様々なファンアート作品が、SNS上で都度話題になるガンダムのプラモデルこと「ガンプラ」。アレンジジャンルは多岐にわたりますが、先日Twitterで話題になった作品は“わがままボディ”が特徴です。
「豚トロビウム、推せる」のつぶやきとともに、Twitterユーザーのナルパジンさんが紹介したのは、東京都・秋葉原にある家電量販店「ヨドバシAkiba」のプラモデルコーナーで撮影したガンプラ。
どうやらこれは、1991年から翌92年にかけてOVA(オリジナルビデオアニメ)として製作された「0083」こと「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」にて、主人公のコウ・ウラキが劇中後半に搭乗した「GP03」ことガンダム試作3号機(デンドロビウム)。
「わがままな美女」の花言葉の通り、メガ・ビーム砲を始めとしたMA(モビルアーマー)部分のオーキスの武器弾薬庫さながらの“わがままボディ”が目を引きますね。
しかしながらこのオーキスのボディ、筆者が存じている「純白」ではなく、暗めの赤に、クリームがかった白に塗装されています。さらに機体中央部にあるMS(モビルスーツ)部分の「ステイメン」には……ん?豚さん!?それによくよく見ると、名札らしきものに「豚トロビウム」という表記。
さらにナルパジンさんの写真には、「初代」こと「機動戦士ガンダム」にて登場したジオン軍の水陸両用MS「ゴッグ」が、「コック」になって「トントロ」に隣接して展示。ここに調理器具(ソーラ・システム)があれば、調理が開始できそうですね。
この投稿には、海外からも多くの反応も合わさって、何と5万を超えるいいねが寄せられる大反響となりました。
■ 豚トロビウムの作者はタレントの水野明佳さん
このトントロは、「水野明佳さん」という方が製作した作品です。今回のナルパジンさんの投稿にもいち早く反応されていました。
私事ですが、筆者は少々ガンプラを嗜んでいる人間。この文字通りの“トンデモ”ガンプラを作った経緯を知るため、水野さんに取材の申し込みをし詳しく話をうかがうことに。
水野さんは、クリエイターチーム「クリエイティブORIHUS(オリフス)」に所属し、広告塔として様々な媒体に出演し、その活動内容をTwitterなどで発信しているタレントさん。また、ホビージャパン刊行の模型雑誌「ガンダムフォワード」にて、顔出しの連載コーナーもされています。
そして今回大きな反響となった「豚トロビウム」は、そんなガンダムフォワード上での企画「SideSweets(サイドスウィーツ)」にて、「モデルスウィーツ」と銘打たれた作品群のひとつ。
実は水野さんは生粋のモデラーではなく、ガンダム好きのマネージャーが、ある日ガンプラを作り始めたのを見て、それに興味を持ったのがそもそものきっかけ。まずは、マネージャーに教えてもらいながら、素組みでのモデリングを続け、研鑽を積みました。
■ 「モビルスーツ」を捩った「モビルスウィーツ」シリーズ
そんなある時、先述のマネージャーに、「折角ならプラモデルでオリジナル企画をやろう!」と話を持ちかけられ、「それなら自分の好物の『スウィーツ』を題材にしたい!」という思いもあり、「モビルスーツ」を捩った先述の「モビルスウィーツ」が爆誕。
「『子供や女の人にも分かりやすいようなパッと目に付く』ということをコンセプトにしています」という作品は、いずれも目を引くものばかり。それらを、今回Twitter上で話題となった「ヨドバシAkiba」を含めた首都圏7店舗(新宿西口本店・さいたま新都心駅前店・横浜店・吉祥寺店・上野店・町田店)と関西2店舗(梅田店・京都店)のヨドバシカメラに、東京都台東区にある玩具ショップ「ヤマシロヤ」にて展示されています。
実際に展示されている様子を、水野さんは自身のTwitterにて紹介しています。そこには「ストロベリーケーキ」「ブッシュ・ド・ノエル」「チョコボール」「みかん」といった様々なスイーツや果物を、ガンプラによって“擬態化”された「モビルスウィーツ」たちがズラリ。
また、ブッシュ・ド・ノエルに関しては、先述の「0083」において、主人公コウのライバル「アナベル・ガトー」が劇中後半に搭乗したMA(ノイエ・ジール)によって製作。トントロとの“共演”を希望するファンも多そうです。ちなみに水野さんによると、モビルスウィーツの企画名は先述の「スターダストメモリー」を捩った「Sweet Memory」。よりどりみどりの作品たちに、思わず心を震わせる方も多そうです。
いずれの作品もガーリーさが感じられる「モビルスウィーツ」ですが、今回反響となった「豚トロビウム」は、どちらかというと「豚肉」を連想する作品。水野さんも厳密にはスウィーツではないと認めつつ、抑えきれなかった創作意欲を存分に吐き出した傑作です。
ちょうど当時は、様々な改造や塗装表現を試していた時期だったそうで、それもあってか、オーキスはキレイなサシも入った肉質感あふれるボディに筆塗り。さらにおしべであるステイメンには、Twitterで話題となったうつむき姿のメス豚に、顔を見上げた咆哮をあげるかのようなオス豚、さらに牛さんも用意。
それぞれに「副題」もあるそうで、メス豚はデンドロビウムの花言葉「わがままな美女」を捩った『わがままボディの美女』、オス豚は某ジブリ作品を連想させそうな『飛べねえ豚はただの豚だ』、そして牛さんは『もーええわ~!』と、いずれもニヤリとさせる言い回しに。
余談ですが、水野さん的には牛さんの場合は「豚トロビウム」ではなく、「デンドロビーフ」になるんだそうです。って名前変わるんかい!
そんな水野さんが生み出した「モビルスウィーツ」は、先述のように多数の店舗での展示が実現したのですが、一方で、自身のモデリングスキルを上げる必要性に追われ、豚トロビウムも寝る間を惜しんで製作したそうです。
とはいえ、「実際作ると夢中になって時間を忘れてしまうことが魅力なんです」と、自身にとってのガンプラの魅力を語ってくれる水野さん。自由な発想が歓迎されるガンプラアートの世界も相まって生み出されたそれは、実際に店内で見かけると立ち止まり、思わず魅入ってしまう方も多いのではないでしょうか。
余談ですが、筆者は関西在住の人間。頃合いを見て、梅田と京都に足を運び、水野さんの「モビルスウィーツ」を堪能したいと思います。
https://twitter.com/narupajin/status/1367459701588328450
製作者はこの方みたいです。良い肉をありがとう https://t.co/0bjxgFZluP
— ナルパジン (@narupajin) March 5, 2021
豚トロビウムの作品見て頂きお写真までありがとうございます😊
これからもSweet Memoryのモビルスウィーツ達を宜しくお願い致します。笑う事は健康にもいいのでぜひみなさまにダジャレと作品で沢山笑っていただきたいです🍰 https://t.co/ui1M4uOUfF
— 水野 明佳 (@sayaminichip) March 5, 2021
<取材協力>
水野明佳さん(@sayaminichip)
クリエイティブORIHUS(https://orihus.wixsite.com/thereikan)
ナルパジンさん(@narupajin)
(向山純平)