人生で大事なことは漫画や映画から学んだ、大きな影響を受けた……なんて方が多いのではないでしょうか。そして子どもの頃に見た時の印象と、大人になってから見た時の印象が異なる作品も誰しも一つや二つはあるものです。

 今回はそんな「子どもの頃と大人になってからで見方が変わった、映画・漫画・アニメ等の作品」について、広く募集してみました。

 募集はおたくま経済新聞のXアカウントにて3月初旬に行い、返信・引用合わせて300件近いコメントが寄せられました。リポストやいいね等で拡散していただいた方も含めて、この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございます。

「子どもの頃と大人になってからで見方が変わった、映画・漫画・アニメ等の作品」募集時の投稿

 幅広いジャンルの作品が寄せられましたが、ここでは「少年漫画・アニメ」「少女漫画・アニメ」「ロボットアニメ」「スタジオジブリ作品」「その他アニメ」「実写映画・ドラマ」の6つに分類。思わず「たしかに~」と言ってしまう作品がきっとあるはずです。

■ 少年漫画・アニメ

 まずは少年漫画・アニメ。男児向けの痛快なストーリーが展開する作品が主ですが、だからこそ読む年代によって受け止め方が大きく異なるようです。

・るろうに剣心

子どものころは剣心が格好よくて無敵なヒーローに見えてたけど、大人になって見たら弱さを抱えて不器用なまま必死に生きてる少し情けない三十路で、子どもっぽいなぁと思っていた薫殿がすごく大人で誠実な女性で剣心の心を支えていたことに気がついて、見方がまるで変わり愕然とした。

・ドラゴンボール

チチ。子どもだった当時は地球の命運がかかってるのに悟飯に勉強勉強って煩いなって思ってた。今見ると5歳かそこらの我が子を戦わせないよう怒鳴るチチが一番まともに見える。
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子どもの頃は悟空好き、ベジータムカつく。大人になると悟空父親としても成人としても失格(すぐ死ぬ、仕事しない)ベジータの気持ちが分かる(こだわりを持ってしまう、守るべきものができてポリシーがかわっていく)

・こちら葛飾区亀有公園前派出所

子ども→両さん何でこんなにモテるんだ……?
大人→両さんモテるのわかるわー。

・めぞん一刻

以前は五代くんへなちょこ過ぎ~って思ってたけど、年取ると凄く良い人だと思うようになる。逆に響子さんが魅力的に見えなくなる。

・うる星やつら

昔子どもの頃見てた時にはまだ恋愛とかよくわかってなくて、ラムちゃんを嫌なヒステリックな女の子だと思ってたけど、令和版見たら健気でかわいい普通の女の子だった。あたるが悪い。

・ドラえもん

子どもの頃はそりゃあ憧れたしタケコプターやどこでもドアがすごく欲しかった。親になった今は保護者の預かり知らない所で子どもたちを命の危険に合わせるのはマジ勘弁……て思う。
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子ども→主人公はドラえもん
大人→主人公は野比のび太

・メーテル(銀河鉄道999)

子供の頃→クールで強い女性、ミステリアスな部分を残したまま別れる。
大人→芯の部分で弱くて鉄郎に依存してる部分があり、鉄郎のためにも自分のためにも別れを選んでいる。

■ 少女漫画・アニメ

 戦闘シーンが多い少年漫画と比較して、日常や恋愛にスポットが当てられることの多い少女漫画。あんなに憧れた男性キャラが意外とだらしないと気付いたり、お母さんキャラに感情移入するようになった……なんて声もちらほら。

・ちびまる子ちゃん

子どもの頃→お母さん怒りすぎだよ!友蔵優しくていいおじいちゃんだなぁ。
子持ちになった今→お母さん、そりゃあ怒るわしゃーない。友蔵は孫に甘すぎだよ!

・生徒諸君!

子供の頃→ナッキー達いいな!楽しそうな仲間と学校生活!
大人→いや、ちょっと待て?こいつら色々やらかしすぎやろ?あと、マールと飛島さん関連、界隈を美化しすぎでは……。

・有閑倶楽部

こども→高校生ってこんなコトできるんだ!
大人→こんなコト高校生ができるかーーーー!!

・キャンディキャンディ

子ども→特に感想なし。流行ってたから読んだ。
大人→キャンディの生き様、全人類に知って欲しい!

・あさきゆめみし

こども→「雅。光源氏いい加減」
大人→「セーフティネットのない世界怖すぎる。先帝すら娘の保護先の心配してる。六条院が老後救済システムに見えてきた」

・美少女戦士セーラームーン

子ども→タキシード仮面かっこいい!
大人→いろいろ問題がありすぎる……。

・神谷曜子(ときめきトゥナイト)

子どもの私……蘭世に意地悪!嫌い!
大人の私……真壁くんが自分に気が無いと分かってても普通に接して健気!かっこいい!

■ ロボットアニメ

 対立する敵側にも信念や正義、戦う理由がありがちなのがロボットアニメ。子どもの頃は主人公サイドに肩入れしていたものが、大人になってからは敵サイドの気持ちも分かるようになった……という声も。

・新世紀エヴァンゲリオン

子ども→シンジがウジウジしすぎてて見ててイライラする。主人公のくせに!逃げるな!
大人→作品中の大人全員イカれてるしシンジ可哀想すぎる……逃げていい!逃げろ!

・機動戦士ガンダム

子ども→ガンダム頑張れ!
大人→ジークジオン!ジークジオン!

・ブライト・ノア(機動戦士ガンダム)

「アムロに冷たく当たる人」だと思っていたが、「ブライトさんも大変だわ……」と同情するようになった。

・加持リョウジ(新世紀エヴァンゲリオン)

子どもの頃、かっこいい!
大人になって、この年でこんな達観したやつおらんやろ。

・機動警察パトレイバー(漫画版)

子ども→内海課長、いい大人なのに他人を煙にまいて自由に生きてる面白い人だなぁ。
大人→内海課長、いい大人なのに他人に迷惑かけまくって悪事を働くロクでもねぇ人だなぁ。

■ スタジオジブリ作品

 スタジオジブリがおくる、ちょっと不思議な世界観が魅力の作品の数々。子どものときには気付けなかった表情や仕草の繊細な描写に、大人になってから気付くことで、作品が違った視点で見えてくるようです。

・となりのトトロ

10代の頃→なんか地味な話だな~。ラピュタの方が良かったな
子どもが生まれてから→さつきとメイが、健気すぎて泣ける……!!!

・もののけ姫

子ども→エボシさまは悪い人なんでしょ?
大人→エボシさま美人だし統率力とかカリスマ性とかすごすぎ……。

・火垂るの墓

子供→おばさん嫌な人!!
大人→いやそらおばさんも文句言いたくなるわ……。

・平成たぬき合戦ぽんぽこ

子供「たぬき面白い!」
大人「重い……重いよ……」

・魔女の宅急便

先輩魔女の「静かに飛びたいの」
昔「スカしてる」
今「めっちゃわかる。助手席でベラベラ喋ってる夫にちょっと黙っててって思っちゃう」

・風の谷のナウシカ

子ども→ナウシカがんばれ!
大人→クシャナ殿下の方が正論じゃね……?

・天空の城ラピュタ

子どもの頃→ムスカ、なんてずる賢くて酷い奴だ!
大人→最高に無様で愛される悪役なのも納得。声優うまい。

■ その他漫画・アニメ

 ここでは上記に分類できない漫画・アニメの名作に寄せられた声をご紹介します。いずれも長い間愛されてきた国民的アニメ作品ですが、特に大人のキャラへの印象がガラッと変わるようです。

・あたしンち

実家で娘してた頃はみかん目線で笑ってた気がするけど、自分で家事をするようになったら、みかんの主張がワガママに見えてしまって……。でも、今でも好きで読み返している。

・サザエさん

「カツオ、ダメなやつだなあ」→「コミュ力オバケの常識人だった……」

・サマーウォーズ

夏の田舎の豪族の家に親族大集合で働く嫁……胃が痛え……。

・アルプスの少女ハイジ

子ども「ロッテンマイヤーさんうっざーい、早よアルムに返したりや」
大人「ロッテンマイヤーさん、貴女はあの時代で立派に職を持ち、難しいクララをよく育てた淑女だわ……」。

・クレヨンしんちゃん

子ども→しんちゃんのママめっちゃ怒るやん。
大人→みさえさんマジ……お疲れ様です……。

・おジャ魔女どれみ

赤ちゃんを風邪ひかせてしまいパニクって逃げ出すどれみちゃん、それを引っ叩きながら「私もどれみを風邪ひかせた事あるよ、でも逃げなかった!」と一括するお母さんのシーンが一番印象に残ってる。親になるとはこういう事。

・トムとジェリー

子どもの頃は「ジェリーがいつもトムに追われていてかわいそう」と思ってたけれど、大人になってから見たらトムのほうがいつも断然可哀想な目に遭っている。

・クッキングパパ

子ども→料理美味しそう!お母さんが料理しないって珍しいなぁ。
大人→あの時代で「共働き家庭」を描くってなかなか先進的では……。

・赤毛のアン

子どもの頃はアン目線でマリラを、大人になってからはマリラ目線でアンを見てる気になって読んでました。

・峰不二子(ルパン三世)

子ども→いつもルパンを騙して苦労かけて横取りなんなん!
大人→自分の武器と相手の弱味を分かって作戦立ててすごい。

・ガンバの冒険

子どもの頃「ヒーロー物(怪物退治)」
大人の頃「ガチ戦争物(撤退戦)」

・未来少年コナン

大人になってからダイス船長とモンスリーの心情の変化が理解出来るように。

・クリィミーマミ

子ども→マミちゃんかわいい!
大人→優ちゃん……ちょっと無茶し過ぎじゃない?

■ 実写映画・ドラマ・小説等

 見方が変わるのは漫画・アニメだけではありません。実写映画やドラマ、書籍でも同じことが言えるみたいです。

・ウルトラマン

子どもの頃は彼が出て、怪獣や宇宙人に「武力行使する絵」だけを観て純粋に喜んでいました。
今は、物語の状況がどうしても彼の力に頼らざる得ない最悪の事態であった事。そして可能なら、彼等はその存在に罪の無い怪獣達を本当は殺めたく無かったという事を識りました。

・ハリーポッターシリーズ

昔はハリーに共感しながら読んでいたけど、今はロンの両親や、ハリーを守って死んだハリーの両親、成長を見守るダンブルドアにめちゃくちゃ共感します。

・北の国から

子ども期→大自然、兄妹、家族愛に感動するドラマ。
大人期→なんか女の人が不幸になりがちなドラマ。

・リリー(フーテンの寅さん)

なんで毒蝮と結婚してんだよと。でも大人になると人の弱さや心の隙間ってものがそうさせるんだなとわかるようになる。

・カラマーゾフの兄弟

好きなキャラがイワンからドミートリィに変わった。そして一番年齢の近いキャラがアリョーシャからフョードルに変わった。

・シャーロック・ホームズシリーズ

子どもの頃は、天才ゆえのエキセントリックさに憧れて、「ホームズ カッコいい!」と思ってた。
おとなになって、「あのホームズと一緒に暮らせるなんて、ワトソンは相当な人格者では……」「やっぱり結婚するならワトソンの方だな」となった。

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 以上、寄せられたコメントの中からいくつかを抜粋してご紹介いたしました。

 子どもの頃と大人になってからで、作品や登場人物に対する印象が変わるのは、自身の感性が変化したことももちろんですが、やはり何度も見返したくなる作品自体の魅力も大きいのではないでしょうか。

 寄せられたコメントには、良い印象に変化をしたものから、厳しい印象に変化したものまでありますが、どちらにしても見返したからこそ得られた気づき。他にも、さらに歳を重ねると、また新たな気づきがある、といった意見もありました。

 何度も見返すうちに、自身の視野の広がりや成長を感じられる。名作たちがもつ一つの役割だと言えるのかもしれません。

 おたくま経済新聞Xアカウントの元のポストには、ここで紹介しきれなかった作品も多数ありますので、ぜひそちらも覗いてみてください。

(山口弘剛)