おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

「地震のたびに倒れてイヤね」 客の声から生まれたアイデア防災商品『明かりこけし』が素晴らしい

 胴が細く、頭が大きい。この不安定な特徴をうまく利用し、防災グッズとしても役立つこけしを生みだした株式会社こけしのしまぬき。

 震度4程度の揺れがくると倒れてしまうデメリットを逆転の発想で利用し誕生した『明かりこけし』(税抜7,800円~)は、倒れることで内部のセンサーが反応してLEDライトが灯る仕組み。他にも手に持って傾けるだけでも反応します。普段は部屋の飾りとして置いておき、いざという時はすぐ手にできるとして、ネット中心に人々の関心をあつめています。

  •  株式会社こけしのしまぬきは明治25年創業。以来、125年にも渡り宮城県仙台市青葉区に店をかまえ仙台の伝統工芸品や民芸品、雑貨などを取り扱っているそうです。創業当初は、タバコ、パイプやキセルなどの道具を販売していましたが、その後こけしや仙台の工芸品や埋木細工(うもれぎざいく)などで作られた商品を販売していたとか。埋もれ木とは、500万年前に地中に埋まった樹木が化石のようになったもので、色は濃いグレーだといいます。すべて手作業で削り、菓子器や箸置きなどに加工されるそうです。

     今回、話題になっている『明かりこけし』がどのようなきっかけで誕生したのか、株式会社こけしのしまぬきの島貫さんに伺ってきました。

    ―明かりこけしは、どのようなきっかけで開発されたものなのでしょうか?

    きっかけとしては2008年の岩手・宮城内陸地震でしょうか。三陸沖の地震が多い地域ということもあって、東日本大震災よりも前から「地震のたびにこけしが倒れてイヤだね」というお客様からの声が度々聞こえていました。それで、地震の揺れで倒れてしまうこけしに何かひと工夫できないかと考え『明かりこけし』を作ったんです。

    ―そうだったんですね。実際2011年3月11日東日本大震災の時、宮城県ではどのような状態だったのでしょうか?

    停電、断水やガスの供給停止が一カ月以上続きましたね。電気は数日のうちに復旧しましたが、お風呂に一か月も入れないような状態でした。幸いにも私は知り合いからお風呂をお借りできたのでよかったのですが……。結局お店は2週間ほど休業することになりました。従業員は他県にでている者もおりましたが、全員無事でした。

    ―このような地震の際に、明かりこけしはとても活躍しそうですが、震災時以外にもオススメの使い方などありますか?

    懐中電灯替わりに使用されている方も多いようですね。ライトのON、OFFのスイッチは無いんですが、LEDとセンサー、単3電池でできていまして、傾斜センサーが傾きを感知してライトが点灯する仕組みになっているんです。使用しない場合は、こけしを立たせておくしかないですが、お客様の中には「スイッチを押す手間が省けるからいい」と言ってくださる方もいらっしゃいますね。

    ―こけしは頭が大きく胴が細くて倒れやすいものですが、他にも種類はあるのですか?

    こけしも現代にあわせて進化をしているんですよ。胴体が太くなり倒れにくいこけしもありますよ。『こけし缶』もそのひとつで、缶詰なのでサイズとしても小さいですし、倒れにくい作りになっています。

    ―「私もマイこけしを作りたい!」という方のためのワークショップなどあれば教えてください。

    明かりこけしのワークショップは今のところ開催していませんが、こけし絵付け体験や作品展は随時開催しています。ぜひいらしてください。

     昔から子どもの卒業祝いや、お餞別、叙勲のお祝いや新築御祝など人生の節目にこけしを贈る文化が根付いている宮城県。
    取材をさせて頂いて一番驚いたのが、こけしの種類が東北6県で11系統もあること。その中の4系統が宮城県発祥で、弥治郎(やじろう)、遠刈田(とおがった)、鳴子(なるこ)、作並(さくなみ)と顔の表情や模様、形状などの違いがあるそうです。今度、街中でこけしをみつけた時は、表情のちがいを観察してみるのも面白いかもしれませんね。

    <取材協力>
    こけしのしまぬき

    (黒田芽以)

    あわせて読みたい関連記事
  • 華の会メール・バナー
    PR

    オトナ世代の恋愛マッチング

  • 華の会メール・バナー
    PR

    趣味でつながる30代からの恋愛マッチング \華の会メール/

  • 宮城県女川町、イベントでの痴漢行為に激怒声明「犯罪行為を行う人は来ないで」
    社会, 経済

    宮城県女川町、イベントでの痴漢行為に激怒声明 「犯罪行為を行う人は来ないで」

  • 西陣織とコラボした「薬屋のひとりごと」の長財布が発売!猫猫と壬氏をイメージしたデザイン
    アニメ/マンガ, 商品・グッズ

    西陣織とコラボした「薬屋のひとりごと」の長財布が発売!猫猫と壬氏をイメージしたデ…

  • 「女のクセに」「女なのに」鍛刀場に寄せられる心ない声に女性村下が提言
    インターネット, 社会・物議

    「女のクセに」「女なのに」鍛刀場に寄せられる心ない声に女性村下が提言

  • スクエニクリエイターに焦点を当てた企画展 名古屋で2024年2月開催
    イベント・キャンペーン, ゲーム

    スクエニクリエイターに焦点を当てた企画展 名古屋で2024年2月開催

  • 「#Tokyo Tokyo BASE」が羽田空港第3ターミナルに開設 オープニングセレモニーにハローキティも登場
    イベント・キャンペーン, 経済

    東京ブランドのPR拠点「#Tokyo Tokyo BASE」が羽田空港第3ターミ…

  • 手描友禅染工房「池内友禅」が魅せる「引き染め」という新たな可能性。
    インターネット, びっくり・驚き

    手描友禅染工房「池内友禅」の「染め替え」に京きものの新たな可能性を見る

  • それはあなただけの「とっておき」。予約3年待ちかんざし作家・横田涼子。
    インターネット, サービス・テクノロジー

    予約3年待ちのかんざし作家・横田涼子が生み出す一粒の宝飾

  • 画像提供:株式会社カヤック
    企業・サービス, 経済

    宮城県に新ヒーロー「バーチャンズ12」爆誕 キャストは平均年齢70歳

  • 「NO BORDER」で世界を駆ける「国境の無いこけし」。
    インターネット, おもしろ

    地球儀にかわって世界を駆け抜ける「国境の無いこけし」

  • 1500年超の伝統を守り続けるために。墨の伝道師・長野睦の挑戦。
    社会, 経済

    伝統を守り続けるために 「墨の伝道師」長野睦の挑戦

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • Insta360、新製品「GO Ultra」登場 ポケットサイズで高精細4K映像
    商品・物販, 経済

    Insta360、新製品「GO Ultra」登場 ポケットサイズで高精細4K映像…

  • 防災について学べる「巨大地震のサバイバル」
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    朝日新聞出版、「巨大地震のサバイバル」を特別公開 防災の日を前にWEBで無料配信…

  • 顔ハメパネルで“信金さん”に変身
    企業・サービス, 経済

    伊藤沙莉さん、顔ハメで“信金さん”に!? 新CMでコミカルな演技披露

  • テレビアニメ「野原ひろし 昼メシの流儀」
    アニメ/マンガ, 放送・配信

    「野原ひろし 昼メシの流儀」アニメPV公開 主題歌はMega Shinnosuk…

  • 山梨から“青いうどん”登場 富士山を表現した「青い富士山うどん」発売
    商品・物販, 経済

    山梨から“青いうどん”登場 富士山を表現した「青い富士山うどん」発売

  • 新幹線の1車両を貸し切った「日清焼そばU.F.O. ソースエクスプレス」を2025年8月23日に運行
    イベント・キャンペーン, 経済

    新幹線で「U.F.O.」を実食!特別列車「ソースエクスプレス」8月23日限定運行…

  • トピックス

    1. 松屋「担々麺ハンバーグ」を実食 記憶が混乱するレベルに美味しい……!

      松屋「担々麺ハンバーグ」を実食 記憶が混乱するレベルに美味しい……!

      松屋は8月19日から一部店舗限定で「担々麺ハンバーグ」を販売中です。鉄板にのったハンバーグに担々麺が…
    2. 7億円の当せん番号決定の瞬間を目撃!「サマージャンボ」抽せん会参加レポ

      7億円の当せん番号が決まる瞬間を現地取材!サマージャンボ抽せん会レポート

      1等・前後賞合わせて7億円が当たる「サマージャンボ宝くじ」と、1等・前後賞合わせて5000万円が当た…
    3. 加藤茶、伝説の“カトケンゲーム”に挑戦 新番組「第三学区」放送開始

      加藤茶、伝説の“カトケンゲーム”に挑戦 新番組「第三学区」放送開始

      お笑いタレントの加藤茶さんが、まさかの“自分ゲー”に挑む。テレビ神奈川の新番組「第三学区」(だいさん…

    編集部おすすめ

    1. たいちくんX投稿より

      ゆりにゃさん元パートナー、Xで未練吐露→ネットの反応は冷ややか

      インフルエンサー・ゆりにゃさんの、公私にわたる元パートナーである「たいちくん」こと齊藤太一氏が、8月17日に自身のX(旧Twitter)を更…
    2. 匿名質問文化を支えた「Peing-質問箱-」終了 2017年の誕生から8年

      匿名質問文化を支えた「Peing-質問箱-」終了 2017年の誕生から8年

      匿名で質問やメッセージを送れるサービス「Peing-質問箱-」が、2025年8月29日をもって終了することが発表された。運営は8月15日付で…
    3. マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗を訪れた記者が感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗で感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドは8月11日、ハッピーセット「ポケモン」のポケモンカードキャンペーンを巡る混乱について公式サイトで謝罪しました。期間限定カードを…
    4. 「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      大学進学や就職で交友関係が広がると、今までの人生で見たことがない苗字を持つ人と知り合いになることがよくあります。見慣れない苗字に遭遇したとき…
    5. 「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      累計販売90万本を超える人気作「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』~おわらない七日間の旅~」が、初めてスマートフォンで遊べるようになり…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト