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【名作映像案内】第5回 金田一耕助シリーズ

update:

【名作映像案内】第5回 金田一耕助シリーズ時代に埋もれた名作映像作品の数々を紹介する「名作映像案内」。今回ご紹介するのは、日本推理小説の最高傑作『金田一耕助シリーズ』を原作にした映像作品。

さて、突然ですが、映画ファンの皆さんに問題です。映画で金田一耕助役を演じた回数が最も多い俳優は誰でしょう?


  • 答えを発表する前に、第2位の俳優を発表したいと思います。第2位は……

    石坂浩二!!
    『犬神家の一族』(1976年)
    『悪魔の手毬唄』(1977年)
    『獄門島』(1978年)
    『女王蜂』(1978年)
    『病院坂の首縊りの家』(1979年)
    『犬神家の一族』(2006年)
    の6本で金田一役を演じました。

    では栄えある第1位は・・・・

    片岡千惠藏!!
    『三本指の男』(1947年)
    『獄門島』(1949年)
    『獄門島 解明篇』(1949年)
    『八ッ墓村』(1951年)
    『悪魔が来りて笛を吹く』(1954年)
    『犬神家の謎・悪魔は踊る』(1954年)
    『三つ首塔』(1956年)
    の7本で金田一役を演じました!

    本稿では『三本指の男』、『獄門島』前後篇を1本に纏めた総集篇、『三つ首塔』の3本をご紹介します。

    『三本指の男』の原作は本陣殺人事件。監督は松田定次、脚本は比佐芳武。『獄門島』も監督は松田定次、脚本は比佐芳武。『三つ首塔』の監督は小林恒夫と小沢茂弘、脚本は比佐芳武。

    片岡千惠藏は時代劇で有名な俳優であり、松田定次と小沢茂弘は千惠藏主演の時代劇映画の監督を務めた人物であり、比佐芳武は千惠藏主演の時代劇映画の脚本を書いた人物でもあります。

    また片岡千惠藏は『多羅尾伴内』シリーズで有名な俳優であり、松田定次と小沢茂弘と小林恒夫は『多羅尾伴内』シリーズの監督を務めた人物であり、比佐芳武は『多羅尾伴内』シリーズの脚本を書いた人物でもあります。

    配役を見ると、『獄門島』では時代劇映画でお馴染みの大友柳太朗が磯川警部役、進藤英太郎が登場人物の1人を演じ、『三つ首塔』でも時代劇映画でお馴染みの加賀邦男が出演しています。

    これらの映画で千惠藏が演じた金田一耕助はネクタイを締めて背広を身に纏いフェルト帽を被った、典型的な昭和時代の紳士ですが、実は、1950年代の映画で金田一耕助を演じた俳優は、岡讓司も河津淸三郎も池部良もみんなこの恰好です。

    では1本ずつ感想を書いていきます。

    『三本指の男』は、事件のトリックを金田一が実演してみせる場面が見事でした。この場面に、謎の殺人事件を描いた映画としての面白さが凝縮していると思います。

    『獄門島』は、戦争から復員する場面から始まっており、当時(公開は昭和24年)の時代の雰囲気がリアルに描かれています。スタッフ、出演者、観客ともに戦争経験者が多かったでしょうしね。

    『三つ首塔』は、映画の半分以上が東京を舞台にした物語で、“田舎を舞台にした物語”という前述2作品とは全く異なる性格となっています。冒頭からモダンなホールを舞台にして物語が始まり、金田一の探偵事務所もやはりモダンなビルとなっています。但しクライマックスでは田舎へ移動。尚、この映画では小澤榮太郎が弁護士の役を演じています。小澤と言えば昭和51年の映画『犬神家の一族』も弁護士役を演じており、『三つ首塔』は『犬神家の一族』より20年前の映画なので流石に外見は若いですが、声は変わっておらず、遺言を読み上げる場面などは声だけ聞いているとそっくりです。

    ざっと感想を申し上げましたが、実はこれらの映画では共通点があります。3本全てで金田一耕助が変装する場面があり(但し『獄門島』では変装シーン以外に1人2役の場面もある)、『獄門島』『三つ首塔』では銃撃戦が描かれています。もう皆さんお気付きでしょう。主演は片岡千惠藏。監督は松田定次と小沢茂弘と小林恒夫。脚本は比佐芳武。千惠藏が変装する。銃撃戦が繰り広げられる。つまり昭和21年から昭和35年にかけて制作された『多羅尾伴内』シリーズと同じ特徴を持っているのです!!特に『三つ首塔』において金田一が住職に変装し、一瞬にして正体を現す場面は、どう見ても『多羅尾伴内』にしか見えない(笑)。私がリバイバル上映を鑑賞した映画館内では、このシーンで観客が大勢爆笑していました。昭和36年の映画『ヒマラヤ無宿 心臓破りの野郎ども』(監督・小沢茂弘、主演・片岡千惠藏)も『多羅尾伴内』みたいな展開でしたが、いつものパターンって感じですね(笑)。だがそれがいい。

    参考までに『多羅尾伴内』シリーズの第3作である昭和23年の映画『二十一の指紋』にも触れておきます。この映画では、翌年公開の『獄門島』と同様に時代劇映画でお馴染みの俳優・大友柳太朗が警部役を演じています。千惠藏演じる多羅尾伴内が変装して捜査するのは勿論ですが、大友演じる警部まで変装して捜査しているのが笑えます(笑う場面ではないけどな)。千惠藏が腹話術師に扮して悪人の指紋を採取する場面などは巧妙で娯楽性に溢れていますが、一方で、街中は太平洋戦争中の空襲の被害を物語る瓦礫の山が大量に積もっており、当時の時代の苛酷さも漂っています。よくあの状態から、ビル街が立ち並ぶ現代的な都市に生まれ変わったものだ。戦後復興を担った日本人の逞しさに脱帽するのでありました。

    (文:コートク)
    ※写真はイメージです。

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