ヨーロッパの高速データ中継衛星EDRS-Cを搭載した欧州宇宙機関(ESA)の大型ロケット、アリアン5が2019年8月6日(現地時間)に、フランス領ギアナから打ち上げられました。EDRS-Cは、次世代型の高速データ通信ネットワークを宇宙に構築する静止衛星です。

 ヨーロッパの宇宙データ通信網「スペース・データ・ハイウェイ」構想に基づき、エアバスによって作られた衛星がEDRS(Europian Deta Relay System)シリーズです。静止軌道を周回する複数の人工衛星で構成され、レーザー通信により、家庭用光ファイバーと同等の1.8ギガビット/秒の高速データ通信ネットワークを提供します。


 2016年1月に最初の衛星であるEDRS-Aが打ち上げられ、低軌道を周回する地球観測衛星が取得した画像データなどを高速で地上局に中継する運用が始まっています。これまでに2万回以上のレーザー通信が行われ、成功率は99.5%。合計で1ペタバイト(1024テラバイト)以上のデータが地上に送られています。

 今回打ち上げられたEDRS-Cは、EDRSシリーズ2番目の衛星。中継先が増えることで、さらに高速データ通信の回線容量が増えることになります。国際宇宙ステーションで実施されている実験のデータも、より早く届けることが可能です。

 EDRS-Cの本格運用開始は2019年の年末ごろを予定しています。2021年からは、新しい地球観測衛星プレアデス・ネオがこの「スペース・データ・ハイウェイ」を利用して観測データを地上に届けることになります。

 2024年には、レーザー通信ターミナルを3基搭載した3番目の衛星、EDRS-Dが打ち上げられる予定。これは広い太平洋上空をカバーします。宇宙を飛び交うデータも大容量化が進む現在、通信回線の占有時間が少なくなる高速データ中継衛星は、非常に大きな役割を果たす存在です。

<出典・引用>
欧州宇宙機関(ESA) プレスリリース
エアバス プレスリリース
Image:ESA

(咲村珠樹)