スマホでの写真がほとんどとなり、フィルム写真を撮る人も少なくなりましたが、写真用フィルムを作り続ける富士フイルム愛が高じて、フジカラーフィルムのマフラーを手編みした人が現れ、Twitterで話題となっています。作者にフジフイルム愛をうかがいました。
このフジカラーフィルムのマフラーを編んだのは、富士フイルムが好きすぎるtsubakiさん(@Fujifilmdaisuki)。Twitterのアカウント名から既に「富士フイルム大好き!」が伝わってきます。ちなみに富士フイルムの社名は、英語では「FUJI FILM」ですが、日本語では文字のバランスから「フィルム」が全て大文字の「富士フイルム」になっています。
Twitterに「富士フイルムが好きすぎてフジカラー 100を編みました」と、編み上げたマフラーの写真を投稿したtsubakiさん。その出来栄えが瞬く間に反響を呼びました。
富士フイルムが好きすぎてフジカラー 100を編みました。#fujifilm #knitting #フジカラー pic.twitter.com/TZZ91ChX3G
— 富士フイルムが好きすぎるtsubaki (@Fujifilmdaisuki) December 9, 2019
カラーフィルムと同じくブラウンの毛糸で編まれたマフラーは、ちゃんと両サイドにフィルム送り用の「パーフォレーション」と呼ばれる角丸の穴を再現。しかも先端(ベロ)が、カメラ装填用に切り取られて細くなっているところまで再現するという芸の細かさ。かつて中学時代の写真部で、長尺(100フィート)フィルムを再装填して使っていた筆者、先端をハサミでこのように切り取っていたことを思い出しました。
このマフラーの秀逸なところは、フィルム部だけでなく、フィルムが入っている「パトローネ」と呼ばれる金属製のカートリッジまで編み上げているところ。しかもモデルとなったフジカラー100(現行販売品)のデザインを忠実に再現し、バーコードやDXコード(電気接点でフィルムのISO感度を伝達するコードパターン)までも柄として編み上げています。
本物と同じく、パトローネ内にマフラーをくるくる丸めて収納することが可能。パトローネ開口部にはボタンがあり、マフラーのパーフォレーションをボタン穴として留めておくこともできます。
パトローネに巻き込まれたマフラーを見ていると、本当にフィルムが巨大化したように見えてきます。……でもこれ、写真は撮れないけど、首に巻くとあったかいんですよ。
今回tsubakiさんは思いついてすぐ編み始めたとのことで、編み図などは起こさず、かぎ針の長編みと中長編みを駆使して、実際のパトローネを横目で見ながらロゴなどを縫い取りしたとのこと。フィルムのパーフォレーション部は大きく編み目が飛ぶことになるため、長々編みにしているそうですが、きれいに四角くなっていて、編み物の腕前がうかがい知れます。
編み上げるまでの時間は、フイルム部が2日(8~9時間)、形状と模様が複雑なパトローネには4日(12~13時間)ほどかかったとのこと。フィルム部を留めるボタンは、強度的に不安があるので今後力(ちから)ボタン(ボタン裏側に補強のために縫い付ける小さめのボタン)で補強する予定だとか。
思い立ってすぐフィルムを編み始めてしまうほど「富士フイルム愛」にあふれたtsubakiさん。富士フイルムとの出会いは学生時代の「写ルンです」や、お父様から譲り受けたフィルムカメラに遡ります。
フィルムを使った銀塩写真の面白さから、当初はデジカメに抵抗があったそうなのですが、ご友人からの薦めで富士フイルムのX-T30(APS-Cサイズのミラーレスカメラ)を手にしたことをきっかけに、デジタルカメラでの撮影を開始。その後、昔のレンズ(オールドレンズ)やムービーカメラ(シネカメラ)用のシネレンズを、マウント変換アダプターを介してデジカメで活用するようになったといいます。
昔のレンズはコーティングや手計算による設計手法の限界から、コンピュータを駆使して設計される現代の高解像度なデジタルカメラ用レンズに比べると、少し結像が甘くなったり、像の歪み(収差)が大きかったり、色が鮮やかに出にくかったりしますが、その状態を「レンズの味」として楽しむのがオールドレンズの楽しみ。そんな中、富士フイルムのイベントで社員やスタッフと話をしているうちに、富士フイルムが持つ物作りのマインドなどに共感を覚え、企業としての富士フイルムも好きになったそうです。
そこから様々な富士フイルムに関する製品やグッズを集めるようになったというtsubakiさん。昔のフジノンレンズや販促グッズ、カメラなどをオークションを通じてコレクションしています。コレクションの一部を見せていただきましたが、富士フイルム社歌のレコードや、1970年代くらいまで使用されていた黒い鳥のマスコットキャラ「くろっぺ」のグッズまで、貴重な品が揃っています。
なかでもお気に入りだというのが、フジノンHF35A-2 35mm/F1.7という、ムービーカメラ用のCマウントを使ったCCTV(監視カメラ)用レンズ。元々は2/3インチ、画面比率1:1.7の撮像素子を使うカメラ用に設計されたものです。これはtsubakiさんが初めて手に入れた記念すべきTVレンズなんだそう。
tsubakiさんは、これをマウント変換アダプターを介してX-T30に装着し、撮影を楽しんでいるとか。監視カメラ用レンズで大丈夫?と思われるかもしれませんが、フジノンHF35A-2のイメージサークル(レンズの像が映し出される大きさ)は30mmと、X-T30のAPS-Cサイズ撮像素子の対角線長(28.7mm)より大きいので、マウント変換アダプターで撮像素子との距離を適切に調整すれば、ちゃんと撮影が可能なのです。
ほかにも引き伸ばし機用レンズをアダプターを介して装着し、撮影したりもしているそうです。こういったレンズで撮影した写真の作例を同人誌にし、創作同人誌即売会のCOMITIAに参加もしているというtsubakiさん。昔の写真雑誌などで当時の富士フイルム製品事情を収集したりと、その愛情は止まることを知りません。
好きだけど、まだ全然詳しくないんです、と謙遜するtsubakiさん。筆者も富士フイルムのネオパンSSとフジブロ印画紙、コレクトールやフジフィックスといった現像関連薬品で写真現像を学んだだけに、富士フイルムへの特別な感情はあるのですが、tsubakiさんの富士フイルム愛はさすがとしか言えません。これからもより一層「富士フイルム愛」を発信していって欲しいと思うばかりです。
<記事化協力>
富士フイルムが好きすぎるtsubakiさん(@Fujifilmdaisuki)
(咲村珠樹)