アメリカ空軍では、初めて女性の体に合わせて作られたボディアーマーを採用し、2021年から基地警備部隊へ支給を始めました。この背景には、様々な軍務に女性が進出し、男性向けの装備を流用していた現状から、より女性のパフォーマンスを発揮できるよう配慮するアメリカ軍全体の取り組みがあります。
これまでアメリカ空軍では、基地警備部隊を中心に使用されているボディアーマーは男性用しかなく、部隊に配属された女性も男性用を着用しています。しかし男女には体格差があり、多くの女性にとって男性用ボディアーマーはサイズが大きく、時に自由な動きを妨げられる場面もあったといいます。
女性が様々な軍務へ進出するようになり、アメリカ軍では女性がよりパフォーマンスを十分発揮できるよう、装備や軍務の内容などを再検討するように。一例として、新しいサイドアームのハンドガンM17/M18は、モジュラーシステムを採用してグリップのサイズを変更可能にし、手の小さな女性でも扱いやすくなっています。
女性の体形に合わせたボディアーマーも、その一環で検討されたものです。アメリカ空軍が採用したのは、アスペット(Aspetto)の「Mach V」モジュラー式ボディアーマー。アメリカ陸軍では一足先に、2013年から女性用ボディアーマーとして採用しています。
男性用と女性用の大きな特徴となっているのが、バストのラインに合わせてカーブした胸部防弾プレートと、男性より短めの丈。これまでの男性用ボディアーマーでは丈が長すぎ、姿勢をかがめたり車のシートに座ったりした時に、ボディアーマーが上に押し上げられて動きが阻害されるケースもありました。
また、ウエスト部分には面ファスナー(マジックテープ/ベルクロ)と樹脂製バックルを採用し、サイズに合わせてフィッティングの調節が可能に。そして体力に合わせて軽量化も実現しています。
新しい女性用ボディアーマーは、オハイオ州ライト=パターソン空軍基地にある空軍ライフサイクル管理センターが中心になって、各種の試験を実施。2020年に実施された部隊での実地試験を通じ、2021年1月から部隊へ支給することが決定しました。
最初に支給を受けた部隊の1つ、ニューメキシコ州アルバカーキ近郊にあるカートランド空軍基地で警備を担当する、第377空軍警備隊のキア・C・クック兵長は「まず心に芽生えた感情は興奮でした。これは歴史的瞬間で、軍が私たち女性を警備兵として能力を高く評価し、そのために専用の装備を支給してくれたのですから」と、初の女性用ボディアーマーを手にした感想を語っています。
クック兵長の上官にあたるブリアンヌ・N・トラパニ曹長は、自身が空軍に入隊した時、女性の割合は14%に過ぎなかったのが、現在では21%に増加していることに触れ「私たちは男性と同じ任務をこなしていますし、同じチームの一員として身体的特徴に合わせた装備を使うことは、この男性優位の職場環境において包括性を進める大きな一歩となります。これは軍における方針が正しい方向に進む、変化に富んだエキサイティングな出来事です」と、空軍における取り組みを歓迎しています。
陸軍に続き、空軍でも女性用のボディアーマーが採用され、軍に属するすべての人が能力を発揮できるよう配慮する、ダイバーシティ(多様性)を重視するアメリカ軍の取り組みが進んでいます。
<出典・引用>
アメリカ空軍 ニュースリリース
Image:USAF/U.S.Army
(咲村珠樹)