鉄道網の発達した土地では、目的まで向かうのに複数のルートを選択することができます。ルートを選択する基準は、所要時間の短さや、乗り換えの少なさなど人それぞれ。目的地までの運賃もそのひとつです。東京都内の新木場駅から池袋駅まで向かう場合、こんなに運賃が違うという比較がTwitterに投稿されました。

 「新木場から池袋まで3通りの行き方があるが、運賃が違いすぎてビビる」と、運賃表の写真付きで投稿したのは、鉄道ファンのタケシさん。

 話をうかがうと「普段は新木場駅で乗り換えの際、新宿までどちらが安いのか見比べた時に、池袋までなら東京メトロも臨海線も乗り換えしないで行けるけど、どのくらい運賃が違うのか気になって運賃表を見比べました」と、素朴な疑問が発端だったことを語ってくれました。

■ 310円、250円、600円で運賃バラバラ

 出発点となった新木場駅(東京都江東区)には、JR京葉線、東京メトロ有楽町線、りんかい線(東京臨海高速鉄道)の3路線が乗り入れています。それぞれの路線を使った場合の運賃を見てみましょう。

▼ JR京葉線

 JR京葉線を使った場合、終点の東京駅でJR山手線へ乗り換えが必要です。運賃の基準になる「営業キロ」では19.7kmで、運賃は310円(切符購入の場合)。

JR線の場合(タケシさん提供)

▼ 東京メトロ有楽町線

 東京メトロ有楽町線に乗った場合、始発駅となる新木場から池袋まで乗り換えはありません。運賃の基準になる「営業キロ」では16.8kmで、運賃は250円(切符購入の場合)。

東京メトロの場合(タケシさん提供)

▼ りんかい線

 りんかい線を選択した場合、始発駅の新木場から終点の大崎を経由して、JR埼京線に直通運転をしています。こちらも東京メトロ同様、乗り換えなしで運賃は600円(切符購入の場合)。

りんかい線の場合(タケシさん提供)

 一番安い東京メトロ有楽町線に比べ、りんかい線~JR埼京線のルートの運賃は2倍以上の開きが。これにはタケシさんも「ICカードで乗ると運賃表をまじまじと見ることがないので、りんかい線経由が思ったより高くて驚きました」と話しています。

■ なぜ、りんかい線経由はこれほど高い?

 なぜ、りんかい線経由はこれほど高いのでしょう?これには2つの理由があります。

 まず、りんかい線は東京都などが出資する第3セクター「東京臨海高速鉄道」唯一の路線です。新木場~大崎の7駅分しかない路線で利益を出さなくてはならないため、大崎まで400円という高めの運賃にせざるを得ません。

 そこに、大崎から先のJR線運賃200円がプラスされるので、同じ会社線内の運賃で済むJR線と東京メトロとの差が大きくなってしまうのです。運賃の基準になる「営業キロ」では、新木場~大崎が12.2kmで400円、大崎~池袋が13.4kmで200円となります(切符購入の場合)。

 ほかの基準ではどうでしょうか。乗り換えの回数を比較すると、乗り換えなしで行ける東京メトロ有楽町線か、りんかい線~JR埼京線のルートが有利。JR京葉線は東京駅で乗り換えが必要ですが、京葉線ホームは山手線ホームと大きく離れた場所にあり、かなりの距離を歩くので大変です。

 総合的に見ると、乗り換えの必要がなく運賃が最も安い東京メトロ有楽町線が第1選択になりそうです。特段の事情がなければ、東京メトロを選択した方が楽そうですね。

 こういった「同じ出発地と目的地で複数のルートがある」ケースは、ほかにもいろいろ。たとえば、大阪の大阪(大阪梅田)駅から三ノ宮(神戸三宮)駅の場合では、阪急、阪神、JRと乗り換えのいらない3ルートがあり、運賃は阪急と阪神が同じ320円。JRは410円となっています。

 ルートが異なれば経由地も異なり、それぞれ車内や沿線風景にも特色があります。時間とお金に余裕があれば、いつもと違うルートで乗車してみたら、新しい発見があるかもしれません。

<記事化協力>
タケシさん(@tksmrwk)

(咲村珠樹)