「うちの本棚」、ひおあきらオリジナル作品の代表作『サイレン戦士』をご紹介します。本作では得意のメカ描写を前面に押し出し、ひおあきらの集大成ともいえる仕上がりになっています。

ひおあきらといえば『宇宙戦艦ヤマト』をはじめテレビアニメ等のコミカライズで知られているが、本作はその彼のオリジナル作品。


雌雄同体で幼少期には海水中で生活する「サイレン」という惑星の住民が、数年後に迫った遊星との衝突による母星の消滅を前に、太陽系第三惑星、地球に移住するため侵略を開始するというのが、基本的なストーリー。海がなければ生きられないため広い宇宙を探索した結果、地球を発見。それでも海水の温度が低いために海水温を上昇させる改造を行わなければならないため、人類との共存は不可能で、戦闘による侵略を決行することになる。
「サイレン」側の主力兵器は海中でその威力を発揮する「バトルムーバー」と呼ばれるパワードスーツ。対する地球側は「戦闘メカ」と呼ばれるだけで固有名詞はないのだが、同じように水中戦闘に特化したパワードスーツを完成させて応戦することになる。

そして地球を守る戦闘メカのパイロット、ヒュウと「サイレン」の戦士ミランジュは出会い、ミランジュは女性へと変化していく……。

竹宮恵子の『地球<テラ>へ…』でもメカニックの作画を担当するなど機械モノを得意とする漫画家ではあるのだが、正直言って本作で登場するバトルムーバーにしても地球側の戦闘メカにしてもどこか垢抜けないイメージがある。ある意味主役といってもいい存在でもあるのでもう少しスッキリしたデザインだったらという気がするのだが、まあ、このあたりは作者とこちらの感覚の違いなのだろう。

本作品は同作者の『サイレン戦記』の続編という印象を持っていたのだが、読んでみると水の惑星サイレンや水棲人類、雌雄同体といったアイデアは受け継いでいるもの、世界観の違うアナザーストーリーというべきもの。ふたつの作品は独立して読むことができる。

第2巻の巻末に収録された『ミューザー』は打って変わってミュージシャンを主人公にした物語。というとこの作者には珍しいタイプの作品のように思うかもしれないが、音楽をテーマにしながらコンピューターもからんだりするSF風味な味付けになっている。
 

書 名/サイレン戦士
著者名/ひおあきら
収録作品/サイレン戦士、ミューザー
発行所/朝日ソノラマ
初版発行日/第1巻・昭和57年3月31日、第2巻・昭和57年5月31日
シリーズ名/サンコミックス


【文:猫目ユウ】
フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。