人の多いショッピングモールや駅、街中に行くと、時々迷子の案内放送が流れてきます。迷子として案内カウンターなどに迷子が来る過程で、必ず誰か見知らぬ大人がそこに介入しているのですが、昨今、不審者も多く、迷子を見つけても対処に迷いを感じる人も少なくないかもしれません。そんな中、一人の漫画家が迷子を保護した時の顛末を漫画にしてツイッターに投稿した内容が大きな話題を呼んでいます。

 講談社ちばてつや賞など受賞歴もある漫画家のにしもとのりあきさんが遭遇したのは、泣きじゃくる小さな男の子。にしもとさんが次の用事に向けて急いでいた時に偶然、独りで泣いていたところが目に留まったのでした。時刻は夕方の5時ごろ。急いでいたにもかかわらず、にしもとさんはその子に声を掛けてすぐにサービスカウンターに。カウンターの人の手際の良さに感心しつつ、大遅刻となってしまう言い訳を考えながらも、保護者が来るまでの間その迷子の子に付き添っていたにしもとさん。そして15分ほどして、母親が到着。

 母親の話によると、二つ隣のお店で買い物をしていて、トイレの後に急に子どもが姿を消してしまったとの事。忽然と消えてしまったわが子を必死に探し、それでも見つからず、警察に聞きに行ってやっと近くで保護されている事が分かったそうです。迷子になった子はというと、トイレではぐれてしまい迷ってたどり着いた先のお店の前で、30分ほどずっと待っていたとのこと。母親にめちゃくちゃ感謝され、いい事をしたな……と思ったにしもとさんでしたが、次の瞬間思った事は「僕が声を掛けるまでの間、あの子は何をしていたんだ?周りの人は?」

 漫画のツイートは続きます。

 30分……迷子はすすり泣きながらその場に立ち尽くしていた。人の多いこの場所で、さすがに30分間も誰も声を掛けずに子どもをそのままにしておくなんてあり得ない……。

 「今ってほんとにこんな感じなの??忙しくなり過ぎて 思いやりがなくなったって 冷たくなったって ドラマじゃなくて本当に起こってんの?」「何がどうなっているのかわかんないけど やばい気がする」と漫画を締めくくっています。

 その後、大遅刻となったにしもとさんはこの顛末を説明し、先方からは許しを得られたとの事でした。このツイートには賛否両論飛び交う事態が起こっており、にしもとさんの行動に称賛の声があがる一方、うかつに声を掛けられない人たちからの反応なども飛び交い、400以上のコメントが寄せられています。

 もし、いかにも迷子な子どもが泣きじゃくっていたら、皆さんはどうしますか? 筆者の個人的な方法ですが、私なら
1.周りを見て保護者らしき人がいないか観察する
2.完全に迷子で保護者も近くにいなければ、子どもの目線にしゃがんで話を聞きだす
3.ショッピングモールなど建物内ならインフォメーションカウンターへ、建物外であれば110へ電話し、警察に来てもらう(場合によっては逆パターンで、近くにいる店員さんや施設の職員に迷子がいることを知らせる)
という手順をとると思います。

 これは筆者である私が子供ウケしそうな雰囲気を持っている事と、世話焼きオバチャンだからなせる事でもあるかもしれません。しかし、世の中そんな人ばかりでもなく、下手すると不審者に間違われて通報されてしまう事もあります。にしもとさんの場合、子どもの扱いが良かった事、迷子と確定した時点で速やかにインフォメーションカウンターに連れていく事ができたのが功を奏したといえますが、誰もが同じ事を同じ様にするのはやはり難しいかもしれません。通り過ぎて行った人も、親とはぐれたのではなく怒られて泣いているだけ、と思って通り過ぎて行ったのかもしれません。

 色々な考え方があり、一人一人の事情のあるので、迷子を発見した時にそれぞれができる事も限られてくるかもしれません。しかし、それでも、何かやれる事はあると思います。時間に余裕があれば、本当の不審者が来ない様に見守りながら、インフォメーションカウンターなどに電話するなどの行動もとる事ができます。一人一人が、他人事ではなく自分の知り合いの子くらいの気持ちで考えられると、世の中少しは変わってくるのではないでしょうか。子どもが苦手な人、面倒ごとに関わりたくない人もいるかと思います。ですが、もうちょっとだけ、みんなが少しだけでも周りを見渡す余裕を持てるといいな、と思います。

<記事化協力>
にしもとのりあきさん(@Nishimotta)

(梓川みいな)