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異世界から迷い込んできた生き物たち イササさんの幻想生物フィギュア

 いわゆる「異世界もの」は、物語やゲームでも人気のジャンル。自分達が暮らしている日常とはちょっと違う、フィクションの世界を楽しむ方も多いと思います。

 そんな異世界と何かの拍子でつながり、そこに住む生き物たちが迷い込んできたら?ひとつの世界観のもと、幻想世界の住人たちをフィギュアにして発表している造形作家がいます。興味深い異世界の生き物たちについて、話をうかがいました。

  •  異世界に住む生き物たちをフィギュア化し、発表している造形作家のイササさん。もともとは、10年ほど前からイラストで創作活動をしていたといいます。

     イラストでは実在の動物を描くかたわら、異世界の文物や伝記、生き物をテーマにした作品も作っていたとのこと。造形については2018年ごろから取り組んでいるそうです。

     異世界をモチーフにした作品作りについて、イササさんは「小学生の頃からハリー・ポッターやデルトラクエスト(エミリー・ロッダ氏原作のファンタジー作品)、ドラゴンライダー(クリストファー・パオリーニ氏のファンタジー小説)、スタジオジブリ作品などに触れながら育ったので、自分でもそういった広大で美しい、非現実的だけども息づく生物たちがいる世界を作りたくなったのかもしれません」と語ってくれました。

     現実世界とは異なる生き物というと、ドラゴンなどをまず想像しがちですが、「そういった世界には、メインの派手なモンスターと同時にネズミや虫のような、ストーリー上では端役的な生き物もたくさん存在し、その数だけ物語があると思うんです」とイササさん。小さな生き物たちにも目を向けました。

     現在展開している、共通した異世界の住人として誕生した第1号は「覚えてる範囲ですと、基盤となったのはモクリーという子です」。ツノのある白い頭部と、背中と尻尾に生えた花びらや羽根のようなものが可愛らしい2本足の生き物ですが「鳥などに捕食される、本当にネズミのような存在です」とのこと。

    モクリーのイラスト(イササさん提供)
    モクリーとホウボウ(イササさん提供)

     祈りを捧げる姿が印象的な「キャノピックジャー」。エジプトのミイラ作りで摘出した内臓を入れておく「カノプス壺」をモチーフにした作品です。

    キャノピックジャー(イササさん提供)

     立体的な五芒星の頭部を持つのは「星の子 二等星」。星の力に人間の要素が混ざって生まれた生き物だそうで、生みの親を救うべく色々な記憶や記録を集め続けるといいます。

    星の子 二等星(イササさん提供)

     多くいる星の子たちの中には、特別な存在もいます。そのうちの1つが「アーケナブル(星の子 一等星)」。星の子たちが見たもの、知ったものといった記憶の全てとつながり、記憶の図書館のような役割を果たしているんだとか。

    星の子 一等星のアーケナブル(イササさん提供)

     星の子や、その生みの親を外敵から守っている戦士たちも。たとえば、月の戦士「マフィネ」。元来は水の妖精で女性ということもあり、月の力を受けてこの姿になったそうです。

    マフィネのイラスト(イササさん提供)
    マフィネ(イササさん提供)

     美味しそうなチョコレートに見えるのは、ウミウシとドラゴンをモチーフにした「ウミウシドラゴン」。この色は2022年のバレンタインデーに合わせたものだそうで、本来はアオウミウシのようなブルーとゴールド、そしてクリームの体色が鮮やかな生き物です。

    ウミウシドラゴン チョコカラー(イササさん提供)
    ウミウシドラゴン(イササさん提供)

     これらの生き物が住む世界についてうかがうと「昔は人間が存在していたものの、複数の事件をきっかけに人間を排除してしまった世界」というのがベースになっているんだとか。

     排除された人類は私たちの住む現実世界に飛ばされており、その際に通路となるリンクができてしまっているとのこと。このため、時々人間があちらへ迷い込む“神隠し”や、逆にあちらの世界から生き物が迷い込んでくることがあるそうなんです。

     イササさんは、現実世界に迷い込んできたこれらの生き物たちを発見・採集し、その研究資料を 作成する過程でフィギュアを作っている、と自らの立ち位置を規定。作品を作るうちに世界は少しずつ広がっており、これまで発見できなかった生き物を「報告」する形で、新たな作品が生まれていきます。

    デザイン画(イササさん提供)
    フィギュア(イササさん提供)

     作品作りに使用しているのは「初期の頃は石粉粘土でしたが、今はほとんど3Dプリンタで原型を作り、一般的なフィギュアの素材に置き換える、という手法で作っています」。「クリオネモドキ」ができるまでを例に説明してもらいましたが、最初はアイデアスケッチから始まり、3Dモデリングして出力します。

    「クリオネモドキ」デザイン画(イササさん提供)
    「クリオネモドキ」3Dモデル(イササさん提供)
    「クリオネモドキ」3Dプリンタ出力(イササさん提供)

     これらのフィギュアたちは、アートイベントの「デザインフェスタ」や同人作品の祭典「コミックマーケット」といったイベント、ネットではBOOTHなどで入手可能。彩色済みのほか、未塗装のキットも用意されており、自分の好きなカラーリングで楽しむこともできます。

     手元にお迎えした方に向けて、イササさんは「持ち歩いて一緒に出かけることもできるものや、生活の一部として取り入られるものもあるので、一緒に出かけて撮影するなどして、ご自身との新たな物語を作っていただくのも楽しいと思います」と語ってくれました。

     指のリサイズのドラゴンなんて、まるでペットのような愛らしさです。これは1/12スケールのフィギュアと合わせると、ちょうど腕に乗るくらいのサイズ感。

    指のりドラゴン(イササさん提供)
    指のりドラゴンとお花見(イササさん提供)

     ある時、異世界からひょっこり迷い込んできたファンタジーの生き物たち。イササさんは、2022年5月21日・22日に東京ビッグサイトで開催される「デザインフェスタvol.55」にも、ブースナンバーK-70・71で参加予定だそうですよ。

    <記事化協力>
    イササさん(@isanatolu)

    (咲村珠樹)

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