戦時中、帝国海軍の象徴として人気を集めた戦艦「長門」。日本で唯一撃沈を免れて戦争を生き抜いた戦艦であり、戦後アメリカに接収されて、ビキニ環礁での核実験の標的艦として沈んだことは知られていますが、海底に眠る今の様子を伝えたいと、水中写真家の戸村裕行さんがその資金をクラウドファンディングで募っています。
いわゆる「八八艦隊」の主力として建造され、1920年の完成当時世界最大だった45口径41cm主砲、26.5ノットの快速で、姉妹艦の陸奥とともにアメリカ、イギリスの戦艦と「ビッグ7」と謳われた戦艦長門。大和型が軍事機密として一般に秘匿されたため、終戦まで帝国海軍を代表する戦艦として親しまれていました。1945年7月18日の横須賀空襲で艦橋が破壊され、当時の大塚艦長らを失いはしたものの、終戦まで唯一生き延びた戦艦でもあります。
終戦後、進駐してきたアメリカ軍に接収され、1946年にアメリカの核実験「クロスロード作戦」の標的艦として、マーシャル諸島ビキニ環礁の実験場へ曳航された長門。7月1日の空中投下実験「エイブル」ではほとんど無傷だったものの、7月25日の水中爆発実験「ベイカー」では損傷を受け、4日後の7月29日の朝、海面から姿を消していることが確認されました。
今回クラウドファンディングを実施している戸村裕行さんは、2011年ごろから世界各地の海底に眠る太平洋戦争(大東亜戦争)に起因する日本の沈船、航空機、潜水艦などを自ら潜って撮影し、ミリタリー総合誌「丸」などに寄稿している水中写真家。これまでにトラック(チューク)諸島の海底に眠る特設潜水母艦「平安丸(横浜港に保存されている氷川丸の姉妹船で、戦前のシアトル航路最終航海の後、海軍に徴用されたもの)」、徴庸船「桑港丸(川崎造船所で作られ、国際汽船、山下汽船で使用)」、神風型駆逐艦「追風」、艦上攻撃機「天山」、九五式軽戦車、パラオに眠る白露型駆逐艦「五月雨(ゲーム「艦隊これくしょん」でプレイ開始時に選べる初期艦娘としても知られる)」などを撮影し、紹介しています。中には「下駄履き零戦」として知られる二式水上戦闘機の残骸を撮影したものもあります。
2018年1月20日~4月22日の期間、横浜にある日本郵船歴史博物館で「グランブルーの静寂~もうひとつの氷川丸~」という展覧会も開いた戸村さんですが、6月15日から東京都内で開催予定の展覧会に合わせ、2018年6月末にビキニ環礁に眠る「長門」を訪ね、現在の様子を撮影したいとのこと。撮影後はできるだけ速やかに展示替えを行い、その撮影内容を展示して「長門のいま」を紹介する予定といいます。この展覧会は、全国いくつかの都市を巡回する機会も設けたいという考えもあるとか。
プロジェクトのタイトルは「戦艦・長門。70余年、ビキニ環礁に眠る艦船たちの“現在”を写真に。」。目標金額は150万円で、オーツ・オア・ナッシング形式のため、目標金額に達しなかった場合はプロジェクト中止となり、支援者に全額返金されることになります。支援者には限定のミニ写真集など、各種リターンを用意しているとのことです。
クラウドファンディングは「Readyfor」で、2018年6月22日の23時まで実施中。2018年5月17日の13時現在、65万円の支援額が集まっています。
情報提供:OCEAN PLANET
(咲村珠樹)