世の中には、一般の人だとスルーしてしまうけれども、“ファンならピンとくるツボ”というものがあります。とあるTwitterユーザーが道路で出会った、片側交互通行の仮設信号機。これに「水曜どうでしょう」の名場面を感じ取って写真をツイートしたところ、多くの「どうでしょう」ファンが反応しました。

 仮設信号機が設置された、片側交互通行の道路。一見、なんの変哲もない風景ですが、これに「これ見て何か連想して笑っちゃう人と仲良くなりたい」という言葉を添えてTwitterに投稿したのは、すくとりっぷさんです。

 仮設信号機には、青に変わるまでの時間をカウントダウンする表示が。これにめざとく反応したのは、北海道テレビ放送(HTB)の人気バラエティ番組「水曜どうでしょう」のファン、通称「どうでしょう藩士(旧称:どうでしょうバカ)」でした。

 原付バイク(カブ)で東京・銀座から、札幌のHTBを目指して走るという「原付東日本縦断ラリー(通称:原付東日本)」。この企画中、群馬県高崎市で購入した“高崎だるま”をカブの荷台に載せた大泉洋さんは、仮設信号機のある片側交互通行の場所で「だるま屋ウィリー事件」というハプニングを起こしてしまいます。

 仮設信号機が赤になっていたため、停止した大泉さんと「ミスター」こと鈴井貴之さんのカブ。青信号までの残り秒数が表示されるタイプだったので、大泉さんは青になった瞬間にダッシュを決めようと「5、4、3、2、1……」とカウントダウンし、青になった瞬間、アクセルを思い切り開けたのですが、ギアがニュートラルに入っていたため、動きません。

 大泉さんが出し抜こうと思っていたミスターは、横からスーッと追い抜いて先行します。焦った大泉さん、アクセルを開けたままギアをローに入れてしまいました。

 大泉さんらが乗っているカブのミッション(変速装置)に採用されている自動遠心クラッチは、ギアチェンジペダルを踏み込んだら自動的にクラッチが切れ、ペダルを元に戻すと再度つながる構造。アクセルを開いていなければ遠心力が小さく、クラッチはつながらないのですが、慌てた大泉さんはアクセルを大きく開けた状態でチェンジペダルを踏み込んでギアをローに入れた後、ペダルから足を離してしまい、自動的にクラッチがつながってしまったのです。

 大泉さんのカブは急発進し、前輪を浮かせた“ウィリー”の状態で前方の柵へ突っ込んでしまったのでした。一旦は平静を装った大泉さんでしたが、藤村ディレクターから「大丈夫でしたか?」と再度呼びかけられ「大丈夫じゃねぇよ!なまら(すごく)恐かったよ!」と語った……というのが「だるま屋ウィリー事件」の顛末。大泉さんが経緯を説明した「ギアいじったっけ、ロー入っちゃって、もうウィリーさ」は、シリーズ屈指の名言として知られています。

 この現場となったのは日本海に面した国道345号線(新潟県村上市)でしたが、すくとりっぷさんが遭遇した場所は、埼玉県と山梨県を結ぶ国道140号線。すくとりっぷさんによると、埼玉県秩父市から山梨方面に向かっている途中で「正確な場所は覚えていないのですが、雁坂トンネル(筆者註:埼玉・山梨県境の雁坂峠をくぐる山岳トンネル)の手前あたりだったと記憶しています」とのことです。

 大泉さんのカブと同じく、バイクで走っていたすくとりっぷさん。「先行車も後続車もなく、写真の対面通行の場所で停止した際『これはウィリーしないように気をつけねば』とつい思い(笑)、ギアをニュートラルにして撮影した次第です」と、撮影時の様子を語ってくれました。

 撮影後は大泉さんの轍を踏まないよう「カブではなかったですが、ニュートラルから1速にして特に問題なくそろーりと発進できたのでウィリーはしなかったですね(笑)」と語るすくとりっぷさん。およそ10年前、テレビ埼玉で放送された「水曜どうでしょうClassic」での「アメリカ横断」がきっかけとなった“どうでしょう藩士”だそうですが、反響の大きさには驚いた様子です。

 「こんなにどうでしょう藩士がいたのかと(笑)。見れば分かるだろうなと思い含みを持たせてツイートしたのですが、案の定みなさんウィリーだと分かっていて流石だなと思いましたね(笑)。一言も『水曜どうでしょう』とも『ウィリー』とも言っていないのに、熟練藩士にはお見通しだったようで……」

 やはり同好の士ともなれば、ほんの小さな気配でも察してしまうもの。同じく20年を超えるどうでしょう藩士の筆者も、つい反応してしまった次第です。

 すくとりっぷさんは「リプライが多くて追えなかったですが、かなりの人と仲良くなれそうでした(笑)」とい語ってくれました。これがきっかけとなり、交流が生まれるかもしれませんね。

<記事化協力>
すくとりっぷさん(@sukutrip)

(咲村珠樹)