今やその話題を聞かない日はない、というほど注目を集めているAI文章生成ツール「ChatGPT」。このChatGPTに関する、なんともユニークなツールを開発しているという情報をキャッチしました。

 入力した文章に対し、鹿児島弁で応答するというもので、その名も「Jaddo(じゃっど)GPT」。アイデアの面白さはもちろんですが、「そうだね(相づち)」を意味する鹿児島弁の「じゃっど」と「チャット」をかけたネーミングセンスも秀逸すぎる……!

 開発を行っているのは、株式会社デジタルレシピのCTOを務める「古川渉一」さん。AIライティングアシスタントツール「Catchy」の運営を行っている人物として知られています。

 ツイッターに投稿された動画では、JaddoGPTのβ版の動作を見ることができ、入力した文字を鹿児島弁に変換している様子が確認できます。「今日はいい天気ですね」が「きゅはよか天気じゃっどね」に、「こんなことがありました」が「こげなこっあいもした」になるなど、その精度は上々である模様。

JaddoGPT

JaddoGPT

■ きっかけはご当地タレントの何気ないひとこと

 実は自身も鹿児島出身者であるという古川さん。ChatGPTの前身であるGPT-3の時から、大阪弁では対話できるのに、鹿児島弁ではできないことに、悔しさを感じていたのだそう。

 そんな中、4月11日に鹿児島のご当地タレントである「野口たくお」さんが発した、「鹿児島弁AI『ジャッドGPT』があれば『#こげなこっがあいもした』(※鹿児島のラジオ番組)の台本書くのがめっちゃ楽になるのに」というひとことにビビッと感じるものがあり、ツールの開発を決意しました。

 ChatGPTの特性として、少ない追加学習データで特化型のAIを作ることが可能で、大きく「単語」「ルール」「文章」の3つを学習させた、と古川さん。

 最初は単語を学習させるだけでもある程度の精度にはなっていましたが、どうしても単なる羅列になってしまい、文章としてはイマイチ。インターネット上に鹿児島弁のデータが少ないことが原因と考え、語形変化などのルールを列挙するなど、別途鹿児島弁のデータを与えたところ、AIが劇的に改善したため、ひとまず動画での公開に踏みきったようです。

■ 将来的には音声読み上げ機能と追加も検討中

 こんな面白そうなツール、早く触ってみたいところですが、GPT4を使用すると文章の生成ごとに金銭が発生してしまう為、現状はまだ公開への道筋は立っていないとのこと。これからGPT-3.5-turboなど安価なモデルでも動くように、仕様変更を行っていくそうです。

 さらに、今後の展望としては、音声読み上げ機能も追加していきたいとのこと。たしかに文字で見ただけでは、独特のイントネーションが伝わりにくい部分もありますから、これはぜひ実装されて欲しいですね。

 また、これは方言を使いこなせる若者が減りつつある中で、後世に言語を残すツールとしても有効活用出来そう。

 特に鹿児島弁は地域により方言が細かく異なり、中でも独特なのが「頴娃(えい)町」の方言。あまりに難解なことから英語にかけて「頴娃語(えいご)」と呼ばれることもあり、若い世代での話者が減りつつあるのが現状。ゆくゆくは、こうした細かい方言にも対応してくれたら……と思わず期待。鹿児島在住の筆者も、JaddoGPTの完成を楽しみに待ちたいと思います。

<記事化協力>
古川渉一@先読み! ChatGPT 著者さん(@sho_furu

(山口弘剛)