見た目はともかくとしてガンダムの「ハロ」のように、AIを搭載した宇宙飛行士支援ロボットが、2018年6月29日の午前5時41分(アメリカ東部時間)、フロリダ州のケープカナベラルから、スペースX社のドラゴン補給船に搭載されて国際宇宙ステーションへ出発します。

 ドイツ航空宇宙センター(DLR)、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの共同研究プロジェクトに使用するため、エアバスとIBMが共同で作り上げたこのロボットの名前は「CIMON(サイモン)」。「乗組員用インタラクティブ・モバイル・コンパニオン(Crew Interactive MObile CompanioN)」の略称です。バスケットボールより少し大きいくらいで、重量は約5kg。「ガンダム」に登場するハロとほぼ同じくらいの大きさですね。球体になったのは、無重量状態で一番姿勢制御がしやすい効率的な形状だから。これはJAXAが国際宇宙ステーションで運用している自律制御アクションカメラ「i-Ball」と同じです。樹脂製の本体は3Dプリンタで出力されたもの。

 CIMONには複数台のカメラと液晶ディスプレイが付いており、普段は表情を表示したり、情報を表示したりすることができます。搭載されているAIは、IBMのクラウド学習型AI「Watson」。当初は地球上のクラウド情報に基づく判断をすることになりますが、徐々に無重量状態や宇宙飛行士の任務に対応したパターンを学習して進化していくものと思われます。

国際宇宙ステーションでのCIMONのイメージ(画像:Airbus)

国際宇宙ステーションでのCIMONのイメージ(画像:Airbus)

 国際宇宙ステーションに到着したCIMONは、第57次国際宇宙ステーション長期滞在ミッション(Expedition 57)のコマンダーを務めるドイツのアレクサンダー・ゲルスト宇宙飛行士によって、欧州宇宙機関(ESA)のモジュール「コロンバス」内で運用されます。ゲルスト宇宙飛行士が行なっている宇宙実験ミッション「ホライズンズ(Horizons)」の一環で、この種のサポートロボットが宇宙飛行士の活動にどのような効果があるのか、まずは宇宙で運用してみる……というのが今回の目的です。

 ミッション中、CIMONはゲルスト宇宙飛行士の任務をサポートし、結晶生成実験の観察や、ゲルスト宇宙飛行士の話し相手、ルービックキューブ攻略の最適解を見つけるなどの試験を行います。運用期間は2018年10月までの約4か月弱。この間にCIMONのAIがどれくらいの進歩を見せるか、注目ですね。

コロンバス内でのCIMONミッションイメージ(画像:Airbus)

コロンバス内でのCIMONミッションイメージ(画像:Airbus)

 CIMONなど補給物資を積み込んだドラゴン補給船(CRS-15)を載せたスペースX社のファルコン9ロケットは、2018年6月29日の午前5時41分(アメリカ東部時間)、フロリダ州のケープカナベラルから打ち上げ予定です。国際宇宙ステーションに到着するのは、7月2日の予定。スペースX社では、打ち上げの様子を同社の特設サイトや公式YouTubeチャンネルで生中継する予定となっています。

Image:IBM/Airbus

(咲村珠樹)