食事をしようとすると、とかく肉モノと大盛りが多い秋葉原。
すでにそういうものはもう無理、なトシになってしまったので、秋葉原での昼飯は選択の幅が狭い。ケバブくらいならたまにはいいけれど、ちょっと落ち着いた食事がしたい。そんなわけで今日は三幸だ。
三幸は、天ぷらの店だが、盛りすぎず、ちょうどいい量だ、ワタシには。刺盛りの定食もあり、腹に余裕があれば天丼、懐に余裕があるか、ちょっと懐がキツくても魅力的なネタが入っていたら刺盛りといったところだろうか。この店は秋葉原の裏道、いわゆるジャンク通りにある。建屋は昭和なお店で、正直、かつてはおたくには敷居が高かったと思う。最近は店主のカドが丸くなったのか、ツイッターなども使っていて敷居を下げている感がある。
ここもまた以前紹介した『松楽』と同じく、夫婦二人でやっているようだ。結構なお歳にみえる。店自体も、再開発事業とかによく飲み込まれずに残っているなという印象だ。
さて今日は刺盛りにする。のどぐろに惹かれた。
刺盛りは、チェーン店の居酒屋のような盛り合わせではない。今日はメジマグロ、クロムツ、そしてのどぐろことアカムツである。
待つことしばし。どうやらのどぐろは注文が入ってから捌いていたらしく、後から来た客の天丼よりも出てくるのが遅かったが、作りおきでないことを喜ぶべきだろう。
定食は刺身三点盛りに漬物、味噌汁、ご飯。なおここではご飯の大盛りやおかわりは有料である。刺身は昼の定食には質的に贅沢な盛りだ。ツマもかわっていて、セロリの漬物などが供される。
早速、昼からのどぐろという贅沢を味わう。脂ののった白身は実にうまい。メジマグロ、クロムツも鮮度が良く、カドの立った刺身である。定食でいただくよりも日本酒が欲しくなる味わいだ。都内一等地で、この内容にこの値段で釣り合いがとれているのかと思ってしまう。
値段が高いせいか、質より量を求める人が多いせいか、それとも敷居の高さを感じるのか、昼飯時にしてはゆったりとした時間が流れる。秋葉原裏通りには珍しくスーツ姿の客も多い。
以前来た時に、天ぷらにするキスを見させていただいた事がある。江戸前のシロギスで、かなり立派な体型のものだった。天種としては貴重なギンポが入ったこともあるらしい。江戸前の天ぷらも食べたいが、今日はのどぐろの魅力に負けた。他にも松輪サバなどこだわった刺身ネタが入り、なかなか選択に迷う。
そんなことを考えていたら、店のおばあさんが「うちは天ぷら屋なのに刺身のほうが沢山出る日があるんだよ」なんて言っていた。この値段でこのネタの刺身を出していればそれは納得ができる。
三幸の天ぷら、刺身。今どきの江戸前にしては比較的安いほうと思える。秋葉原に来ると他にいろいろお金をかけたいところだが、たまには量より質の食事もいいではないか。
(文:エドガー)