モデラーが作品作りを楽しむ時、しばしば「改造」することがあります。よりイメージに沿ったフォルムにしたり、パーツを流用して別のものを作り上げたりと、モデラーの腕の見せどころといえるでしょう。
モデリングの素材は、既存のプラモデルに限りません。100円ショップに売っていた子ども用おもちゃを使い、オリジナルのロボット作品を作り上げたモデラーがいます。
モデラーのツムキ式さんは、自由な発想で様々な作品を作っています。作風としてはメカものの場合、「使い込まれた道具」感あふれる、血の通ったリアルさが特徴。
そんなツムキ式さん、今から4年ほど前にTwitterで、100円ショップの子ども向けおもちゃ「組立ロボット」をリペイントした作品を見たんだそう。
「いい感じのディティールが入っていて、改造の素体にすると面白そうだと思いました」と、ほかのプラモデルのパーツや、100円ショップで売っているほかの商品を活用して改造することに。
全8種類で、何が出てくるかはパッケージをあけてのお楽しみ、という「組立ロボット」。材質は塩化ビニールだったそうです。
ディティールがしっかりメカっぽいこともあり、それをいかしてリアル寄りの作品を目指したとのこと。素体のほか、様々なパーツや素材を用意し、いよいよ作り始めることになりました。
ここで問題となるのが、組立ロボットは塩化ビニール、プラモデルはスチロール樹脂(ポリスチレン)と異なる素材だということ。異素材では通常のプラモデル作りと違い、接着や塗装での相性を考慮しなければなりません。
塩化ビニールは、通常のプラモデル用接着剤が使えません。そこで強度を確保するため真鍮線(しんちゅうせん)を芯に挿入し、瞬間接着剤を使用してパーツを接着します。
また、塩化ビニールは通常のプラモデルで多く使われる水性アクリル塗料やエナメル塗料を使うと、塗装面がベタつくことがあるとのこと。そこで「ラッカー系メインで塗装しています」とツムキ式さん。
まずは「戦闘メカ ザブングル」のウォーカーマシンや、「機動警察パトレイバー」の作業用レイバーのように、作業機械然としたロボット。黄色の警戒塗装がいい味を出しています。
また、四角いケースを上部に載せた4脚のメカは、threeAの「WWR(ワールド・ウォー・ロボット)」シリーズの人工知能搭載型戦闘ロボットにインスパイアされたもの。四角い頭は情報収集マシンのスクウェアを思わせます。
車の前半部分を用いた乗用メカは、レトロフューチャー感あふれる作品。ウェザリングの効果もあり、どこかの星で作業用に使われていそうな雰囲気です。
同じく100円ショップで売られていた、ミニチュアサイズのダストボックスを活用した作品も。ゴミを回収して回るメカのようにも、ダストボックス部分に人工知能などの情報処理装置を組み込んだロボットのようにも見えます。
SFの古典「キャプテン・フューチャー」に登場する“生きている脳”、サイモン教授を思わせる姿の4脚メカは、透明なケースの中にカメが入っています。これは内部のカメの動きに合わせて動くようになっている、という設定です。
もちろん、王道の戦闘メカもあります。こうして見ていくと、まさか100円ショップのおもちゃが素材になっているとは思えませんね。
モデリングでは、異なるパーツや素材をいかに馴染ませるかというのが課題となりますが、ツムキ式さんが作ったこれらのメカたちは、パーツのフォルムをいかした造形や、逆に「このパーツがあんなところに」という驚きに満ちています。モデラーの本気を見た思いです。
セリアロボ。 pic.twitter.com/DxL0bxjrOR
— ツムキ式 (@SigemikanZ) April 7, 2022
<記事化協力>
ツムキ式さん(@SigemikanZ)
(咲村珠樹)