【ミリタリー魂】第36戦 霞ヶ浦駐屯地の第59回創立記念式典に突撃!ミリタリーな話題をマニア目線でお届けしている、鉄砲蔵の「ミリタリー魂」。今回は霞ヶ浦駐屯地の第59回創立記念式典に突撃です!

霞ヶ浦駐屯地とは陸上自衛隊関東補給所や航空学校霞ヶ浦校、および航空自衛隊第一高射群第三高射隊がおかれ、北朝鮮人工衛星打ち上げに伴う落下物警戒で有名な対空ミサイルPAC-3もここに配備されています。


現地に到着するとまず目に留まるのは広報センター前に設置された飛行船の記念碑。50cm×50cmくらいのサイズで、1929年にドイツのツェッペリン飛行船が北半球周遊を行った際にこの霞ヶ浦飛行場に立ち寄ったことを記念して建てられました。

ツェッペリン号モニュメント

飛行船は第一次世界大戦の際にドイツ軍によるイギリス本土の爆撃に使用されたほか、第二次世界大戦でも戦闘機との空中戦では時代遅れとなったものの、連続して一週間は浮いていられる滞空時間の長さからアメリカ軍によって太平洋戦線、大西洋戦線双方で潜水艦の監視に使用されていました。
現在でも空で目立つ外観と長期間の滞空が可能、という特徴から、2012年現在でも保険会社のアリコが「スヌーピーJ号」で日本各地を周遊しているようです。

藤田信雄肖像

次に館内に入ってゆくと様々な展示物があり、目を引くものは多々ありましたが、中でもご紹介したいものは第二次大戦時に史上唯一、1942年9月9日と9月29日の2回にわたってアメリカ本土のオレゴン州ブルッキングスの森林への爆撃に成功した藤田信雄氏の展示。

爆弾破片と森林木片 零式小型水上偵察機模型

終戦後、ブルッキングス市に招かれた藤田氏は戦争犯罪人として裁かれると考え、自殺用の刀を懐に忍ばせて渡米したものの、フェスティバルの主賓として招かれたとわかるとその刀を友情の印としてブルッキングス市に贈ったそうです。かつての敵にもあっぱれと評価され、歓迎される真の英雄だったのですね。

フォークリフトの行進

次に観に行ったのは霞ヶ浦に駐屯している部隊の閲覧行進。
自衛隊の行進だから戦車や装甲車が行進するかと思えば、やってきたのは戦車の交換用エンジンを積んだトラックや燃料を運ぶタンクローリーなど。そしてフォークリフト部隊。迷彩服を着た自衛官が黄色いフォークリフトを運転している光景なんか「自衛隊もこういう地味な仕事に精を出しています。」という独特の雰囲気で、ゆるキャラのような雰囲気に思えます。

エンジン積載トラックの行進 タンクローリー

考えてみればここ、霞ヶ浦駐屯地は関東補給所で、言ってみれば自衛隊に必要な様々な物資が一旦ここに集められて全国に送られる、自衛隊専用の配送センターですから当然でした。
また戦車などの重量のある車両はエンジンの部品にも負担がかかり、燃料も一般の乗用車とは比較にならないくらいに必要になります。加えて敵による攻撃で破損することもあります。補給はなにより重要ですね。

陸上自衛隊03式地対空誘導ミサイル 航空自衛隊のPAC-3

次に車両展示のコーナーへ行ってみると対空ミサイルと思われるものにもミサイルランチャーが垂直に立っているものと斜めに設置されているものがあるのに気づきました。そばに立っておられた自衛官の方にお話を伺ってみると、
垂直に立っている方は陸上自衛隊の03式地対空誘導ミサイル、斜めの方が航空自衛隊のPAC-3で、北朝鮮のロケット撃ち上げに伴う落下物警戒に使用されたのはこのPAC-3の方だそうです。一般の方の中には陸上自衛隊03式の方を指して「あれって北朝鮮ロケット警戒に使用したものでしょ?」なんて尋ねられて困ったこともあったそうです。

訓練風景

次に基地のパトロールを担う犬、歩哨犬の訓練の実演です。ここでふと、隊員の方の着用されている装備品、サバイバルゲームでも見かけたような、と思ってお尋ねしたところ、写真の黒いポーチ付きベストとホルスター、拳銃は隊員の方個人の私物だそうです。

ベスト 拳銃

拳銃もタナカというメーカーから発売されているモデルガンのシグザウエルP220、9mm拳銃だそうです。10年ほど前から自衛隊の訓練でエアーガンを使用している話はサバイバルゲームに来ていた方から噂で聞いていましたが、実際にモデルガンが使用されているのは初めて見ました。確かに本物を使用してまかり間違って実弾を発射する事故を防ぐには有効な手段ですね。
世界的にみても軍の仕事に私物を使う例は珍しくはないそうです。

公用自転車 自転車ラベル

会場をウロウロしていると、面白いものを発見。なんと公用車の自転車。公用車というと国会議員の方々が乗り回す黒塗りの高級自動車を想像しておりましたが、意外にも自転車の公用車もありました。なんと幹部向けのものも区別されて置かれていました。急に親近感がわいてきます。

64式小銃 89式小銃

さて、お待ちかねの装備品展示、小火器コーナーです。まずはエアーガンでも大人気、木製ストック付きの64式7.62mm小銃と黒いストックの89式5.56mm小銃。64式の後継機種が旧式89式で、64式は海上自衛隊の艦内勤務に従事されていた知り合いの方が使っていると一昨年お聞きしたことがあるほかは主に98式の方が多く見かけるようになりました。両者を手に取ってみると89式と比較して重いと評判の64式も軽くて振り回しやすい印象を持ちました。むしろ電動エアーガンの64式より軽いとさえ思えるほどです。ただ、実銃の弾は標的に飛んでゆく鉛弾の部分だけでも4g~9.7gと、エアーガンに使う0.2g~0.25gのBB弾とは比較にならないほど重く、この実弾の方が現場の自衛官の方には負担でしょうね。

MINIMI軽機関銃 M2重機関銃

次に手に取ったのは、銃弾をベルトのように数珠つなぎにして弾を銃に送り込み、連続して200発前後発射できるという軽機関銃と重機関銃。軽機関銃は一人で持ち歩くこともできるように比較的軽量に作られ、敵に向かって撃ちまくって見方の前進を助ける銃。重機関銃は陣地に設置して防御に使用したり車に積んで攻撃に使用したり爆撃機に積んで攻撃してくる敵戦闘機に反撃するもの。

今回どちらもボルトを引いてみたり、実弾を込めないで引き金を引いてカラ撃ちしたり、果ては上の蓋を開けて中の機械を覗いて構わないとのこと。
M2重機関銃などは一般の方々はなかなかボルトを引くことができず、自衛隊の方から「ちがうちがう、力任せに引こうとしないで下に引きながら後ろに引くのがこつだよ。」なんてこつまでご指導いただきました。
マニアにとっても一般人にとっても有り難いご配慮の数々、ありがとうございました。

手りゅう弾破砕片サンプル

その並びに展示されているのは手りゅう弾の破片サンプル。最初はこれらの細かいトゲトゲのようなものを火薬に混ぜたり、爆弾の外側に張り付けたりしているのか?などと隊員のかたにお尋ねしましたが、火薬の収まっているレモン状のケースが爆発して割れるとこの展示のようなトゲトゲの破片になるそうです。
これが食い込んだら治療が難しそうです。実際、第二次大戦に出征されていた退役軍人の方には手術しても取り出せない爆弾の破片と生涯つき合って余生を送っておられる方の話は聞いたことがあります。

110mm個人携帯対戦車弾

もう次々に色々な兵器をさわりまくっています。

次は110mm対戦車弾。ドイツのダイナマイトノーベル社が1970年代に開発したパンツァーファウスト3を自衛隊が採用したもので、歩兵が一人で持ち歩いて使用し、戦車と戦う為に使用する武器となります。

照準器覗いたところ グリップ部の「HK」刻印

望遠鏡のような照準器を覗いた画像を見ると凸マークのような印が見えますが、それを敵戦車の幅と合わせて狙いを付けるそうです。
そしてこのロケットランチャーのグリップをみると、なんとマシンガンや拳銃のメーカーで有名なヘッケラー&コッホ社のマーク「HK」が見えます。ドイツ連邦の銃器メーカー、ヘッケラー&コッホ社製の銃はエアーガンでも多く再現されており、その精悍な外観と操作しやすく、軽量な設計でサバイバルゲームでも人気を博しております。

90式戦車 戦車からの光景

最後に、90式戦車の体験搭乗。本日、生まれて初めての戦車搭乗です。喜び勇んで砲塔の上に設けられた客席に乗り込むと、
ブルルン!と小刻みなディーゼルエンジンの振動が尻に響いてきました。巨大で重厚な兵器の迫力を感じます。
アニメに出てくる戦車などでよくありがちなキュラキュキュラ……というキャタピラのきしむ音は意外となく、実際にはエンジン音の方が目立つ感じでした。想像していたよりずっと乗り心地は上場、この90式、戦国自衛隊1549や数々のゴジラシリースなどの映画に実物が登場しているほか、東京マルイ社がBB弾発射機能付きのラジコン戦車を製造しているなどたいした人気で、当日はおよそ200人ほどの行列ができていました。

ここの霞ヶ浦駐屯地、マニア向けの配慮が盛りだくさんとなっております。数々の軍人たちの偉業も学ぶことができ、僕自身も愛国心を新たにしました。
最近ミリタリールックやサバイバルゲームの趣味を新たに始められる女性や若者も多く見かけられるようになりました。一般の方にもマニアの方にも大いにお勧めの創立記念イベントとなります。

▼陸上自衛隊霞ヶ浦駐屯地
http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/eadep/

(文・写真:鉄砲蔵)