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元ストーカーの告白 「好き」だけで終わらない事件の行方

update:

 警察庁が今年3月に発表した資料によると、令和5年のストーカー事案による相談等の件数は1万9843件で、ストーカー規制法に基づく警告は 1534件、検挙は1081件に上るという。

 男女関係というのは少しもつれると、どんどん修復不能になっていく。一時は仲良くやっていた相手でもお互いの感情のバランスが上手くかみ合わないとストーカー事件にまで発展することがある。

 なぜ、ストーカー行為をしてしまうのか。ストーカー認定されるとどのような事案になるのか。今回はストーカー規制法によって警察からとある女性への禁止命令を受けた田中ヒロムさん(仮名)に話を聞いた。

  •  田中さんはお付き合いしている関係ではなかったが、フリーランスで携わっているイベントの仕事などで関わっている女性と何度か関係を持ってしまった。

     「会うたびにどんどん好きになっていってしまって。でも向こうには彼氏がいたんですよね。でも自分とも関係性があって要は相手が二股してるって感じです。だからずっと好きだ好きだ。俺と付き合ってくれって言い続けてたんですよね」

     しかし二人の関係性が相手の彼氏に発覚してしまい修羅場になってしまった。

     「不思議なことに急に女の方からもう二度と近寄らないでって言われたんですよね。ちょっと僕が強引だったというのもあったのかもしれないですけど、何か急だったんで焦ったというか、ショックを受けたというか」

     突然別れを切り出された田中さんは、彼女が別で主催しているイベントへ足を運んだ。そして彼女を呼んで話をすることにした。

     「お前一体どういうことだよ。じゃあ一緒に企画してたイベントとか全部なしにするの?どうしたいの?って言ったんです。そしたら『うーん。なしにしたい』って。そんなこと許されるわけないじゃないですか、会場も押さえてるし、結局僕一人で進行することになったんですよ。最終的にイベントは赤字になったんで、いくらの赤字になったから半額負担してくださいと、明細表と共に送ったんです」

     何度も何度も、LINEを送ったが返事がなく、そのうちついに既読が付かなくなった。

     「共通の知り合いに相談したところ、俺のことを陰でかなり侮辱していたようでした。その時は、はらわたが煮えくりかえるような思いでしたね。なので彼女が関わっていそうなイベントに行ってお金を請求しようと足を運びました」

     一対一で、冷静に話をしようとしたのだが、相手の対応が悪くやってはいけない行動をしてしまった。

     「きちんと取り合ってもらえず勢いで怒鳴り込んでしまったんです。すると度が過ぎたせいか、『本当に近寄らないで!やめてほしい』といわれてしまいました。その場は渋々諦めたんですが、腹立ちが収まらず、彼女に内緒で撮影した卑猥な動画をばら撒くぞと送ったんです。しかし、ずっと未読だったので、SNSで拡散してしまいました」

     いわゆるリベンジポルノというやってはいけない罪を侵してしまった。

     「後日警察から電話が来たんです。もしもし、生活安全課ですけど、あなたに三田晴美(仮名)さんからストーカー被害に遭っていると相談を受けて、あなたにストーカー規制法が適用されました。今後三田さんとの接近禁止などがございます。後日、書面に名前と日付と住所を書いて、ハンコを押してくださいみたいなこと言われましたね」

     そして後日、書類のチェックをさせられ、署名押印をした。書類の中身についてはこうだ。

    - - - - - -

    ・つきまとい、待ち伏せ、押しかけ行為の禁止

    ・相手に監視していると告げる行為の禁止

    ・面会や交際を要求する行為の禁止

    ・乱暴な言動をする行為の禁止

    ・無言電話や連続電話、メールやSNSでメッセージを連続して送る行為の禁止

    ・汚物を送りつける行為の禁止

    ・名誉を傷つける行為の禁止

    ・猥褻な写真をおくりつけるなど性的羞恥心を侵害する行為の禁止

    ・位置情報無承諾取得行為の禁止

    - - - - - -

     「警察は『私は田中さんと三田さんの別れについて説明しているだけです。自分の言い分含めてどうしていくかを手紙で書いてください』と言いましたね。正式なお付き合いじゃなくても男女に関する行為をするつもりはないなど書いてと言われたので本当は別れたくなかったのですが、渋々書きました。その後、田中さんを知らない警察官でも田中さんの顔を認識できるようにと、上半身と全身の写真を撮られました」

     共同主催の赤字イベントの補填については、返ってこないのだろうか。

     「もし、赤字イベントの損失を請求したいと言ったときは、自分で連絡するのではなく、弁護士か行政書士に頼まないといけないと言われましたね。でも無料ではないので、結局お金が返ってきたとしても、依頼料で赤字になるので、泣き寝入りすることにしました」

     お互いイベント業界にいるため、現場がかぶってしまうことがあるかもしれない。その場合もストーカー規制法により、拘束されるのだろうか。

     「現場が一緒だったとしても、積極的に話にいくようなことをしなければ、問題ないと言われましたね。でも通報された場合はこちらも拘束をしにいかなくてはいけない。そこからストーカー行為に当たるか吟味すると言われました。ということは、通報されるかされないかは相手次第ということで、かなり理不尽ですよね」

     相手に執着してしまう気持ちはわからなくはないが、度が過ぎることをやってはいけない。対人関係は理性的にならなくてはいけない。

    <参考>
    警察庁「令和5年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について」(PDF

    (山崎尚哉)

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  • 山崎尚哉Writer

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    神奈川県出身。ライター業・イベント企画・映像編集・DJなどをやっています。
    とにかくアンダーグラウンドなスポットなどに首をつっこむのが好き。
    人生逆噴射というテクノユニットもやってます。

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