航空自衛隊やアメリカ空軍らが共同で行う、訓練に名を借りた恒例の人道支援「クリスマス・ドロップ作戦」が、2019年12月10日に始まりました。太平洋に浮かぶ離島の人々に、今年も様々な支援物資を空から届けます。

 太平洋の島々へ人道支援物資を届ける「クリスマス・ドロップ作戦」は、2019年で68回目を迎えました。そもそもの始まりは1952年のクリスマスシーズン、偵察訓練を行っていたアメリカ軍のクルーが、機内の搭載物資を「クリスマスのおすそ分け」としてパラシュート(物量傘)で島に投下したこと。以来、表向きは「戦術輸送の低高度物量投下訓練」として、太平洋の島々に人道支援物資を投下するようになったのです。

 2019年のクリスマス・ドロップ作戦には、ホスト国であるアメリカ空軍のほか、航空自衛隊の第401飛行隊(愛知県・小牧基地)、オーストラリア空軍、ニュージーランド空軍のC-130輸送機を運用する部隊が集結。北マリアナ諸島やミクロネシア、パラオの56に及ぶ島々の島民約2万人に向けて、食料や生活支援物資、学童の用具など、様々な人道支援物資を空から届けます。

 作戦の開始を前に、拠点となるグアム島のアンダーセン空軍基地では、支援物資の梱包作業が行われます。広い格納庫に大きな箱が並べられ、食料や作物の種、衣服や子供の学習用具などを島ごとのニーズに合わせてパッキング。


 子供たちも作戦に携わるお父さん、お母さんのお手伝いでボランティア参加。自分自身が入ってしまいそうな大きさの箱を、みんなで協力して運びます。

 この作戦にはオブザーバーとして、フィリピンやインドなどの太平洋諸国も人員が参加しています。表向きは「訓練の様子を視察する」ことですが、人道支援の在り方や、ほかの参加国の人々と人的交流を深めることも大切な任務です。

 荷造りが終わると、いよいよ「作戦」開始。クリスマス・ドロップ作戦は、表向き戦術輸送の物量投下を訓練するのが目的。敵対勢力に見つからないよう、低空で素早く物資を投下する技量の練度を高めます。

 とはいえ、実際は人道支援のボランティアなので、通常の作戦に比べると少しリラックスした雰囲気。C-130の貨物室にはクリスマス装飾がされていたり、パイロットらクルーもサンタ帽をかぶっていたりしています。

 航空自衛隊のクルーも同じく、C-130のコクピットにはクリスマスの装飾がなされ、クルーは赤いサンタ帽姿。普段の自衛隊とはちょっと違う雰囲気が素敵ですね。


 投下に際しては、場所を間違ないように島の空撮写真を参照します。そして気流を考慮に入れ、取りに行きやすい場所を狙って物資を投下。これは実戦の戦術輸送における物量投下でも同じです。

 投下された物資は、島民によって回収され、それぞれ分配されます。空からのクリスマスプレゼントを仕分けする様子を、子供たちが外から待ちきれないとばかりにのぞく様子も見られます。





 実戦的な訓練でありながら、多くの人々を助ける「クリスマス・ドロップ作戦」。およそ470万平方kmにも及ぶ範囲の島々へ、笑顔の輪を広げます。

<出典・引用>
アメリカ空軍 ニュースリリース
Image:USAF

(咲村珠樹)