集団生活を営む自衛隊には、ほかとは違った独特の文化が存在します。

 人数の多い陸上自衛隊のうち、駐屯地に居住する独身の曹士(2等陸士から陸曹長まで)、いわゆる「営内者」と呼ばれる自衛官の間でポピュラーな「ジャー戦」なるオフタイムのファッションについて、自衛隊鹿児島地方協力本部公式Twitterが紹介しています。

 この「ジャー戦」、簡単にいえば「ジャージ+戦闘服」ということで、上半身は戦闘服上衣、ボトムスはジャージという格好のこと。鹿児島地方協力本部公式Twitterが「リモート会議慣れした自衛官……ではありません」という言葉とともに、ジャー戦を画像で紹介しています。

 一般的に「ジャー戦」というのは、ボトムスがジャージの長ズボン、そして運動靴というスタイル。鹿児島県内の国分駐屯地の場合、暑い季節にはハーフパンツとサンダルという「ジャー戦 春夏スタイル」も認められているそうです。この辺りは駐屯地司令の裁量によるところが大きいんでしょうね。

 さて、なぜこんな珍妙なファッションが陸上自衛官の営内者(駐屯地内に居住する独身自衛官)で見られるかというと、営内者独特の事情も影響しているようです。

 幹部以外の独身自衛官は即応体制を維持するため、特別な事情により許可された者を除いては、駐屯地内にある宿舎(営舎)に居住しています。いわば職住接近の独身寮ですね。

 居室は個室ではなく、基本的に複数人でシェアする形。個人の持ち物を収納するロッカーもありますが、そのスペースは限られています。となると、あまり多くの物は持てません。服などは特にそうです。

 そういうこともあり、営内者の服装はトレーニングウェアであるジャージが一番楽、ということに。しかしある程度規律を……という事情から、上衣だけ戦闘服(迷彩服)で下はベルトを使わずに済むジャージ、という独特のスタイル「ジャー戦」が誕生したようです。

 これはあくまでも勤務(課業)時間外のみに認められた格好。そして陸上自衛隊独特のファッション文化だったりするようで、陸上自衛官が航空自衛隊や海上自衛隊の基地に宿泊する際は、服装の注意として「ジャー戦での外出禁止」と上官から言われるケースもあるようです。

 見た目は違和感たっぷりな「ジャー戦」ですが、ジャージのズボンが楽というのはよく分かる話で、小中学生が学校のジャージを普段着にして外出する光景も見かけますよね。そして、いざという時にはズボンだけ着替えればいいという点も、即応体制維持という面で合理的なファッションなのかもしれません。

<出典・引用>
自衛隊・鹿児島地方協力本部公式Twitter(@kagoshima_pco)

(咲村珠樹)