NTTドコモは3月24日、音声相互接続事業者のColtテクノロジーサービス(コルト)に対し、過払いとなっていた音声通話の接続料の精算を求めて訴訟を提起したと発表しました。
2014年の「カケホーダイ」プラン導入後、コルトに支払った接続料の適正性が疑問視され協議が続いていましたが、合意に至らず最終的に裁判に至りました。
■ 意図的に大量の着信を発生させる「トラヒック・ポンピング」の疑いが浮上
今回問題となっている「接続料」とは、発信元の通信事業者であるドコモが、通話先の通信事業者であるコルトに支払う金額です。
携帯電話の通話は、発信元通信事業者のネットワークを経由し、発信先通信事業者のネットワークに接続されることで成立します。この際、発信元の通信事業者は、相手先の通信事業者のネットワークを利用した対価として「接続料」を支払う仕組みとなっています。
「接続料」の金額は、通信事業者間で協議によって決定されることがほとんどですが、協議が合意に至らなかった場合などには総務省が裁定を行い決定されます。
ドコモの発表によると、2014年に「カケホーダイ」プランを導入して以来、ドコモのネットワークからコルトのネットワークへの通話量が急増。それに伴いコルトが設定する接続料の水準が適正かどうかを巡る協議が行われてきました。
しかし、2015年度以降、接続料の水準に関する合意には至らず、ドコモは最終合意年度の接続料水準を暫定的に適用しながら支払いを続けてきたとのこと。
事態が動き出したのは2021年。他の通信事業会社の関係者の逮捕により、コルトによる「トラヒック・ポンピング」の疑いが浮上。ドコモは接続料の算定根拠やトラヒックの詳細について説明を求めましたが、「着信インセンティブ契約」の存在は認めたものの、十分な回答は得られませんでした。
ここで問題となっている「着信インセンティブ契約」とは、通話の着信量に応じて、着信側の通信事業者が他の事業者や代理店に報酬を支払う契約です。この契約は、着信側の通信事業者が自社のネットワークへの着信を増やすことを促進し、接続料収入を増加させることを目的としています。
そして、この仕組みを悪用して、意図的に大量の着信を発生させる行為が「トラヒック・ポンピング」と呼ばれます。
■ 総務大臣裁定で接続料の適正水準が確定、それでも進まない過払い分の精算
その後、ドコモは2023年1月に総務大臣裁定を申請。2024年7月には総務大臣によって接続料の適正水準が確定し、コルトの接続料が適正水準を大幅に上回っていることが確認されました。この結果、ドコモは約10年間にわたり接続料を過払いしていたことが明らかとなりました。
ドコモはコルトに対して過払い分の精算を求めて交渉を行いましたが、コルトは返還に応じる意思を示さず、進展が見られなかったため、今回の訴訟に至ったとしています。
なお、2023年3月にはコルト側から「着信インセンティブ契約」の解約を決定したとの通知がドコモに届いたとのこと。この契約解除後、ドコモのネットワークからコルトのネットワークへの通話量が激減したと報告されています。
<参考・引用>
NTTドコモ「Coltテクノロジーサービス株式会社に対する過払い接続料の返還請求訴訟の提起について」(2025年3月24日発表)