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目の表情も目線追従で変更可能 ギミック満載のクリーチャー着ぐるみ

 人それぞれ、色々な楽しみ方ができるコスプレには「着ぐるみ」というジャンルもあり、好きな作品に登場するキャラクターやオリジナルの着ぐるみなど、造形の巧みさに驚くこともしばしば。

 lutamesta(るためすた)さんが手がけるのは、オリジナルの世界観で作り上げた生き物たちの着ぐるみ。目を動かしたり一部が展開したりと、映画に出てくるようなギミック満載の作品です。

  •  趣味で細密画や創作イラストを描いていたlutamestaさんが、着ぐるみ制作に取り組むようになったのは2014年の末ごろから。きっかけは、初の個展に際して「自分の創作キャラクターを等身大の着ぐるみで作り、それを撮影した写真」を出し物の1つとして思いついたことだったといいます。

     元々「ギミックの類が大好き」ということもあり、最初の着ぐるみからLEDで目が光る仕掛けが入っていたんだそう。2作目以降も「アナログな仕掛けによるまばたきや、リンク機構で開閉する翼など、常に何かしらのギミックを仕込んできました」と語ります。

     たとえば第2作の「ブルーギル」では、着ている人の口パクに合わせてまぶたを開閉するギミックを内蔵。慣れれば口の開け方を調整し、伏し目がちになるといった表情をつけることができます。

    ブルーギル(lutamestaさん提供)

     また、ケモノ好きな人のためのコンベンション「JMof(Japan Meeting of Furries)」で、着ぐるみクリエーターコンテスト2020の総合優勝を勝ちとった「シフ」は、ワイヤーを手で引く仕掛けでまぶたが動くように設計されました。

    シフ(lutamestaさん提供)

     シフのまぶたは左右独立して制御されており、ウインクすることも可能です。

    ウインクするシフ(lutamestaさん提供)

     2020年にはワンボードマイコンの一種、Arduinoを使っての電子工作も始めたlutamestaさん。アナログな機構と電子的な工作、双方の特徴をいかしたギミックを作るようになったのだとか。

     電子工作を活用したギミックの代表例が、目の部分に小型ディスプレイを仕込んだ「電子目」。「ディスプレイを着ぐるみの目に使うアイデアはGentou(@gen_tou)さんの作品が先行例で、拝見してからというもの、いつかこんな作品を作りたいと思っていました」と、自身の作品にも搭載するべく試行錯誤を続けたそうです。

    電子目(lutamestaさん提供)

     最初はスイッチを使い、目の色や柄を切り替えることから始まった電子目。次の作品では着ている人の目の動きを検出するアイトラッカーを連動させ、わざわざ操作をしなくても目を動かせるようになりました。

    アイトラッカーで目線に追従させる(lutamestaさん提供)

     着ぐるみ用のアイトラッキングシステムは、調べた限り公開されているコードやハウツーが見つからなかったのだそう。「制作から実装するまで、トライアンドエラーを繰り返しながら作成しています」と、手探り状態だったことを告白してくれました。

    アイトラッカーを実装した状態(lutamestaさん提供)

     これまでに作った作品は、全身フル装備の着ぐるみが7体ほど、そして頭部や体の一部を作ったものが9点ほどあるとのこと。これらのモチーフ、大半はオリジナルキャラクターの「爆神」という神の一族で、それぞれの設定や世界観、使用している言語などの設定も存在しているのだとか。

     素材は頭部の場合、3Dプリンタやレジンキャストなど。胴体部分はケモノ系着ぐるみでよく使われるフェイクファーのほか、エナメルや皮革、ラテックスなど、様々なものを場所に応じて使っているのだそうです。

    造形中のデューケテルス頭部(lutamestaさん提供)

     電子目を搭載した「デューケテルス」の場合、フェイクファーとラテックスを主に使って作られました。頭部は2回作られており、2号機にはアイトラッキングによる電子目ギミックが実装されています。

    電子目を内側から見たところ(lutamestaさん提供)

     作品を見た方々の反応についてうかがうと「『着ぐるみ=表情が動かないもの』という先入観があるためか、電子目が動く瞬間を見た方はだいたい驚かれますね。またギミックだけでなく、造形の良さに言及してくださる方もいて、大変嬉しかったです」とのお答え。自在に表情を変える電子目だけでなく、細部の造形に目を配る方もいるようです。

    デューケテルスのデモ(lutamestaさん提供)

     特撮に出てくる異形感あふれる着ぐるみや、映画の撮影に使われる高度なアニマトロニクスを搭載したリアリティある歩きぐるみは憧れ、と語るlutamestaさん。しかしその欠点として、大きく重くなりがちで、着用者だけでギミックを制御できない面にも言及しています。

     「一般の着ぐるみ・コスプレイベントでも出すことのできる機動性を保ちつつ、複雑な造形やギミックを実現した着ぐるみの制作を極めていきたいと考えています」

    完成したデューケテルス(lutamestaさん提供)

     これからも進化を続け、世界観も広がっていきそうなlutamestaさんの着ぐるみ。Twitterで見るだけでなく、実際のイベントで動く様子を見たくなる作品です。

    <記事化協力>
    lutamesta(るためすた)さん(@lutamesta)

    (咲村珠樹)

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