材は「チョコレート」。
過去には、東京都洋菓子協会が主催する洋菓子の作品展「ジャパンケーキショー東京」の2018年大会において、「ピエス・アーティステック(ショコラ部門)」の連合会長賞と、都知事賞を受賞。翌2019年には、「チョコレート工芸菓子部門」で同じく連合会長賞に加えて準グランプリにも選定されました。
現在でも自身のnoteで様々な「チョコレート細工」に関する情報を発信し、「グランシェノン」でも、色鮮やかな球体のスイーツ「ボンボンショコラ」が売れ筋商品となっています。こちらも「スペシャリテ」とよんでも差し支えないように感じますが、しかしそれだけでは足りないと言います。
「確かに『シェフの代表作』がスペシャリテというものです。ただ食べたときに、『作り手の顔が見えるか』『想いが乗っているか』ということであることも、スペシャリテに大切なことだと考えています」
なお、「グランシェノン」ですが、店名の冠には「フラワー&パティスリー」が付き、実は花屋と併設された店舗。そして花屋に関しては、実兄の大祐さんがフローリスト(経営者)として切り盛りしています。ちなみに大祐さんも、過去に花の全国大会に出場するほどの人物。
元々は両親が島根県太田市でフラワーショップ「福花園」を経営しており、母・君枝さんが病気になった折に兄の大祐さんが島根に帰郷。家業を継ぎ、さらにそのタイミングで声をかけられ、今年(2022年)2月に兄弟で開業したのが「グランシェノン」でした。
「花屋で育ち、パティシエとして成長した自分だから作れました。手間がかかっても、材料が高くても、『本当においしいお菓子』を皆様に届けたいですね」
オンリーワンのアイデンティティだからこそ生まれた、世界に一つだけの花のケーキ「ローズブラン」。島根・出雲の花屋の店先に1日数量限定で並んでいます。
スペシャリテ
「ローズブラン」
花屋で育ちパティシエとして成長した自分だからこそ作れたバラのケーキ。このケーキを目当てに買いに来たというお客様がいるととても嬉しい。 pic.twitter.com/3UIBbcCDvj
— 福間 将司 【花屋育ちのパティシエ】 (@shoji_fukuma) July 16, 2022
1300円のプチガトー
スペシャリテ「ローズブラン」
安くないと売れないという考えが労働環境を悪化させるし、パティシエの価値を下げることになる。
地方でもそこに価値があればでこの価格で販売できる。
チェーンやコンビニと差別化するためにも労働環境を整えるためにも個人店には必要な事だと思う。 pic.twitter.com/PMwMl0i7le— 福間 将司 【花屋育ちのパティシエ】 (@shoji_fukuma) May 28, 2022
<記事化協力>
福間 将司さん(Twitter、Instagram、note、Tiktok:@shoji_fukuma)
フラワー&パティスリー グランシェノン(島根県出雲市渡橋町735-1)
(向山純平)