ぴっかぴかの1年生に送る学習雑誌『小学一年生』5月号(小学館)の特別付録があまりに豪華だということで話題になっています。
実は『小学一年生』の付録は今回だけでなく、度々その豪華さに注目されているんです。2008年には指先に装着してどこでもピアノが弾けてしまうという「どこでも ゆびピアノドレミくん」。昨年2016年は蓋の部分が電子ピアノになっている「ドレミファ ピアノ ペンケース」が付録になりテクノマシーンに改造する強者まで。
そして2017年は何と、自分の声や音を録音すると鍵盤から発せられる音にしてドレミファが弾けてしまうという「うたって!こえピアノ」が5月号に付録され、実際に買いに行った大人が次々に現れてしまうほど超話題になっているんですよ。
さらに、昨年ピアノペンケースを改造したBakaOscillator(バカオシレーター)さんが今回も出力用とマイク用のジャックを取り付けけ、機材と接続を可能にした改造を施して小学館公式サイトで紹介されています。
人気YouTuberのHIKAKINさんは早速使用感を動画で報告しており、多くのファンが注目。プロのピアニスト・牛田智大さんもピアノ演奏とのコラボを自身のFacebookにて公開しているほど。というわけで、今回は『小学一年生』の渡辺編集長にお話を聞いてみました!
■各界の注目人物らも紹介
──「うたって!こえピアノ」を付録にしたきっかけを教えてください。
音もののふろくは定番のひとつです。子どもは音が出るものが好きですし、1年生になるとほとんどの学校で「鍵盤ハーモニカ」(いわゆるピアニカ)を習うので鍵盤に親しむことは学習にも繋がります。
以前から『小学一年生』のふろくは豪華だと話題にしていただくことが多かったのですが、今年度からはさらにすごいふろくを付けていこうと決め、単にピアノが弾けるだけでなく、より楽しげな子どもたちが絶対に遊びたくなるような機能を加えたいと考えました。
そんな思いの中、ふろくについて編集部で会議をしていた際「自分の声を録音して、その声で弾けるピアノができないか」という案が出ました。
市販の本格的なキーボード等ではそういうことができるものがあることは知っていましたが、ふろくのコストの中でできてしまったことは、プランを出しておきながらも自分たちでも驚いているぐらいです。
──楽しみながら学んでいける付録なのですね。
そうですね。そしてこの「こえピアノ」の編集部からの狙いはもうひとつあって、お子さん同士の「コミュニケーションツール」になってほしいということです。これに声を入れて弾いたら、おもしろくて絶対に家族や友達にも聞かせたくなる。新しい友達に出会う新学期のふろくなので、そんなシーンも想像して今回の実施を決定しました
──ところで、HIKAKINさんの紹介動画で付属のドラえもんフィギュアがピアノに固定されないとありましたが、こちらにはどんな役割があるのでしょうか?
ドラえもんフィギュアには「音量調節」の機能を持たせています。レールをスライドさせて、スピーカーの穴の上にドラえもんを置くことで、穴がふさがれて音が小さくなる……という、きわめてアナログな方法で音量調節ができます。
これまでも音が鳴るふろくを付ける際に「音が大きすぎるときは、スピーカーの穴をセロハンテープ等でふさいでください」といった注釈を記すことがありました。今回はその役目をドラえもんに担ってもらったというわけです。あとはとにかく、見た目の楽しさのためです。先に「ピアノだけじゃなく、歌うドラえもんのフィギュアを付けたい」という私のこだわりがあって、音量調節にも使えることにしようというのは「せっかくならドラえもんにも機能を付けたい」と後から考えたアイデアです。
フィギュアの造形は、「藤子・F・不二雄ミュージアム」の造形物なども手がけていらっしゃる造型師の方に監修していただいております。「大口を開けたドラえもん」というかなり難しい形のはずですが、ものすごく良い出来に仕上がったと思います。
──『小学一年生』は付録だけでなく本誌にも非常に力を入れていると聞きます。5月号の見どころを教えていただけますか?
とにかく、我々の目的は「子どもたちに本誌を読んでもらうこと」です。 ふろくは「注目を集めるための装置」であると同時に「ふろくで遊んで本誌を読むことで、より興味がわき理解が深まる」という狙いもあります。
5月号はふろくのピアノに連動する形で、本誌でも音楽絡みのページが40ページほどあります。
まず、巻頭の「がっきが い~っぱい!! オーケストラ」。楽器はどうやって音を出しているのかを様々な楽器で見せたい……と考えたときに、写真から得るインパクトを狙い「ここはやっぱりオーケストラだろう」ということになりました。そこで、取材する以上はちゃんとした立派な交響楽団に出ていただきたいとアタックしたところ、読売日本交響楽団さんにご快諾いただきました。
今回は「正装での楽団の皆さんの写真を撮らせていただきたい」という基本主旨に加え「子どものモデルが楽団員さんの近くに寄って撮影したい」「いろいろな楽器を弾くところを動画にも撮らせてもらって公開したい」といった条件もありましたので、先方にとってもふだんあまり受けない類いの取材申請だったと思いますが、快くお受けいただいた読売日本交響楽団の皆さんには本当に感謝しています。
子どもと一緒に笑顔で写っている常任指揮者のシルヴァン・カンブルランさんは、世界的に有名な方です。子どもたちには「本物」を見せたいと思っているので、願いが叶いました。
──「うたって!こえピアノ」の動画をアップされている17歳の若きピアニスト・牛田智大さんは本誌でも登場されていますよね。
牛田さんはふろくの企画段階から名前があがっていました。ちゃんとしたピアニストの方が「うたって!こえピアノ」を弾いてる写真が載せられたら良いなあと考えていました。編集部の「子どもたちに音楽に親しんでほしい、音楽好きな子を増やしたい」という思いに牛田さんサイドも共感してくださり、ご協力いただきました。
取材で初めて知ったのですが、実は牛田さんはドラえもんが大好き。ご自身が小学1年生ぐらいのころにドラえもん型貯金箱を持って書店に行き、ドラえもんの学習まんがを買ったそうで取材の際にも大変楽しんでくださいました(その写真も誌面に掲載しています)。ちなみに取材時には、ふろくの「うたって!こえピアノ」で「ラフマニノフのピアノ協奏曲」を弾いてくださってます。すごい。
──すごいですね……! そうやって、Facebookにて多くの方から反響を得た牛田さんの「一年生になったら」の演奏に繋がるのですね。
もうひとつ、やって良かったと思うのは「やさいで がっき」です。
今回のオーケストラの記事のネタを探しているタイミングで、たまたま新聞に、野菜で楽器を作っていらっしゃる方の記事が載っているのを見つけ「これはおもしろいね」ということに。
ちゃんとした楽団とちゃんとしたピアニストに登場していただくという目的は果たせていますが、それだけだと「良い子の本すぎるな……」と気になっていたので「これは良いね」ということになりました。
正統なものだけでなくヘンテコなもの(しかし、やってる人はまじめ)もどちらもが等価値であり、人生を豊かにするための大切な情報です。我々が掲げる「学習雑誌」は、けっしてマジメで固いものだけを取り上げる本ではありません。
「へえー、こんなものが世の中にはあるんだ」「変だけど、おもしろい」と、心をくすぐるようなものがあってこそなのです。
教科書に載っているようなモノだけで世界が完結すると思うような人間にはなってほしくない。そんな思いを、この「やさいでがっき」が体現してくれたと思います。
その他に工作も実験も「音」テーマですし、YAMAHAのピアノ工場取材やピアノの起源を、そして巻末のまんがでは「どうして鍵盤はあんな並びなのか(白鍵と黒鍵の並び方のひみつ)」という謎にも触れています。『小学一年生』が目指しているのは、豪華なふろくと、それに連動した充実した本誌の記事です。その双方が成り立っていることで単体ではできないような深い楽しみ方ができ、理解も深まるのです。
──私たちがかつて親しんできた『小学一年生』は大人たちがこんな風に頭を捻ってアイデアを出し合い、つくられているのですね。貴重なお話をありがとうございました!
これからもさらに豪華な付録とアイデア豊富な本誌が見逃せない『小学一年生』、付録目当てに買った人は大人たちの本気が詰まった本誌にもぜひ目を通してみてくださいね。
『小学8年生』第2号は4月27日ごろ発売で『小学一年生』6月号とほぼ同時発売。『小一」は付録と本を包むぶん進行が早いので、昨日でほぼほぼ校了のメインは終わりました。6月号も読みごたえあります! 校了していておもしろい! 『小8』も『小一』も、子どもたちにまっすぐ届けていきます! https://t.co/4Ql1NUrDxy
— 渡辺朗典 (@nabe_routen) 2017年4月5日
・協力:小学館『小学一年生』
(大路実歩子)