おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

現代に蘇るヴァイキングの暮らし タイムスリップしたような緩やかな時の流れに心癒やされる

 AIの技術が進歩し、あと数十年後にはロボットのいる日常があたりまえ……なんてことが考えられています。そんな目まぐるしく変化する環境に、ついていけないと感じている方も多いのではないでしょうか。因みに筆者もその一人。心が疲れた時は、なぜか緑が恋しくなってしまいます。これはもしかしたら、人間の生命維持装置のようなもので「森にお帰りー」と本能が叫んでいる証拠なのかも? というようなことを考えながら、Twitterを見ていると、面白い活動をしている団体を発見しました。

  •  現代からタイムスリップしたような1000年前のヴァイキングの集落を公園やキャンプ場で再現し、ヴァイキングの服づくりや料理、テントの組み立てなど、その当時の古き良き文化を伝えている日本ヴァイキング協会さん。ここでは、極力現代で使用されている物を減らし、自然の中でゆったりと流れる時に耳を傾けながら、ヴァイキングの歴史や文化を体験できるそうです。

     そもそもヴァイキングというと、武器を携えて金品を強奪する海賊の荒々しいイメージがありますが、もともとは8世紀、北欧のスカンジナビアに定住していた民族で、その多くは農民。牧畜を営み、狩りや漁、手工芸にも長けていたそうです。その後、高い造船技術を持っていたヴァイキングたちは、ヨーロッパ諸国に赴き交易を行い、さらなる新天地を求め、アイスランド、グリーンランド、アメリカ大陸と様々な国を開拓していったとか。
    そんな独自の文化をもつヴァイキングの魅力を伝えるべく活動をしている日本ヴァイキング協会の本山さんに、そのきっかけやヴァイキングの暮らしについてお話を伺いました。

    ――ヴァイキングの活動はいつから日本で始まったのですか? そのきっかけを教えて下さい。

     縁あって北欧でヴァイキングリエンアクター達に出会い、私自身のヴァイキング活動が始まったのは2000年のことです。以来、度々北欧で彼らと共に過ごし、過去の文化の中には現代に活かせる発見があると感じました。

     この感覚を自分だけで持っているのはもったいない、日本で他の人達と共有していきたいと思う様になり、2017年より日本ヴァイキング協会を始めました。私たちの活動は、時を越えてヴァイキングの文化を体感できる場作りです。

    ――ヴァイキングは、始めの頃は北欧の寒い地域で独自の文化を持つ農耕民族だったのが、交易をはじめ海を渡りヨーロッパで金品などを強奪し恐れられるようになったのは、なぜですか?

     外の世界に状況の変化を求めていたのだという解釈があって、今はこの考え方がしっくり来る様に思っています。つまり、自分の所だけで補えない物、物品、土地、経験、名誉などの必要性があったために、ヴァイキングは海を越えて他の土地に向かったということです。交易も略奪も植民も、彼らの生活を成り立たせるための手段の1つでした。
    どの道を選ぶのかはその人の気質もあったかもしれません。現状にとらわれず改善を求めたヴァイキング精神は、現代でも見習い取り入れられるように思います。

    ――キャンプやワークショップをされているということですが、どのような人たちが集まるのでしょうか?

     ヴァイキングその物や神話に興味を持っている方以外にも、ファンタジーが好きな方や、ヴァイキングのことは知らないけれど活動に興味を持ってくれた方など、様々な方にご参加いただいています。

    ――当時の服装や、食べ物などを再現するリエンアクターと呼ばれる人たちは、日本で何人ぐらいいるのですか?

     正確な数は分からないのですが、ヴァイキング時代や中世ヨーロッパの文化を再現している方は、日本にも多くいらっしゃる様です。先日のイベント、ヒストリカルビレッジがそうであった様に、これからその様な方々とも交流を深めていきたいと思っています。(リエンアクターという言葉は私が慣れているために使っていますが、他の方は別の言葉で表しているかもしれません)

    ――気になったのですが、普段つかっているヴァイキングテントは、たてるのに何時間ぐらいかかるものなのでしょうか?

     私達が使っているのは、ノルウェーで発掘された構造のヴァイキングテントです。幕は帆布、フレームは木材でできています。木材をはめ込み、幕をかけるだけなので、分解組み立ては比較的簡単です。2人くらいで1時間弱あれば建てられます。重さがあり場所もとるので、組み立てよりも荷運びの方がずっと大変です。実際に使ってみると、当時一人一人が持って行けたわけではなく、限られた人だけが使えたことがよく分かります。

    ――ちなみに、当時のヴァイキングたちの毎日のスケジュールはどのようなものだったのでしょうか?

     彼らの多くは牧畜を主体とした農民だったので、それらに関する業務を行っていたと思われます。また農民といってもそれを専属ということではなく、建築や鍛治なども自ら行うことができ、また時に交易やヴァイキング行(襲撃遠征)などに出向いていた様です。現代と異なる分業のない社会では、生活するために多くのことをこなす必要がありました。

    ――ヴァイキングの料理は、かなり本格的で興味深かったのですが、当時、塩などの調味料をどのように調達していたのでしょうか?

     塩は、海水や海藻を乾燥させて作られ、調味料としても保存食を作るためにも欠かせない物でした。ディルやコリアンダーなどのハーブは自生していて、香り付けに用いられていた様です。



    ――服装など麻でできたものを着ていたとのことですが、実際の着心地はどんな感じですか?

     私にとっては正装なので、機能の面でも気持ちの面でも快適の一言に尽きます。麻やウールは、暖かさも寒さも直接的に感じられる様に思います。良い面も不便な面もありますが、それが1000年前にヴァイキング達が体感していた感覚なのです。ヴァイキング服を着ることは見た目の変化だけでなく、当時の空気を全身で感じることに繋がると思っています。

    ――これからのヴァイキングの活動でどのようなことを伝えていきたいですか?

     「人は死を迎えるその日まで、快活で楽しく過ごすべきだ」というヴァイキングの格言があります。人によって興味のあることに違いがあると思います。例えば、料理や物作りが得意な人もいれば、神話や歴史に詳しい人、キャンプが好きな人もいるでしょう。こうでなければいけないということはなく、ひとりひとりが自分のペースで活動でき、皆で楽しく過ごせる場づくりを行なっていきます。

    <取材協力>
    日本ヴァイキング協会/Japan Viking Association
    (HP:japanvikingassociation.com / Facebook:@JapanVikingAssociation / Twitter:@Japan_Viking

    (黒田芽以)

    あわせて読みたい関連記事
  • バケットカーゴ 22
    商品・物販, 経済

    薪も長い道具もすっきり収納!「バケットカーゴ 22」2025年2月発売

  • キャンプ飯ビフォー・アフター 最初はジブリ風、現在は……「こういうのもいいんだよ」
    インターネット, おもしろ

    キャンプ飯ビフォー・アフター 最初はジブリ風、現在は……「こういうのもいいんだよ…

  • ワークショップの様子
    イベント・キャンペーン, 経済

    軍事シーンの極意を学ぶ、東京・中野で1月19日に俳優向けワークショップ開催

  • 「クッカー2点セット」がVASTLANDより新発売
    商品・物販, 経済

    ミニマムキャンプ向きな「クッカー2点セット」VASTLANDより新発売

  • アウトドアフェス「BEER CAMP 2024」開催!キャンプ気分で美味しいビールを堪能
    イベント・キャンペーン, 経済

    アウトドアフェス「BEER CAMP 2024」開催決定!キャンプ気分で美味しい…

  • キャンプ収納の定番「トランクカーゴ」内が仕分け可能に 「メッシュカーゴ」と「インナーカーゴ」が新登場
    商品・物販, 経済

    キャンプ収納の定番「トランクカーゴ」内が仕分け可能に 「メッシュカーゴ」と「イン…

  • 「バナナペグハンマー」が登場
    商品・物販, 経済

    そんなバナナ!「バナナペグハンマー」登場 創業53年の精密金属メーカーがバナナを…

  • リンとなでしこがデザイン!アニメ「ゆるキャン△」コラボの携帯トイレットペーパー発売
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    アニメ「ゆるキャン△」コラボの携帯トイレットペーパー登場 リンとなでしこがデザイ…

  • 代用品が探しにくい「ナイフ」が1位
    インターネット, おもしろ

    あなただったら無人島に何をもっていく?無人島に持って行きたいキャンプ用品1位は「…

  • 癒やしのキャンプ場が地獄のキャンプ場に 実際にあったひどい出来事3選(撮影:宮崎美和子)
    ライフ, 雑学

    癒やしのキャンプ場が地獄のキャンプ場に 実際にあったひどい出来事3選

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • TOKYO FM、SNS上の「サイバー攻撃」指摘を調査 分析用データの一部流出が判明
    インターネット, サービス・テクノロジー

    TOKYO FM、SNS上の「サイバー攻撃」指摘を調査 分析用データの一部流出が…

  • EmEditor公式サイトの不正改ざん問題で続報 「攻撃者の高い執念が感じられます」
    インターネット, サービス・テクノロジー

    EmEditor公式サイトの不正改ざん問題で続報 「攻撃者の高い執念が感じられま…

  • 東京ディズニーランド&シー、9億人目のゲストをお迎え
    社会, 経済

    東京ディズニーランド&シー、9億人目のゲストをお迎え

  • 日本自閉症協会、「デジタル自閉症」という表現に反対 誤解や偏見助長を懸念
    インターネット, 社会・物議

    日本自閉症協会、「デジタル自閉症」という表現に反対 誤解や偏見助長を懸念

  • クマ出没マップ 「FASTBEAR」
    インターネット, サービス・テクノロジー

    AI集約のクマ出没マップ「FASTBEAR」公開 全国の出没情報をまとめて可視化…

  • 動画収益は復興支援へ インフィニット、能登半島応援アニメをYouTubeで全2編公開
    アニメ/マンガ, 放送・配信

    動画収益は復興支援へ インフィニット、能登半島応援アニメをYouTubeで全2編…

  • トピックス

    1. 東京ディズニーランド&シー、9億人目のゲストをお迎え

      東京ディズニーランド&シー、9億人目のゲストをお迎え

      東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを合わせた累計入園者数が1月6日、9億人に到達。運営するオリ…
    2. クマ出没マップ 「FASTBEAR」

      AI集約のクマ出没マップ「FASTBEAR」公開 全国の出没情報をまとめて可視化

      全国のクマ出没情報を地図上で可視化する「FASTBEAR(ファストベア)」の公開が、12月26日に発…
    3. 2026年も大漁!年賀状「隠しデザイン」を本気で探した結果

      2026年も大漁!年賀状「隠しデザイン」を本気で探した結果

      ついに幕を開けた2026年。1月1日の朝といえば、ポストをのぞいて新年のあいさつを受け取る──そんな…

    編集部おすすめ

    1. TOKYO FM、SNS上の「サイバー攻撃」指摘を調査 分析用データの一部流出が判明

      TOKYO FM、SNS上の「サイバー攻撃」指摘を調査 分析用データの一部流出が判明

      株式会社エフエム東京(TOKYO FM)は1月6日、サイバー攻撃や大量の個人データ流出を指摘するSNS投稿について事実確認の結果を公表しまし…
    2. EmEditor公式サイトの不正改ざん問題で続報 「攻撃者の高い執念が感じられます」

      EmEditor公式サイトの不正改ざん問題で続報 「攻撃者の高い執念が感じられます」

      テキストエディター「EmEditor」を提供するEmurasoftは1月4日、公式サイトに関するセキュリティインシデントの続報を公表しました…
    3. 日本自閉症協会、「デジタル自閉症」という表現に反対 誤解や偏見助長を懸念

      日本自閉症協会、「デジタル自閉症」という表現に反対 誤解や偏見助長を懸念

      一般社団法人日本自閉症協会は1月5日、比喩的に使われている「デジタル自閉症」という言葉について、反対する声明を発表しました。協会は、この言葉…
    4. 動画収益は復興支援へ インフィニット、能登半島応援アニメをYouTubeで全2編公開

      動画収益は復興支援へ インフィニット、能登半島応援アニメをYouTubeで全2編公開

      アニメーションプロデュースの株式会社インフィニットは1月1日、「能登半島復興応援企画」短編アニメーションを、YouTubeにて全2編公開しま…
    5. シートタイプのWebMoney

      WebMoney、事業をビットキャッシュへ承継 一部サービスは終了へ

      オンラインゲームの課金手段として知られる「WebMoney」が事業の節目を迎えます。auペイメントは2026年3月31日付でWebMoney…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト