子どもたちの「玩具」として人気な「プラモデル」ですが、同時に大人たちにとっては「趣味」や「蒐集品(コレクション)」としての側面もあり、幅広い年代で親しまれています。

 そんな背景を活かし、「スーツを着て、高級百貨店でプラモデルを受注制作」というビジネススタイルの確立に挑戦している人物がいます。

 「『スーツ着て、高級百貨店でプラモデルを受注制作』というビジネススタイルもだいぶ板に付いてきました。大阪催事、福袋と身に余るご評価を賜り今月から神戸でも出店させて頂けることに。本日は半日大阪、その後神戸にて多くの方からご用命・ご商談の機を賜り厚く御礼申し上げます。次回は神戸実演」

 つぶやきとともに、催事風景をTwitterに投稿したのはダッズ松本さん。

 ダッズさんは模型誌のライターを20年ほどつとめた後、作例製作のアシスタントや家電量販店での模型製作の実演、さらにプラモデルの商品企画やパッケージデザインに、「広告デザイン」「マーケティング」の大学講師と幅広い分野で活躍してきました。それら経験を積み重ねた上で、現在取り組んでいるのが、「ライフスタイルの中のプラモデル」。

 「『客層』と『目的』において、プラモデルは新たなニーズを生み出しています。前者(客層)は、これまでの“マニア”のみならず、広く一般に流通されるようになっています。後者(目的)については、元来の『作る』に加え、『集める』という『楽しみ』が加わりました」

 コロナ禍になり、よりそれが顕著になったというダッズさん。確かにもはや一種の「表現ツール」と化したプラモデルは、SNS上でも話題になることがしばしば。中には、「工芸品」に昇華されるものも存在しています。

 「スーツを着用して、百貨店でプラモデルを受注製作」というスタイルは、模型業界で20年来の付き合いという大木浩行氏(ホビーショップ・ガネット代表)をビジネスパートナーとして、日程の管理、顧客との打ち合わせ、営業販売の報酬交渉などを一任しつつ、ダッズさん自身はプレーヤーに徹しています。「マネージャー制」と呼ぶシステムは、来店客との対応に専念でき、安心と信頼の構築に繋がっていると言います。

 今回の投稿は、兵庫県神戸市にある大丸神戸店にて、1月18日より行われている展示販売の様子をおさめたものです。当日は設営と挨拶のみにとどまりましたが、2月4日・5日も同店に来店し、6階紳士洋品売場にて実演販売とオーダー会を開催とのことです。

 2022年8月に、大阪府の大丸梅田店で開催されたイベント「大人のホビー」で初挑戦したダッズさん。1週間の期間中には、多くの来場者とともに高価格帯の商品を完売させるなど上々の出来でした。以後大丸とは継続的な関係を持ち、2023年新年の福袋の初売りや、兵庫県神戸市にあるインテリア館「ミュゼエール六甲」でも展示販売を実施し、好評を博しました。

 先述の通り、一連の催しは「玩具売場」ではなく「紳士服雑貨売場」で開催しています。これはライフスタイルの中のプラモデルの位置づけに、「大人の嗜好品」「家具や服飾雑貨と組み合わせたインテリア」という新たな価値創造を目指しているからだそうです。

 つまりダッズさんは、オーダースーツの代わりにプラモデルを紹介する「ビスポークテーラー」でもあるというわけです。

百貨店内では製作の実演も行っています。

 「高級ブランド店の一角でプラモデルを販売するということは、思っている以上に大変です。そもそもディレクターの大木さんの尽力がなければ出店すら叶わなかったでしょう。今後はYouTubeなどのSNSでも積極的に情報発信して、ブランディングの構築を行っていきたいです」

 さらに2025年に開催予定の大阪万博に向け、外国人観光客(インバウンド)へのセールス、ITを活用して中国・台湾・北米といった市場への販路拡大を考えているというダッズさん。

 プラモデルに限らず、日本には世界に誇る様々なアニメ・漫画などの「コンテンツ」が数多く存在し、現在進行形で新たに創出されています。それを恒久の財産としていくため、既成概念にとらわれない「知恵」を必要とする時代に突入しているのかもしれません。

<記事化協力>
ダッズ松本さん(@dads_matsu
株式会社大丸松坂屋百貨店

(向山純平)