2019年末から2020年初めにかけ、大規模な山火事で大きな被害を受けたオーストラリア。再び乾燥する夏の山火事シーズンに備え、ニューサウスウェールズ州消防局はヘリコプターを増強。カナダから購入したベル412は、オーストラリア空軍のC-17輸送機によって運ばれました。
昨夏、オーストラリアは大規模な山火事に襲われました。炎はニューサウスウェールズ州を中心に、広大な面積の山林と多くの人家を焼き、貴重な野生動物たちも犠牲になっています。
この大規模な山火事に際し、各国から援助の手が差し伸べられました。日本からも航空自衛隊第401飛行隊のC-130Hが派遣され、救援物資の輸送などに従事しています。
ふたたび山火事シーズンの夏を迎えるにあたり、ニューサウスウェールズ州消防局は上空監視・捜索救難用のヘリコプターを増強。カナダからベル412を購入し、オーストラリア空軍第36飛行隊のC-17輸送機によってカナダのバンクーバーから、オーストラリアのリッチモンド空軍基地まで運ばれました。
訓練などの機会に、NH90ヘリコプターをC-17で空輸している第36飛行隊ですが、ベル412を空輸するのは初めての経験。しかもカナダからオーストラリアまで、太平洋を斜めに横断する長距離飛行です。
普段空輸しているMH90とは形状も重量も違うことから、積載から機内での固定、そして積み下ろしに至るまでの手順は慎重に検討されました。まず、ローターを取り外して別のケースに収納し、胴体は傷つくのを防ぐため白い保護シートで覆われました。
オーストラリア空軍輸送集団司令官のカール・ニューマン代将は「国防省がC-17を導入した理由の1つが、このヘリコプターのように大きな荷物を必要な時、必要な場所へ長距離空輸可能な能力でした。C-17でベル412を太平洋横断して空輸するというのは、軍の装備がほかの政府機関を支援する顕著な例であり、オーストラリアのより広いコミュニティにプラスの結果をもたらすでしょう」と、今回のベル412空輸に際してコメントしてます。
ニューサウスウェールズ州消防局で運用支援マネージャを務めるクリス・ライダー氏は「この機材を使用して、私たちは小さな初期段階の火災を発見し、初期消火につなげることで、シーズンを通して被害の最小化に努めます。また、山火事の原因となる雷なども追跡します。気象状況に応じてヘリコプターを州全体に移動させ、その日に最も火災発生の可能性が高い場所へ配置します」と、ヘリコプターの運用について語っています。
昨夏に発生した大規模森林火災の傷は、まだ癒えていません。焼けて失われた森林を再生すべく、植樹作業も行われていますが、家や財産を焼かれた被災者の生活再建も途上です。再び大規模な火災被害を引き起こさないために、新たに加わったヘリコプターは空から見守ることになります。
<出典・引用>
オーストラリア空軍 ニュースリリース
Image:Commonwealth of Australia
(咲村珠樹)