おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

オストメイトに理解を 「多目的トイレ」を利用し非難されたケースも

update:

ショッピングモールや大きな駅、高速のサービスエリアのトイレなどで見かける「多目的トイレ(だれでもトイレ)」。

高齢者や狭い個室が使いにくい妊婦、オムツをつけた子ども連れが主に使うイメージが大きいかとおもいます。実際、だれでもトイレに付いているマークに杖を付いている人、赤ちゃんのオムツ替え、妊婦の絵などがあります。

  • しかし、その「多目的トイレ」の表示の中におなかに十字マークの絵が付いていたり、中に水道の付いた深い流しのような設備が付いているのを知っている人はどのくらいいるのでしょうか。
    この設備は「オストメイト」と呼ばれる方々の為のものです。

    ■「オストメイト」とは

    怪我や病気で排泄機能に障害が発生してしまい、おなかに人工的に排泄口(ストーマ)を造っている人の事を指します。健康な人は排泄を括約筋でコントロールする事が出来ますが、ストーマを作ってしまうと自分で排泄のコントロールが出来なくなるため排泄物を溜める袋を体につけなければなりません。

    オストメイト用の設備があるトイレはまだまだ貴重で、ストーマを造っている人が外出するときは必ず事前に調べてから外出されている方が殆どです。一般のトイレではストーマからの排泄物の処理が非常に困難である為です。

    ■ストーマに関する社会の理解度

    ストーマに関する社会の理解度については「全体でもまたストーマ種別や男女別で 見ても、総じて理解されていないと感じているオストメイトが圧倒的に多い」(第7回オストメイト生活実態基本調査報告書・平成23年3月より)とあるとおり、まだ一般にはきちんと理解されていません。

    設備の増加とともにその認知度は徐々に広がりつつありますが、筆者が看護師として勤務するなかで、オストメイト当事者の話からまだ認知度が低いと知らされることがしばしばあります。

    排泄機能の問題はオストメイト当事者たちにとって非常に言いにくい、あまり知られたいと思えない問題であり、当事者たちがなかなか声を上げにくいのが現状です。

    ■認知度が低いがゆえか…ストーマ処理の流しで洗髪する人も

    また、認知度・理解度の低さゆえか、「多目的トイレ」内にあるストーマ処理用の流しで顔や頭を洗ったりする人もいたという報告もあります。

    第7回オストメイト生活実態基本調査報告書によると、『今までにオストメイトのことが正しく理解さ れていないために困ったことはありましたか。』という質問をオストメイトの人達に行ったところ、ストーマ種別や性別に拘らず、30%前後の人達が『あった』と回答しているそうです。

    『(困ったことが)あった』と答えた方に、『それはどのような場面で経験し ましたか。』と尋ねた結果、外出先で経験したとの答えが全体の63.4%という結果も出ています。

    実際に若い世代のオストメイトの方が多目的トイレを使用した後に、他の人から非難の声を浴びせられたという話もあります。オストメイトの人達は一見すると他とかわりありません。そのため、多目的トイレを出てきた時に誤解して「普通のトイレを使え」と言われたようですが、「使わなければならない理由がある」にもかかわらず、いちいち他人の目を気にしなければならないというのは酷としか言いようがありません。

    排泄の問題は先述したように、当事者たちが非常に言いにくいセンシティブな問題です。そして、大腸やぼうこうにガンが発生するのは誰でも起こりうる事でありその為にオストメイトになる事も誰でもありえます。先天性疾患で子どもの頃からオストメイトという方もいます。

    事故や病気でこういう事も起こりえるのであれば、私たち一人ひとりが当事者意識を持って理解していく事が必要なのではと思います。

    <参考>
    日本オストミー協会
    NPO法人チェック

    (看護師ライター 梓川みいな / 画像・写真ACより)

    あわせて読みたい関連記事
  • 頑張る人の細胞を応援!ガンバレルーヤが強烈エピソード連発で会場を爆笑の渦に包む
    イベント・キャンペーン, 経済

    頑張る人の細胞を応援!ガンバレルーヤが強烈エピソード連発で会場を爆笑の渦に包む

  • セルフケアに積極的な新社会人はワークライフバランス重視の“二刀流”!?第一三共ヘルスケアの調査で明らかに
    社会, 経済

    セルフケアに積極的な新社会人はワークライフバランス重視の“二刀流”!?第一三共ヘ…

  • HPVワクチンのキャッチアップ接種、期間が延長されているの知ってた?
    社会, 経済

    HPVワクチンのキャッチアップ接種、期間が延長されているの知ってた?

  • 便器にすっぽり!アンパンマンにもトイトレをしてあげたかった2歳児
    インターネット, おもしろ

    便器にすっぽり!アンパンマンにもトイトレをしてあげたかった2歳児

  • 井上咲楽さん公式Xより
    エンタメ, 芸能人

    女優・井上咲楽、気づくと右目が緑色に!心配の声が上がるも「大丈夫なやつです」

  • Geroさん公式X(@Gero2525)より引用
    エンタメ, 芸能人

    Geroさん、尿路結石再発も「ビッグサンダーマウンテン療法」に異論

  • 画像提供:トキメキ戦争さん(@Lovekyun_Hero)
    インターネット, おもしろ

    おばあちゃん流新解釈? 本当に「おくだけ」にされた「ブルーレットおくだけ」事件

  • (写真左から)江崎グリコ株式会社 健康イノベーション事業本部 商品開発部の池田紀子さん、日本料理店「和敬」店主の竹村竜二さん、江崎グリコ株式会社 執行役員の木村幸生さん
    企業・サービス, 経済

    江崎グリコ、「おいしく減塩」に挑戦 減塩食品の革命を宣言

  • 「カロリAI」で食事の写真を読み込ませた画面。AIが分析して材料や量、カロリーを推定する
    インターネット, サービス・テクノロジー

    カロリー管理続かない人が作った「カロリAI」が話題に 管理をスマート化して“自分…

  • 「ひとりでトイレにいくときは」母が6歳息子に作ったイラスト豆本が便利すぎる
    インターネット, 社会・物議

    「ひとりでトイレにいくときは」母が6歳息子に作ったイラスト豆本が便利すぎる

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく
    社会, 経済

    雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

  • 声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声を守り多言語展開へ
    アニメ/マンガ, 声優

    声優とAIの共存を模索 81プロデュースとイレブンラボが業務提携、オリジナルの声…

  • Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行
    インターネット, サービス・テクノロジー

    Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

  • 駅ホームでの“撮り・録り”が危険に? JR東日本が注意喚起ポスターと動画を展開
    社会, 経済

    駅ホームでの“撮り・録り”が危険に? JR東日本が注意喚起ポスターと動画を展開

  • イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)
    エンタメ, 映画

    仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

  • アクリルロゴディスプレイSounds PlayStation
    ゲーム, ホビー・グッズ

    あの起動音が再び 「アクリルロゴディスプレイSounds PlayStation…

  • トピックス

    1. Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Google、ダークウェブレポートを終了 実用的な対処支援へ重点移行

      Googleは12月16日、個人情報がダークウェブ上に流出していないかを確認できる「ダークウェブ レ…
    2. Gmailを受診している画面

      Gmailの仕様変更でPOP受信が終了 自分は対象?POP利用チェック

      Gmailの仕様変更により、外部メールを取り込むPOP受信機能が2026年1月より利用できなくなりま…
    3. イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」(清水駅前銀座商店街)

      仲村トオルが清水に凱旋 映画「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベント開催

      映画「ビー・バップ・ハイスクール」(1985年)の劇場公開40周年を記念したイベント「清水 ビー・バ…

    編集部おすすめ

    1. 雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      雨や洪水の警報が変わる 新・防災気象情報、警戒レベル表示で行動判断しやすく

      国土交通省と気象庁は12月16日、雨や洪水などの危険を伝える「防災気象情報」について、2026年(令和8年)の大雨シーズンから新たな運用を始…
    2. コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      コミケの名物現象がまさかのグッズ化 「食べられるコミケ雲(わたあめ)」爆誕

      夏コミ名物、会場の熱気と参加者の汗が昇華して天井付近に発生するという伝説の現象「コミケ雲」。まさかそれを口にできる日が来るとは、誰が想像した…
    3. Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      Reactに「CVSS 10.0(最高)」の脆弱性 IPAが注意喚起

      情報処理推進機構(IPA)は12月10日、多くのウェブサービスで使われている開発技術に重大な問題が見つかり、国内でも悪用したとみられる攻撃が…
    4. ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライバー事務所4社に公取委が注意 「移籍しづらい」契約に懸念

      ライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」で活動するライバーをサポートしている事務所4社が、所属ライバーの“退所後の活動”を不当にしばっ…
    5. パラマウントのプレスリリース

      まるで三角関係?Netflixと“婚約発表”したワーナーにパラマウントが求婚 関係を分かりやすく解説

      アメリカの映画製作・配給会社であるパラマウントが12月8日、同じくアメリカのメディア企業ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)を1株…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト