普段何事もなくても、突然お腹が痛くなったり、体のどこかが痛み始めること、あるかと思います。痛みの感じで、「あ、これは下痢」「これは生理痛」と大体分かることも多いのですが、そうではない痛みもあります。そんな体験談を描いた漫画がツイッターに投稿され、同じ経験をした人からも感想が寄せらています。

 イラストレーターでネットユーザーの“まつおるか”さんが体験したのは、突然の強い痛み。その顛末を漫画にしています。

 4年前、突然の強い痛みに襲われたまつおるかさん。その痛みは、生理痛にも似ているけど、キリみたいなもので穴を開けられているかのような、鋭く激しい痛み。どんな体勢でも痛みは引かず、「絶対なんかやばい」と直感したまつおるかさん。不幸にもその痛みが発生したのは土曜日。市民病院の救急外来では膀胱炎を疑われ、泌尿器科へ行くように言われたまつおるかさん。痛みを抱えたまま月曜日に泌尿器科へ行くと……膀胱炎ではなく、「子宮に何かできている」と医師に言われ、そのまま産婦人科へ。

 産婦人科で詳しく調べたところ……「卵巣嚢腫茎捻転(らんそうのうしゅけいねんてん)」という聞き慣れない病名。「ここじゃ手術できないので紹介状書くから市民病院行ってください」と言われ、突然の聞き慣れない病名と手術という事態に狼狽して号泣のまつおるかさん。言われるままに市民病院へ……。

 そして市民病院へ。この時点で午前11時頃でしたが、そこで言われたのが、「じゃあ今日の16時ごろ手術しますね。4日間入院してください」という説明。「卵巣嚢腫茎捻転」について説明を受け、手術へ。

 ちなみに、卵巣嚢腫というのは、卵巣内に液体や脂肪がたまってしまうもの。中身は、漿液性、漿液性、皮様性、チョコレートのう腫の4種類に大別されます。チョコレートといっても、その内容物はチョコレート色をした血液の塊で、生理の経血が上手く排出されずに卵巣内に溜まってしまうという状態です。これらは発生原因は不明なものの、柔らかく、9割が良性の物です。小児から高齢者まで幅広い世代に起こり得る病気で、大きくなるとこぶし大やそれ以上になることもあります。嚢腫が小さいうちは無症状なので気が付きにくいのですが、卵巣を繋いでいる茎部分がその重みでねじれてしまうと、「茎捻転」という状態になってしまい、卵巣への血流が止まり激しい痛みを生じます。この場合、迅速な処置が必要となります。

 術式は、お腹を大きく切る開腹手術ではなく、腹腔鏡手術。全身麻酔で、ねじれた部分の嚢腫を取り除き、ねじれを元に戻す手術です。手術は1時間ほどで無事終了し、麻酔からさめたまつおるかさんはご両親の顔を見て、安心してまたボロボロ泣いてしまったそう。「当時、『絶対にやべえ』という直感を信じ、病院に連れて行ってもらったので無事に元気になりました。『なんか変だ』『なんかやべえ』と思ったらすぐ病院に行ってください」と締めくくっています。

 このツイートを見た人からは、同じような経験をされた人や、思春期の子どもが、母親の直観で痛み方が尋常ではない事に気が付き、検査をしてもらったら同様の状態で手術となった、という反応が寄せられています。

 この病気は無症状の状態から突然発症するので、なかなか気付けない場合も多くあります。卵巣嚢腫には、経血の量が急に増えたり、生理痛が強くなった、という症状や、下腹部を触ると、しこりのような膨らみを感じたり、太ったわけではないのに、最近、下腹部の膨らみが目立つという症状で分かる場合もあります。また、嚢腫が大きくなると、下腹部痛や腰痛が出たり、膀胱や大腸を圧迫する事で頻尿、便秘といった症状も出る事があります。また、卵巣嚢腫には9割の良性腫瘍の他に、境界悪性腫瘍と、悪性腫瘍(がん)の3種類に分けられます。

 こういった症状がある場合で他の病気が特に疑われない場合は、検診もかねて一度婦人科で相談する事をお勧めします。子宮がん検診の際などに、卵巣の超音波診断を受けると、卵巣の腫れの有無もわかり、病気の早期発見につながります。定期的な検診を受けることで、早期発見、早期予防に繋げる事ができますので、心当たりがある人は、婦人科に相談してみて下さいね。

https://twitter.com/matsuorca524/status/1105646378657574912

<記事化協力>
まつおるかさん(@matsuorca524)

<参考>
小児における卵巣類皮嚢胞腫の茎捻転の1例 産婦の進歩第46巻3号(1994年5月)(PDF)
卵巣腫瘍|日本婦人科腫瘍学会
卵巣腫瘍|卵巣のう腫|症状|検査|治療 – 総合南東北病院
ほか

(梓川みいな/正看護師)