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海洋恐怖症を立体造形で表現 世界的クリエイターがインド「階段井戸」から着想した「不渇の井戸と守護者のジオラマ」

 海や湖や川に関する画像やイラストを見ると、不安を感じてしまう「海洋恐怖症」。これをジオラマとして表現したクリエイターの投稿が、SNS上で話題を呼んでいます。

  • 「できました。製作日数は50日。
    今回のモチーフは、インドにある『階段井戸』と呼ばれる巨大な井戸。
    画像ではお魚がちょっとまぶしいですが、動画ではちゃんと見えると思います。
    内側の壁には、15個のろうそくが揺らいで光ります。
    動画公開は3日後、これから必死の形相で編集したいと思います」

    インドにある建造物「階段井戸」をモチーフにしたジオラマ作品を公開したたらそほびやさん。

     そんなつぶやきとともに、たらそほびやさんが投稿したのは、別名「ヴァーヴ」とも呼ばれる「階段井戸」というインドにある建造物をモチーフにしたジオラマの写真。

     日本で「井戸」というと、一直線に掘った穴から、水をくみ上げる設備が一般的ですが、階段井戸は階段を何段も地下に掘り下げ、そこに溜まった水を汲み取るというもの。

     そのスケールは桁違いで、インドの雨季にはため池としても活用されるほど。一部の階段井戸は、今から1000年以上前に建造されたものもあり、「王妃の階段井戸」を意味するインド西部「ラーニー・キ・ヴァーヴ」に関しては世界遺産に登録されているなど、歴史的建造物の側面も有しています。

     たらそほびやさんは今回、「不渇の井戸と守護者のジオラマ」という題目で、先の階段井戸をモデルとしたジオラマを作成。

     そして、自身の作品におけるコンセプトでもある、冒頭の「海洋恐怖症」をも意識したジオラマにしています。ちなみになぜそれ(海洋恐怖症)をテーマにしているかというと、曰く「イラストや画像は、これまでにも多くあったんですが、立体物はほとんどなく、『これを模型で表現すると面白いのでは?』という着想です」とのこと。

     しかしながら、今回モデルにした「階段井戸」は、構造が複雑でさらに資料や見取り図といったものを発見できず、かなりの部分を自身の想像で作りあげることになりました。

     また、「インドの方からクレームが来るようだとまずいので」と、あくまで“ファンアート”としての立ち位置の作品。「一応の設定は、『インドのどこかにあり、その水は冷たく澄み、決して枯れず、また病を癒やし、疫病を遠ざける』みたいな感じですね」。

     今回の作品おいて、たらそほびやさんが特に苦労したのが、「井戸の構造」と「守護者(魚)のデザイン」について。

     井戸の構造については、先述の通り正確な資料を発見できず、自身が製作可能な範囲の構造を検索するのに2か月ほど要しています。

    資料がほとんどなく、自身の想像で創造した階段井戸部分。

    それにより生み出された外観は異世界から転送されてきたかのよう。

     魚の姿をした守護者に関しては、インドの神様の化身である「マツヤ」をイメージした、美しさと威厳さが組み合わされた畏怖感あるデザインに。

    水辺にはインドの「マツヤ」をイメージした魚のデザイン。

    美しさと威厳さが合わさった様相となっています。

     いずれも一応の“原作”を有しているものの、たらそほびやさんの想像から生み出された今回の作品は、ほぼ「オリジナル」といってもよさそうな「現代アート」に仕上がっています。

    あくまで「ファンアート」であることを強調するたらそほびやさん。それを踏まえた上でも、その様相は古代より蘇りし現代アート。

     題材も含め、ワールドワイドな反響を得そうなジオラマですが、すでにたらそほびやさんの投稿には、海外から多くのコメントが寄せられています。その中に、インドの方がいるかはわかりませんが、「クレームが来ないように」というたらそほびやさんの不安は、ひとまず杞憂に終わっているようです。

     そんなたらそほびやさんですが、実は世界的に活躍されている人物。

    「MEGザ・モンスター」のファンアートでは原作者からコメントが寄せられたたらそほびやさん。

     2018年に公開された映画「MEGザ・モンスター」のファンアート作品では、原作者であるスティーブ・オルテン氏からコメントが寄せられたり、アメリカのゲームメーカー「Unknown Worlds」からは、作品の製作依頼のオファーが届き、作品を2点製作されています。

    「『エンドロールで出てくるなぞの日本人はあなたか』というメッセージをたくさんいただきました。」というサブノーティカの公式ジオラマ。

     このため作品協力を行った、海洋サバイバルゲーム「Subnautica(サブノーティカ)」のファンの方から、「ゲームをクリアした皆様から、『エンドロールで出てくる謎の日本人はあなたか』というメッセージをたくさんいただきました(笑)」というエピソードもあったそうです。いやはや凄い。

     なお、たらそほびやさんは、Twitter以外にも様々なSNSにて作品を発表しています。特にYouTubeチャンネル「Thalasso hobbyer たらそほびや」は注目度が高く、現在の登録者数が約93万人。その登録者の9割が海外からだといいます。

     その「Thalasso hobbyer たらそほびや」でも、今回の「不渇の井戸と守護者のジオラマ」の製作風景の動画を公開中。「25時間におよぶ映像データを、わずか26分に凝縮しましたので、むだなシーンはいっさいございません。あっという間の26分間(願望)よろしければご覧くださいませ」と、たらそほびやさんはメッセージを送っています。

    <記事化協力>
    たらそほびやさん(Twitter:@THobbyer/Instagram:@thalassohobbyer)

    (向山純平)

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