連日の酷暑の中でも、ペットの健康のためには適度な運動は確保したいところ。特に犬の場合は散歩の「さ」が聞こえただけでも散歩に行けると大騒ぎして喜ぶという子も多く、散歩の時間の確保は飼い主にとっても重要事項だったりします。しかし、炎天下の路面の温度は……。そんな危険に対して注意喚起したポスターが話題になりました。

 この散歩時の注意を促すポスターは、「NPO法人ペット里親会」が作成し、ネット上を中心に広く呼び掛けているもの。このポスターを「NPO法人 ペット里親会からです。真夏、犬を連れて散歩をしている飼い主さんに 見て貰いたいポスターです。シェアをお願い致します。これらを チラシにして あちこちで貼って欲しいと思います。日々苦しいだけの生活をする犬達が沢山います」と紹介した佳代 山谷さんのつぶやきが10万回近くリツイートされるなどツイッターでも大きく話題となっています。

■ 酷暑時、太陽熱を吸収したアスファルトはタンパク質が凝固する温度

 外気温が35度を上回ると、アスファルトの表面は60度前後になる事がこれまでにも知られています。タンパク質の熱変性による凝固は60度近くで起こりますが、人体のたんぱく質では42度から熱変性が起こります。犬や猫の場合、人間よりも平熱は高く38~39度くらいですが、それでも40度近くまで上がった場合は発熱とし、40度を超える場合は速やかに獣医さんに受診する事が望ましいとされています。ペットにおいても熱変性が始まる42度は極めて危険な温度であると言えます。

 酷暑時のアスファルトは晴れて太陽光を吸収している状態の時は60度以上という低温調理ができる温度、つまり触れただけで火傷を起こす温度と言えます。ポスターもその点を強く主張、「夏の炎天下、道路の温度は60度」と強調しており、散歩時の火傷に対する注意を促す内容になっています。

■ アスファルトに触れなければ大丈夫、ではない

 外気温が高い状態であればあるほど、日が落ちた後もアスファルトの黒い面は熱を保持してなかなか冷めにくい状態。また、表面が60度にもなるという事はその付近の温度、すなわち地面から近ければ近いほどその温度に近くなります。大人の人間の頭が気温36度に晒されている時、条件にもよりますがアスファルトから10cm程度の高さでは温度は50度以上にもなると言われており、その温度だけでも熱中症から熱射病を引き起こすリスクはかなり高くなります。

 犬や猫は毛皮があり汗をかかない分、高温にさらされた時の熱に対する反応が人間よりも困難となり、熱中症になりやすいのです。特に小型犬はアスファルトからあまり離れていない状態の高さに頭があり、さらに熱の影響を受けやすいので特に気を付ける必要があります。

■ 夏の散歩は早朝か日が落ちてから、地面の温度も確認してから

 編集部が南大阪動物医療センターに電話取材を行ったところ、対応してくださった獣医の方によると「散歩で足の裏を火傷したという件数は毎年1~2例程度ですが、普段の診療時に、暑さのピークを避けて早朝や路面の温度が下がったころに散歩する様飼い主さんに話をしているのでそれが徹底されているものと思われます」とのこと。このように、地域によってはばらつきは見られるかもしれませんが、獣医さんのもとには散歩で足の裏を火傷したという犬は運ばれてきています。また、元気がなくて具合が悪そうな感じだと思ったら熱中症だった、という事も。ペットも大事な家族です。散歩に行く時はまずアスファルトを手で触って確かめ、熱ければ道路の熱が冷めるのを待つか、早朝の路面が熱くなっていない時間帯を選ぶなどしてから出かけましょう。

<記事化協力>
NPO法人ペット里親会さん
佳代 山谷さん(@kayoyonanana)
南大阪動物医療センターさん(@373_003ka)

(梓川みいな)