皆様、こんにちは。今話題のアニメに注目する「新作アニメ捜査網」。今回は、日本テレビ系で放送されている『RAINBOW-二舎六房の七人-』をご紹介したいと思います。
この番組は、昭和30年を舞台に、少年院に収容された受刑者達を描いた物語です。『RAINBOW-二舎六房の七人-』と似たような趣旨の物語として有名なのが、昭和40年の映画『網走番外地』ですね。この映画は、北海道・網走の刑務所に収容された犯罪者を描いたものですが、劇中で描かれた犯罪者は、根っからの悪人ではありませんでした。

映画のラストで保護司の妻木(演・丹波哲郎)が主人公である受刑者・橘真一(演・高倉健)に「お前はお人よしだな」と声をかけていましたが、親孝行をしたいと願う橘にしても、悪人と思わせておいてラストで妻木に真相を話す権田権三(演・南原宏治)にしても、8人を殺害した過去を持ちながらも橘への恩義に報いる鬼寅(演・嵐寛壽郎)にしても、本作に登場する犯罪者は意外にお人好しが少なくないし、保護司の妻木自身も、犯罪者を最後まで信用するお人よしなのでした。昭和25年の映画『羅生門』のラストシーンの台詞をちょっと思い出しましたが、『網走番外地』は、他人を信用することや、親への篤心を描いているんですね。

『網走番外地』に登場する受刑者と同様に、『RAINBOW-二舎六房の七人-』に登場する受刑者も根っからの悪人ではありません。第1話「After the rain」の冒頭、一般の乗り合いバスに乗った受刑者が、乗客の女の子が落とした人形を拾ったところ、周囲から寄ってたかって悪人扱いされる場面がありましたが、あれは可哀相でした。きっとあの受刑者は親切心で人形を拾ってあげたのでしょう。しかし周囲の人間は受刑者に優しさなどないと決めつけているようでした。現在放送中のテレビアニメ『迷い猫オーバーラン!』第1話でも自分の言い分を信じてもらえない子供の悲しみが描かれており、『RAINBOW-二舎六房の七人-』第1話と共通していると言えます。

『網走番外地』では妹と母親を思いやる受刑者の優しさも描かれましたが、第2話「Fugitive」でも、妹を思いやる受刑者・横須賀丈(声・羽染達也)の優しさが描かれました。一方で、不純な孤児院の院長とか、悪だくみのために孤児の里親になろうとする輩とか、少年少女を掌の上で弄ぼうとする大人の卑劣さが際立ち、丈とその妹が不憫でなりません。

心の汚い大人と、大人の犠牲になる少年という構図は、心の汚い看守と、看守に振り回される受刑者という形で、第3話「Distrust」でも描かれています。昭和30年の少年院を舞台にした本作は、登場人物の心情に時代背景が如実に影響を与えていますが、受刑者の1人・野本龍次(声・藤原啓治)は幼少の折、戦後の食糧難を切り抜けるために何でもやった母親の姿に衝撃を受け、人間不信に陥ってしまいます。そして少年院でも看守の石原(声・石井康嗣)の卑劣なやり口のせいで人間不信を増幅させます。時代と周囲の人間に振り回される野本が哀れでなりません。

このように本作は時代背景が物語の重要な要素となっているのですが、それが特に物語に影響を与えたのが第4話「Dissolve」です。第4話で、受刑者の1人・桜木六郎太(声・小山力也)は父親のことを回想します。桜木の父は軍人でしたが、終戦後シベリアに抑留されたという。生命を失わずに日本に帰ってきたものの、6人いる息子は六郎太以外全員戦死し、仕事もなく、世の中の動きにもついていけず、やけ酒をあおり、遂には自殺してしまったそうです。シベリアで辛い目に遭いながらも帰国できたというのに、不遇な晩年を送ったことが不憫でなりません。この番組は、戦時中から戦後にかけての時代背景が生んだ悲劇が幾度となく描かれ、沈鬱な物語となっています。物語自体はフィクションでしょうが、苦難の生い立ちを歩んだ日本人がいたことに想いを馳せるきっかけを提供しているとは言えないでしょうか。

※番組のデータについては、「2010年第2クールアニメを先取りまとめ編(https://www.otakuma.net/archives/3060560.html)をご覧ください。

■ライター紹介
【コートク】

戦前の映画から現在のアニメまで喰いつく映像雑食性の一般市民です。本連載の目的は、現在放送中の深夜アニメを中心に、当該番組の優れた点を見つけ出して顕彰しようというものです。読者の皆さんと一緒に、アニメ界を盛り上げる一助となっていきたいと考えています。宜しくお願いします。