
森永乳業は、「食のおいしさ・楽しさ」と「健康・栄養」を両立した企業を目指し、その実現に向けた研究開発に積極的に取り組んでいます。当社は2022年秋より「マウントレーニア」シリーズの一部商品に「水蒸気アロマ抽出技術」の実用化を開始いたしました。
このたび、本技術に関する基礎研究成果ならびに実製造への応用に関する研究成果が令和7年度日本食品科学工学会(8月27~29日)にて「技術賞」を受賞いたしました。授賞式は8月27日に神奈川県藤沢市の日本大学湘南キャンパスにて行われました。
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1.学会概要
公益社団法人日本食品科学工学会は、食品科学工学に関する研究の発表、連絡、連携及び促進をはかり、研究成果の普及、情報の提供を行うことで科学、技術、文化の発展と国民の食生活の向上に寄与することを目的として、1953年に発足した学術団体です。およそ2,000人の会員と170の賛助会員で構成されています。
(公益社団法人 日本食品科学工学会ホームページ : https://jsfst.smoosy.atlas.jp/ja)
2.日本食品科学工学会「技術賞」
1)賞の概要
本賞は,食品科学工学の分野において,実用的に高く評価される業績をあげた者,又は共同研究開発者としての複数の者に授与する賞です。
2)受賞内容
▼受賞研究題目
RTDコーヒー飲料製造への実用化に向けた水蒸気アロマ抽出技術の開発
▼受賞内容
水蒸気アロマ抽出技術をミルクコーヒーの実製造に応用することを目的として研究を行いました。本研究の結果、水蒸気蒸留時の条件の一つである水蒸気の冷却温度(凝縮温度)を変えると、揮発性成分の構成が異なる凝縮液(水蒸気アロマ)が得られることが示されました。また、これらの水蒸気アロマを用いてミルクコーヒーを作製することで、コーヒーの風味をより多様に、強く引き出せることが、ミルクコーヒーのフレーバーホイール※1を用いた消費者による官能評価※2によって示されました。このことは、水蒸気アロマを使用することで、従来よりも製品設計の幅が広がると共に、コーヒー原料そのものが持つ本来の香りを活かしたミルクコーヒー飲料を製造できることを意味します。また、コーヒーの風味をより強く引き出すことで、製造時に発生するコーヒー抽出残渣の量を低減することができ、環境負荷低減への貢献も期待されます。なお、本研究成果は、科学雑誌「Journal of Food Science」に2024年4月に掲載されました※3。
3.まとめ
本研究成果に基づいて、水蒸気アロマ抽出技術を「マウントレーニア」シリーズの製造に応用するため、自社工場に実製造設備を導入しました。2022年秋より実用化を開始し、現在までに4品で本技術が活用されています(マウントレーニアエスプレッソ、ノンシュガー、ノンスイート、ディープエスプレッソ)。また、本技術に関する複数の関連特許を出願しております。今後、「マウントレーニア」シリーズにおいて本技術を活用した商品ラインアップを拡充することで、風味において高く差別化された当社ならではの商品をご提供できるように、製品開発、技術開発を進めて参ります。
<参考>
※1 当社では、ミルクコーヒーの風味を表現する用語を消費者から収集、選別し、得られた用語を用いて、消費者のためのミルクコーヒーのフレーバーホイールを2023年に開発し、これを「フレーバープラットフォーム」として商標化しました。詳細はニュースリリースをご参照ください。
https://www.morinagamilk.co.jp/release/newsentry-4246.html
※2 論文・タイトル・著者・雑誌名・DOI
「A milk coffee flavor lexicon developed based on the perceptions of Japanese
consumers and its application to check-all-that-apply questions」
Hatakeyama Shinichiro1, Kawaguchi Toshiyoshi1, Yamaguchi Takuya1, Yoshihara Daisho1, Takahashi Kana2, Akiyama Masayuki1, Koizumi Reiko2, Miyaji Kazuhiro1, Takeda Yasuhiro1, Mito Kokawa3, Kitamura Yutaka3
1: Food Research & Development Institute, R&D Division, Morinaga Milk Industry Co., Ltd.
2: Food Solution Research Institute, R&D Division, Morinaga Milk Industry Co., Ltd.
3: Institute of Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba
雑誌名:Food Science and Technology Research
doi.org/10.3136/fstr.FSTR-D-22-00176
※3 論文・タイトル・著者・雑誌名・DOI
「Steam distillation process for flavor enhancement of milk coffee: Effects of condensation temperature on volatile compounds and flavor characteristics」
Hatakeyama Shinichiro1, Akiyama Masayuki1, Yamaguchi Takuya1, Yoshihara Daisho1, Fujita Atsushige1, Takahashi Kana2, Maruya Miki3, Kokawa Mito4, Kitamura Yutaka4
1: Food Research & Development Institute, R&D Division, Morinaga Milk Industry Co., Ltd.
2: Food Solution Research Institute, R&D Division, Morinaga Milk Industry Co., Ltd.
3: Quality Control Department, Manufacturing Division, Morinaga Milk Industry Co., Ltd.
4: Institute of Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba
雑誌名:Journal of Food Science
DOI: 10.1111/1750-3841.17109
d21580-1312-7dabfc4cd4aebfc175776278b5e06a0a.pdf