おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

ネットでみかける「口座売買」の恐ろしさ 詐欺潜入から見えてきた不審な口座の扱われ方

 SNS上でたまにみかける「口座売買」に関する勧誘。軽いお小遣い稼ぎのつもりで売ってしまう人が後をたたないようですが、口座売買は犯罪です。

 売る方も買う方も罪に問われ、警察でも度々注意をよびかけているほど危険な行為です。

  • ■ 口座情報は雑に扱われている

     おたくま経済新聞編集部では、ネット詐欺の調査記事をよく配信しています。どの記事も相手(詐欺師)に接触をして、やりとりを行うわけですが、その中で振込先口座を伝えられたことは1度や2度ではありません。

    犯罪に使われている実際の口座

     相手は外国人の設定なのに、口座はゆうちょ銀行のとある支店で名義は個人、またあるときはなぜか企業名義の口座などと、とにかくいくつもの口座をみてきました。恐らく中には、口座売買を経て使われているものもあると考えています。

     詐欺師側はよほど簡単に使い捨てにしているのか、気軽に口座情報を教えてくれます。もし万一何かおきても真っ先に警察に目をつけられるのは、身元がハッキリしている口座名義人。すぐ自分たちに手がのびることはありません。

     つまり口座を売るということは、「犯罪者の片棒を担ぎ」「犯罪者の盾」として使われてしまうことと同義なのです。ただのお小遣い稼ぎのつもりだったのに……ではすまされません。

     ちなみに編集部で不審な口座を知ったときには、調査後にかならず関係各所に通報するようにしています。詐欺師が気軽に口座情報を伝えてくる以上、こうして通報から発覚するケースも多いのではないでしょうか。

    ■ 口座が開設できなくなる、逮捕されるリスク

     売った口座が犯罪に使われた場合は、該当口座以外も凍結される可能性や、将来にわたって口座が開設できなくなるという大きなリスクももっています。

     そして口座を売り買いした行為で問われる罪は、「犯罪収益移転防止法違反」や「詐欺罪」。売って得るわずか数万円の利益よりもはるかに不利益のほうが勝っています。

    警視庁の呼びかけ

     こうした売買のターゲットで狙われやすいのは、お金に困っている人はもちろんのこと、世間に未熟な若者たち。未成年も含まれます。

     実際にあるSNS上での口座売買の勧誘投稿には、「#○○オタ」「#ホスト」や「アイドル名のハッシュタグ」をつけたものが散見され、明らかに「若年層」を狙っているようすがうかがえます。

     ちょっとした気持ちから、我が子が犯罪に加担してしまわないよう、家庭内で普段から話し合っておくことがまずは重要。近ごろ学校では「インターネット教育」に力を入れていますが、学校だけに任せておける状況ではもうありません。

     そして既に手を出してしまっている場合には、被害を最小限に食い止めるためにも、警察に相談する、売ってしまった口座のある銀行に相談するなどの行動が必要です。隠して良いことはなにもありません。

    ■ ネットは犯罪者と隣り合わせの世界

     インターネットが発展してこの数十年、特にSNSが普及してからは恐ろしいほどに「犯罪者と隣り合わせにいる」という場面が増えています。一昔前であれば犯罪者に接触することなど普通に生活していれば滅多にありませんでした。しかし今は、検索するだけですぐにでも繋がれる状況。

     また、自発的に検索しなくても日頃から「お金が欲しい」「なにか良いバイトないかな」などつぶやいているだけで、向こうから声をかけてくることもあります。

     インターネットを利用する心構えとして、「詐欺師はじめとする犯罪者はすぐ近くにいる」と考えておいて今は間違いありません。ネット詐欺に数々潜入してみて身をもってその近さを実感しています。

    <参考・引用>
    三井住友銀行「銀行口座買い取りの勧誘にご注意ください
    警視庁特殊詐欺対策本部(@MPD_tokusagi
    大阪府警「口座の売買・譲渡し(譲受け)は犯罪です
    ※掲載画像の一部は「警視庁特殊詐欺対策本部公式X」のスクリーンショットです。

    (宮崎美和子)

    あわせて読みたい関連記事
  • 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」
    エンタメ, 芸能人

    嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現…

  • 北海道の人気アナ・斉藤こずゑさん、Xアカウントが乗っ取り被害 番組公式が注意呼びかけ
    インターネット, 社会・物議

    北海道の人気アナ・斉藤こずゑさん、Xアカウントが乗っ取り被害 番組公式が注意呼び…

  • 菊水産業「お菊社長」なりすましに接触 ウザ絡みして目的を探ってみた
    インターネット, おもしろ

    菊水産業「お菊社長」なりすましに接触 ウザ絡みして目的を探ってみた

  • 「あっ!来年ですね~」 ホテル予約の日付を1年間違えた投稿に共感と笑い
    インターネット, びっくり・驚き

    「あっ!来年ですね~」 ホテル予約の日付を1年間違えた投稿に共感と笑い

  • Xで「ブロック確認サイト」装うフィッシング投稿拡散 Twilog公式が注意喚起
    インターネット, 社会・物議

    Xで「ブロック確認サイト」装うフィッシング投稿拡散 Twilog公式が注意喚起

  • Skebがクリエイターへのチャージバック詐欺に警鐘 海外ユーザーからの前払い申し出に注意を
    インターネット, 社会・物議

    Skebがクリエイターへのチャージバック詐欺に警鐘 海外ユーザーからの前払い申し…

  • 警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠
    インターネット, サービス・テクノロジー

    警告ポップアップで強引に広告誘導 悪質業者が仕掛ける正規サービスを悪用した罠

  • 怪しい電話を意図せず撃退してしまう?黒電話ユーザーの詐欺対応が話題
    インターネット, おもしろ

    怪しい電話を意図せず撃退してしまう?黒電話ユーザーの詐欺対応が話題

  • 「ふくぎょうのおしごと!」既視感満載の怪しい広告が勧めてくる“副業”とは?
    インターネット, 社会・物議

    「ふくぎょうのおしごと!」既視感満載の怪しい広告が勧めてくる“副業”とは?

  • 偽ファッション広告
    インターネット, 社会・物議

    偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

  • 宮崎美和子編集長

    記事一覧

    鹿児島県産。放送関連、印刷、ソフト開発会社を渡り歩きさまざまな職種を経験。ライターデビューもこの頃。その後ゲーム会社に転職しMD(主にサブライセンス管理)、マーケを経験。運営・システム関連では管理職も務める。2008年にWEBライターとして独立。得意分野はオカルト、ネットの話題、過去職の経験から著作権と雑多。趣味は読書。40才すぎてバレエを習い始めました。

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • アカウント1の投稿
    インターネット, 社会・物議

    【後編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記…

  • アカウント1の投稿
    インターネット, 社会・物議

    【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記…

  • 偽ファッション広告
    インターネット, 社会・物議

    偽ファッション広告がGoogle広告に大量出現 サポート詐欺被害に注意

  • 起業家・岡崎雄一郎さん
    インターネット, 社会・物議

    短命に終わった「レンタル怖い人」 運営者・岡崎雄一郎さんに舞台裏を聞いた

  • お笑いコンビ・アインシュタインの稲田直樹さんの公式X
    インターネット, 社会・物議

    アインシュタイン稲田の“潔白”が証明された日 暴露文化とSNS拡散が残したもの

  • まとめサイト「JAPAN NEWS NAVI」関連アカウント、Xで一斉凍結
    インターネット, 社会・物議

    まとめサイト「JAPAN NEWS NAVI」関連アカウント、Xで一斉凍結

  • トピックス

    1. 「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      「ドラクエ7リメイク」にキーファ再会エピソード追加 衝撃展開にSNSでは「恨み節」も

      2025年11月12日午前7時に配信された「State of Play 日本」にて、「ドラゴンクエス…
    2. アカウント1の投稿

      【前編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ある日の調査作業の過程で、SNS「X」上において、急成長中の越境EC大手「Temu」のサポート担当を…
    3. Shuffle Town

      キーボードを叩くと家が出現!文書に「町」を作るフォント「Shuffle Town」が面白い

      手書き風の文字だったり、ホラー風の文字だったり、一風変わった文字を簡単に使用することができるデジタル…

    編集部おすすめ

    1. 作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業でたき火を燃やす新感覚クリッカー「たき火と猫」登場 癒やしと集中を両立するチル系ゲーム

      作業中に「猫」と「たき火」の癒やしを感じながら集中できる……そんな新感覚のゲーム「たき火と猫」のSteamストアページが公開されました。本作…
    2. アカウント1の投稿

      【後編】それでも私は、書くことを選んだ―― Temu不審アカウントに挑んだ無名記者の記録

      ※この記事は前編からの続きです。前編では、Temuを名乗る複数のアカウントを調査する中で見えてきた構図をお伝えしました。ここからは、Temu…
    3. ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

      ヤマト運輸、「当日配送サービス」開始 同一都道府県内運賃も新設

      ヤマト運輸株式会社は、11月10日から「宅急便当日配送サービス」の提供を開始し、併せて新たに「同一都道府県内運賃」を導入すると発表した。午前…
    4. 1回1万円の「大人のセボンスター」カプセルトイ登場 女児ゴコロときめく本格宝石入り

      1回1万円の「大人のセボンスター」カプセルトイ登場 女児ゴコロときめく本格宝石入り

      株式会社KARATZが、カバヤ食品の玩具菓子「セボンスター」45周年を記念したジュエリー企画「大人のセボンスター」第3弾を発表。11月5日に…
    5. 嵐・四宮社長が偽アカウント多発に注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定もなし」

      嵐・四宮社長が偽アカウント多発で注意喚起 「来年のツアー用新アカウントの予定も現時点なし」

      人気グループ「嵐」の公式SNSをめぐり、偽アカウントの出現が相次いでいることを受け、所属する株式会社嵐の四宮隆史社長が11月4日、自身のX(…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト