陸上自衛隊最大規模の航空科部隊である第1ヘリコプター団、第4対戦車ヘリコプター隊の拠点、千葉県の木更津駐屯地で2019年12月8日、航空祭が開催されました。多数のヘリコプターが空を舞ったほか、抽選で来場者がCH-47による体験飛行を楽しみました。

 旧海軍の木更津飛行場を前身とする木更津駐屯地。戦前は航研機の世界記録飛行が行われたほか、戦時中は日本初のジェット機「橘花」が初飛行を行なった地でもあります。戦後はアメリカ軍による接収を経て、現在はアメリカ軍と自衛隊の共同使用飛行場となっています。2019年9月には、最後の開催となったレッドブル・エアレースのレースエアポートとしても使用されました。

 木更津駐屯地に拠点を置く主な部隊は、陸上総隊の第1ヘリコプター団と、東部方面航空隊の第4対戦車ヘリコプター隊。なかでも第1ヘリコプター団は大型輸送ヘリコプターのCH-47J/JAのほか、国外からの賓客や皇族、閣僚らを輸送する特別輸送ヘリコプターのEC225LPを装備していることで有名です。

 行事の始まりは祝賀編隊飛行から。快晴の空の向こうに富士山の偉容を見ながら、ヘリコプターが一斉に離陸します。


 CH-47J/JAのほか、UH-60JA、UH-1J、AH-1S、OH-6Dと、陸上自衛隊のヘリコプターのほか、連絡偵察飛行隊のLR-2連絡・偵察機が編隊を組んで会場上空を通過します。長年陸上自衛隊で特科(砲兵)部隊の目となって活躍してきた偵察・観測ヘリコプターOH-6は、2019年度限りで引退するため、今回が最後の参加となりました。


 祝賀飛行を終えると、各装備品のデモンストレーションも実施されます。エンジンの不具合で、実働部隊での飛行停止措置が続く国産のOH-1偵察ヘリコプターは、航空機牽引車(トーイングカー)の動作展示用の機材として参加。OH-1は明野の航空学校で試験飛行が始まっており、実働状態に復帰するのも近いようです。

 世界で3本の指に入る消防機材のトップメーカー、オーストリアのローゼンバウアー製消防車パンターは、各所に装備された放水銃を使って放水を実演。運転席上に設けられた放水銃は、1分間に9トンもの水を最大100mの距離で放水することが可能です。

 主役の航空機は、その能力を示す飛行を見せてくれました。特別輸送ヘリコプター隊のEC225LPは、普段のVIP輸送任務では絶対に見せない軽快な運動性を披露。

 第1空挺団の協力により、空中機動作戦のデモンストレーションも実施しました。LR-2の上空偵察から始まり、AH-1Sの火力支援のもと、CH-47から偵察部隊が進出。





 その後本隊となる普通科部隊がCH-47で到着し、戦闘を進めていきました。



 会場では、千葉県警や千葉市消防局、航空自衛隊、海上自衛隊を含む各種航空機が地上展示されたほか、格納庫内ではそのほかの珍しい装備品が展示されました。防衛大学校からは、校友会(サークル)のグライダー部で使用しているシュライヒャーASK-21が展示されていました。


 また、第1ヘリコプター団と同じく陸上総隊隷下の中央即応連隊(栃木県・宇都宮駐屯地)からは、輸送防護車(タレス・オーストラリア・ブッシュマスター)とともに、爆発物処理などに使用する防爆衣(Med-Eng製EOD-9)を展示。

 実際に防爆衣を着込むところも見せてくれました。EOD-9Aヘルメットの後ろなどにバッテリーがついており、内部の冷却や外部スピーカー(着用すると声が外に聞こえづらくなるため)といった装備の電源となります。




 各機能は左腕内側にある操作パネルでコントロール可能。全備重量約30kgという防爆衣ですが、バッテリーの連続稼働時間はおよそ5時間と、通常の爆発物処理には十分すぎるほどの性能だといいます。

 来場者が楽しみにしているのが、CH-47による体験飛行。当日抽選で選ばれた幸運な方が、CH-47JAに乗り込んでいきます。

 一般の人からすると、この体験飛行以外で自衛隊のヘリコプターに乗るというのは、災害派遣で救助してもらう時ぐらい。珍しい機会とあって、機内では写真や動画を撮影する姿が多く見受けられました。

 木更津駐屯地を離陸し、ヘリコプターは東京湾へ向かいます。木更津駐屯地の端には、旧日本海軍が構築した航空機掩体(シェルター)がいくつも残されています。


 コクピットの様子も見学しながら、ヘリコプターは東京湾横断道路の海ほたるサービスエリアを眼下に眺めて引き返します。およそ10分間という短いフライトですが、窓から眺める景色は格別だったようです。




 このほかにも格納庫内のステージでは、アメリカ海軍第7艦隊バンドや、自衛隊太鼓の演奏といったイベントも実施。来場者は思い思いに楽しんでいました。

 木更津駐屯地は広報資料館をリニューアルし、LR-1連絡偵察機(最後の年まで現役だった20号機)のほか、1機しかないVIP仕様のKV-107輸送ヘリコプターなどを展示しています。木更津飛行場の歴史を物語る展示品もあり、より魅力的な姿になっていることもお伝えしておきます。

※初出時、第1ヘリコプター団と中央即応連隊を「中央即応集団」隷下としていましたが、2018年3月27日より新たに創設された「陸上総隊」隷下の部隊となっています。お詫びして訂正いたします。

(取材・撮影:咲村珠樹)