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秋葉原のルイーダの酒場「良心的な店 あさひ」が復活 名物マスターに暗号メニューもそのまま!

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 なんで明るいうちから飲むお酒って、こんなにおいしいんだろう?人間というものは、お酒が飲みたくなる生き物です。(お酒が苦手な方は、今回ごめんなさい!)

 昨今ではお酒の席が苦手だという人も増えていますが、好きな人にはたまらない魅惑の飲み物、お酒。酒飲みにとって、お酒を飲むという行為は大事ですが、お酒をどこ(どの店)で飲むかということも重要視します。

 「人生で大事なことは、何を食べるか、ではなく、どこで食べるか、である」とは、フレンチの巨匠ミッシェル・サラゲッタ(三谷幸喜作品に登場する架空の人物)の言葉ですが、たとえ同じ銘柄のお酒であっても、楽しい場所で飲めばお酒の味も変わるというもの。お酒を飲みながら誰かとする雑談というものは、どんなお金にも代えがたい楽しみであります。

 今回はそういう楽しい場所、昨年(2019年)惜しまれつつも閉店した、秋葉原で伝説の店「良心的な店 あさひ」が復活したと聞きつけたのでご紹介します。

  • ■ 仲間が集う場所は酒場

     「良心的な店 あさひ」は、神田須田町にある居酒屋です。いわゆる秋葉原地域からは離れた場所ですが、ここは秋葉原の人々が集うことでも有名な酒場でもあります。なぜ秋葉原から離れた場所に秋葉原の人々が集うのか、これは秋葉原の歴史とも関係しています。

     現在の「秋葉原UDX」「神田消防署」「東京タイムスタワー」がある場所には「神田青果市場(通称やっちゃば)」がありました。秋葉原といえば「電気街」というイメージがありますが、電気街が形成される前は「秋葉原といえばやっちゃば」が街の中心だったのです。

     戦後、駅周辺のガード下を中心に電気街が形成されましたが、やはり秋葉原の生活リズムは早朝から午前中に活動する「やっちゃば」を中心に回っていました。そのためか、午後5時をすぎると電気街の各店舗も店を閉め始め、中央通りの「ミスタードーナツ」も午後7時には閉店。2010年代までの秋葉原は深夜営業をする店もほとんど無く、秋葉原は夜に店が閉まるのが早い「朝型の街」街でした。

     しかし、「やっちゃば」は1989年に「大田市場」と統合になり秋葉原から姿を消します。市場労働者向けの飲食店の一部の店は残りましたが多くの店は移転し、90年代から2000年代後半まで秋葉原は訪れる人間の数に対して飲食店が少ないという状況が続いたのです。

     90年代に入り、電気街にも変化が訪れます。今まで家電やCDの街というイメージでしたが、徐々にPCも扱い始め、PC用ソフトの取り扱い店舗も増加します。そしてPC用ソフトを扱い始めた影響か、秋葉原には(電子機器関係だけでなく)様々なジャンルのマニアックな人々が集う様になりユーザー層が変化しました。

     しかし、上記の理由で当時の秋葉原は飲食の供給が少ない状況。彼らが意気投合しても、この頃の秋葉原にはお酒でも飲みながら語り合える場所が少なく、仲間と集う場所を求めて隣駅の御徒町か神田駅周辺の飲み屋街まで移動しなければなりませんでした。

     そこで、秋葉原から歩いていける範囲にある「あさひ」に、秋葉原のマニアックな人々が集う様になります。こうして、「あさひ」が秋葉原における「ルイーダの酒場」の様な場所になっていったのです。(この状況が変化し始めるのは15年前と10年前。ドラマ「電車男」のヒットを受け、2005年以降に秋葉原にメイド喫茶や飲食店が増え始め、秋葉原の観光地化が進んだ2010年以降に深夜営業の飲み屋が増え始めます)

     しかし、立地だけで集客ができるのは一部の有名観光地だけでしょう。「あさひ」が秋葉原のマニアックな人々に選ばれ、伝説の店として語られる様になったのはお店自体の魅力があったからです。次に「あさひ」の魅力を紹介したいと思います。

    ■ せんべろのレジェンド「あさひ」の魅力とは

     「あさひ」の魅力はまずマスターの人柄です。酒場の魅力とは、それを差配する「マスター」(もしくは「大将」と呼ばれる者)の魅力でもあります。あさひのマスターである斉藤さんは、その人柄から秋葉原界隈のみならず「せんべろ(千円でベロベロに酔える店)」業界でも有名。「せんべろのレジェンド」と紹介されたり、楽しい名物マスターがいる店として、TV番組で取り上げられたこともあります。

     ところが昨年(2019年2月)マスターが病に倒れ、お店は閉店。お店は多肉植物の店「グリーン あさひ」として改装されます。この時のマスターの病状は重篤で、一時は歩行も困難な状況でしたが、その後歩けるようになるまで回復。ファンの熱い声に応えて、2020年5月27日に再び居酒屋としてオープンしました。

     再開のきっかけについて伺うと「秋葉原の人たちから再開して欲しいという声があった。みんなに喜んで貰いたいからね。がんばるよー」と、語っていました。とはいえ、病み上がりのマスターには以前の広さの店内は厳しい。体力の限界を考慮し、店内は今までの半分程の10席まで減らします。

     さらに「コロナで大変な人たちがいるから」と、料理の値下げも行っています。今まで、「あさひ」で一番高い料理は400円でした。これでも十分安かったのですが、再オープンにあわせて料理は全て200~300円に値下げとなりました。

     店も狭くして、価格も下げて経営は大丈夫なのかと心配になりましたが、マスターは筆者にこう言いました。

     「そこに掃除屋、ベンリ屋って書いてあるでしょ?この辺は困ってる年寄りも多いし、なんでも屋でもやって生活費の足しにするよー」と笑顔で答えたのが印象的でした。

     「植物が好きだから鉢植えもやってるし、金魚やメダカも好きだから(近所の子ども達のために)金魚すくいもやっている。好きなことをやって楽しんでもらえたら最高じゃない」と斉藤マスターは話してくれました。

    ■ 居酒屋?観葉植物店?おもちゃ屋?まるでテーマパークの様な店内

     また「あさひ」は、個性的なお店自体も魅力です。お店の中からお店の外にまで「良心的な店 あさひ」はマスターの独特なセンスで飾り付けられて、まるでテーマパークの様。

     店の外にまであふれる看板は他の追随を許さない素晴らしいデザイン。店の入り口では金魚すくい100円をアピール。「多肉植物も好きなんだよ」と、見せてくれたのは「ドラセナ」。多肉植物じゃない上に、バケツのバーコードに某ホームセンターのシールが付いたままのバケツに植わっています。また土には「1万円」というマスター手書きの値札が付けられ「アイスの棒」と共に刺さっていました。この独特なセンスがたまりません!

     まず店内に入ると、壁に展示されているトレーラー車たちが歓迎してくれます。このトレーラー車は「あさひ」に入って最初に目に付くステキなオブジェですが、これ実は売り物。よく見るとプラスチックのケースにマジックで直書きされた値段が書かれています。価格は5000~2万円と、かなり強気の値段設定です。

     とあるテレビ番組が取材に来た時にも「あの2万円のトレーラー、絶対売れないよね!?」と突っ込まれていました。自分も20年くらい「あさひ」に通っていますが、いまだにこのトレーラー車を買っていった人を見たことがありません。

     そして店内に入り、後ろを振り返るとさらに驚きの光景が広がります。天井付近には棚が吊られており、大きめのロボットやフィギュアがぎっしりと詰め込まれ、展示されているのです。



     「グリーン あさひ」に改装したときに剥がされてしまったのですが、かつては棚ごとに軍が編成されており「アイスバン軍」、「ゴールドバン軍」、「ビッグバン軍」等の軍団名を書いた紙が貼られていました。

     そして軍団の一部のエリートロボットにはマスターにより「あさひネーム」が与えられます。ユニ●ーンガ●ダムには「アイスマン」、ザ●IIには「ハルク」、ガ●ダムA●Eには「ベイダー」、「イエロマン」という「あさひネーム」が付けられていました。

     このロボットたちは皆、マスターを慕うファンたちから寄贈された物ですが、マスターはロボットのことがよくわかりません。ロボットたちはその都度マスターの独特のセンスで命名されていった様です。

     ただ、ゴッ●ガ●ダムだけは「ゴッドマン」と命名されており、かなり惜しいな、と感じました。

    ■ メニューがほぼ「暗号」

     そしてそのロボットたちの下に、ようやくお店のメニューが並びます。

     酒ロク、生ホッピ、生、ハイ、サワ、ハイ……。初めて来たお客さんは大体これに戸惑います。これは「あさひ」特有の「圧縮言語」。ほぼ暗号といっても良いかもしれません。

     昔、某ホームセンターでお店のメニュー表を作ってもらおうとしたマスターですが、文字数により値段が変わるといわれたので、予算に併せて文字を削ったメニュー表を作ってもらいました。

     しかし意外とこれが好評で、そのまま「あさひ」のメニュー名として定着したのです。とはいえ、これじゃ分からないという場合もあるので、補足として色んなオブジェがメニューにくっつけられています。日本酒なら日の丸の絵、生ならその上にたる、ハイにはレモン、もう一つのハイはウーロン茶のペットボトル。

     解読すると、酒ロク=日本酒ロック、生ホッピ=生ホッピ―、生=樽生、ハイ=ハイボール、サワ=レモンサワー、ハイ=ウーロンハイという風になります。ちなみに、日本酒に氷を入れるのがマスターお勧めの飲み方。

     また、手書きのメニューも「原焼玉子」、「焼ギョザ」、「エビ也ん」、「ちくわ場」、「マカロニサダダ」と個性的。すべて解読して紹介したいのですが、それはそれでネタバレにもなるかな?と思うので、ドリンク以外のメニューの解読は省いておきます。

    ■ ぼっち席も完備

     ちなみに今回、入店した途端に斉藤マスターが嬉しそうに「見てくれ!」というので店の奥に案内される。「コロナ対策に個室も作ったんだ」と、案内された先には謎の「ぼっち席」が用意されていました。

     みた感じは、ちょっとした個室といったところ。これは「コロナ対策とは別の意味」で秋葉原の人々から喜ばれそうなスポットになりそうです。

    ■ 酔えば酔うほど本領を発揮するマスター

     さて、久しぶりの「あさひ」に喜びもひとしおですが、さっそくドリンクとお料理を注文。改装前からそうなのですが、ここのお料理は安い。安すぎる。日本酒やビール類飲料が180円、サワー類が150円で、料理は200~300円。全て税込みです。

    「マスター!たる生とレモンサワ!枝豆とマカロニサダダ、お願いします!」
    「あいよ!」

     そういうとマスターが戸棚から取り出したのは、自分用の白鶴酒造『白鶴 まる』(紙パック3リットル)です。マイコップに日本酒をなみなみと注ぐや否や、一気にあおる。そして空になったコップを手に「よっしゃー!」と、声を上げるマスター。

     これはアクシデントなどではありません。初めて「あさひ」に来店した人は大体驚きますが、これが「あさひ」の日常的な光景。

     ジャッキー・チェン主演の「酔拳」よろしく、酔えば酔うほど本領を発揮するのが「あさひ」のマスターなのです。まず我々にサーバーから注文のドリンクを注ぐと、謎の声を上げながらキッチンへ入っていきました。

     再オープン前からそうなのですが、お酒が好きなマスターは酒を飲みながらキッチンに立つ剛の者。

     当時から「うぇいうぇええーーい!」という奇声や、「うぉううぉうお~」という歌声が店内に響いていました。この時歌うのは、マスターが好きな「ZARD」の何かの曲らしいのですが、なんの曲なのかは誰も知りませんし、聞いていてもわかりません。なお、店内には知人から貰ったという坂井泉水さんのサイン色紙がマスターの宝物として大事に飾られています。

     余談ですが、かつての「あさひ」では「マスターが歌を歌い始めたら本番」と言われていました。前は酔いが回ってくると料理の盛りが増えたり、むせるような濃いウーロンハイが運ばれてきたりしたものです。今はレモンサワ―もビール類もサーバーになってしまったので、マスターが酔ってもアルコール度数は変わらないと思われます。

    ■ 安くてボリュームはあるけど……アタリ・ハズレがある料理

     そして先程から説明している、安い価格の「あさひ」の料理。安い分だけ量少ないんでしょ?と思うかもしれませんが、とんでもない。「もやし炒め(200円)」は取り皿サイズのお皿に山盛りなど量がそこそこあるのです。このため本稿を読んではじめて「あさひ」に行くつもりの人は、安いから沢山たのんじゃえ!と最初から沢山頼みすぎないようご注意を。









     さて、ここまで説明して「あさひ」の値段と量についてはご理解いただけたと思います。しかし、飲食店で重要なのはやっぱり味!「安くて量が多いのはわかったけど、味はどうなの?」と、心配になった方もいるでしょう。

    ……正直にいいます。「あさひ」に対しては「アタリ、ハズレもあるが、比較的おいしい」というのが私の評価です。

     この「比較的」というのには理由があります。実は「あさひ」のマスターは味見をしません。そして料理の修行経験もありません。

     マスター曰く「他人に料理を作ってもらって食べるのは好きだけど、自分で作る料理は好きじゃない。できれば誰かに作ってもらいたい」と語ります。とあるテレビ番組が取材に来た時にも「自分の料理の味見をしない」「ポテサラ作っといて味見しない」等の迷言が生まれました。

     しかし、継続は力です。マスターは料理の素人ながら開業以来ひとりで「あさひ」のキッチンに立ち、鍋を振ってきました。マスターは他人の料理を食べることは好きなので、「これを加えたら良い」「こうしたら美味くなる」ということを感覚で身につけていったのではないかと思われます。

     よくわからないけど、なんか美味しいという「アタリ」の料理が出てくることもしばしば。ちなみに今回の「アタリ」は「肉キムチ」でした。マスターは「キムチと鶏肉と唐辛子以外入れてない」と言っていましたが、新玉ねぎや謎の調味料が入っていたので他にも何か工夫をしているのだと思われます。

     何をどうしたらこの「肉キムチ」がこういう味になったのか全くわかりませんが、そこはかとなく美味しく仕上がっています。

     他にも、ちくわ場は「前に食べた時に食感が良かったから縦切りにした」とか、とりからは「今日はいい新玉ねぎがあったから玉ねぎも一緒にフライした」と言って出してくれました。味見はしないといいつつも、お料理に対する姿勢は真面目です。

     もちろん「ハズレ」の料理が出てくることもあります。以前に「ポテサラ」を注文した時がありました。この時は見た目はめちゃくちゃおいしそうな「ポテサラ」でしたが、口にしてみると「粉っぽくて」「全く味がしない」という謎の食べ物が出てきた時もあります。

     この時、同席していた知人から「こういう(味がうすい)時は、七味とソースをかけて食べるとポテサラは美味しいんですよ」と教えてもらい、美味しくいただきました。

     なるほど、英国流とでもいいましょうか、味が薄ければ自分で調味料を足して料理を完成させればよいのだと感心したものです。

    ■ 一度はあさひに

     チェーン店ではどの店でも安心したサービスが受けられますが、個人経営のお店は様々なことに挑戦していることが多いです。たまには知らないお店にふらっと入ってみると、今までの人生で経験したことがない体験ができることもあります。酒飲みがいろんな店でお酒を飲みたがるのは、こうした新しい体験や経験を求めているのかもしれません。

     皆さんも機会があれば、あさひの様なお店でお酒を楽しんでみてはいかがでしょうか?

    <店舗概要>
    良心的な店 あさひ
    場所:東京都千代田区神田須田町1丁目12−6
    営業:定休日および営業時間は様子を見て決めていく予定
    ※お店に電気が付いていたら声をかけてほしいとのことです。

    (和泉宗吾)

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