正月が明けると、アパレルショップの店頭は一気に冬から春へ切り替わります。冬物と比べて薄手のアイテムですので、人によっては春物はスルーして秋物そのままを着る、という方もいるのではないかと思います。

 しかしながら、実は両者には明確な違いがあることをご存じでしょうか。これを知らずにそのままなんとなく秋物を着用していると、ちょっとチグハグしたコーディネートになってしまうかも……。今回は秋の服と春の服の違いを解説していきます。

 両者の違いは「色のトーン」「生地の素材」「通気性や保温性」の大きく3つです。

■ 色のトーンの違い

 コーディネートにおいて色味は非常に重要ですが、秋物と春物ではこれが明確に異なります。

 秋物はボルドーやマスタードといったアースカラーを中心としたやや暗めで重い色調ですが、春物はラベンダーやクリームといったシャーベットカラー、パステルカラーなどの明るく優しい色調になります。

 つまり、秋物と春物を混同させてしまうと色味の統一感がなくなり、どれだけ物が良くても台無しになってしまいます。特にありがちなのが、インナーは明るい色調の春物なのに、アウターは暗い色調の秋冬物のまま、というパターン。ファッションが好きな人であれば、絶対に避ける組み合わせです。

■ 生地の素材の違い

 日が経つにつれ、秋は徐々に寒くなっていき、春は暖かくなっていくという気候の違いがありますよね。

 こうした気温の変化に対応できるように、秋物はネルやコーデュロイといった比較的厚手の素材、春物はコットンやリネンといった薄い軽量の生地が使われています。そのため、価格帯で言えば基本的には春物よりも秋物の方がやや高めに設定されています。

 冬から春にかけて徐々に温暖になっていく中、いつまでも分厚いダウンジャケットやウールのロングコート等を着るのはNG。生地や素材感もコーディネートの印象に大きく影響するのです。

■ 通気性や保温性の違い

 薄くて軽量な春物は通気性に優れており、暖かい日差しやぽかぽか陽気の日でも、熱がこもりにくくなっています。一方の秋物は厚手であるため、高い保温性を持ち、衣服内に熱を閉じ込める作用があります。

 そのため、仮に秋物を春に着ると暑くなりすぎたり、反対に春物を秋に着ていると冷たい風を通しやすくしてしまったりと、気候の変化に適応しなくなってしまいます。同じ着るなら、やはり少しでも快適に着たいですよね。

 こうした点からもそれぞれの季節に対応した服を着たほうが良いと言えます。

■ 着まわしたい場合はオールシーズン対応のアイテムを選びましょう

 しかしながら、近年の物価高騰により、少しでも服にかける費用を抑えたい気持ちも分かります。加えて、企業側もやむを得ず値上げに踏み切る状況も増えていますから、季節ごとに服を買い替えていると、どんどん出費が重なってしまいます。

 そんな方には、春秋問わず着られるコットン、ナイロン、ポリエステルといったオールシーズン対応可能な素材のアイテムがおすすめです。あわせて季節感の出にくい白や黒といったモノトーンカラーを選べば、春秋共通のものを着用しても違和感は少ないでしょう。

 同じように見えても、これだけ異なる点の多い秋物と春物。それぞれの違いを把握したうえで、季節に応じたコーディネートを楽しんでくださいね。

【山口弘剛:筆者プロフィール】
鹿児島出身・鹿児島在住。私生活では妻と共に2人の子どもを子育て中。仕事は元アパレル店長、元ゲームショップ店長を経験。現在はライター、イラストレーターとして活動中。