おたくま経済新聞

ネットでの話題を中心に、商品レビューや独自コラム、取材記事など幅広く配信中!

絵にも多様性を 見ている側の想像を膨らませる「歩行都市」

 開発者としてメーカー勤務をしながら、ロボットや乗り物をモチーフにした絵画、イラスト、オブジェなどを制作している“とんかちしょうねん”さん。

 「『役に立たないことを肯定する』を制作におけるコンセプトにしています」という作風が特徴的ですが、先日Twitterで投稿した「歩行都市」もまた、それが色濃く反映されたものとなっています。

  •  「今回のコンセプトは、『日常のスケール外に想像を膨らませる楽しさ』になります」

     「私は『都市』というものは、その国や土地にあるからこそ意味を成しながらも、一方で人の集合であり、かつ様々な表情を見せ、結果内部へ人々を誘惑する存在と考えています。そんな多面的で人間らしい部分を強調して、『旅人』のような様相へと変化させました」

     今回の作品「歩行都市」についてこう語るとんかちしょうねんさん。そこには城塞都市のようでありながら、手足が生え、右手には槍を握りしめるというまるで門番のような「都市」の姿。

     一方で、「歩行都市」には、「どういった心情を抱いているのだろう?」「この後どんな行動をするんだろう?」と、見る人によって「答え」が変わってきそうな「無機質さ」も印象的。

     「絵の『外側』で見る人がストーリーを作れるように、絵の『中側』には答えがないようにしているんです。なので、『どの程度までヒトに近づけるか』という部分がこだわった点であり、苦労したところでもありますね」

     「本作では、本体部分の色を黄色をベースにしているんですが、安っぽさを感じさせないように他色を暖色系にして、全体的にノスタルジックな雰囲気にまとめています。建物部分も1棟ごとに細かく色を変えて、飽きが来ないような工夫も施しているんです」

     と、苦労した点とこだわりのポイントを教えてくれました。

    「ヒトらしさ」と「建造物らしさ」のすり合わせが大変だったという投稿者。

     また制作過程においては、「人らしさ」と「巨大建造物ぽさ」の攻防が脳内で繰り広げられ、様々な葛藤の上で生み出されたとのこと。

     先ほど筆者は、歩行都市を見て「門番のよう」と記しましたが、それもまたひとつの「解」。そんな千差万別なイメージの柔軟性があるからこそ、投稿に対して1万を超えるいいねが寄せられたのかもしれません。

    ■ 「役に立たないことを肯定する」大切さ

     ところでとんかちしょうねんさんは、幼少期は工作活動に興じており、家電製品の分解といった機械いじりや乗り物・空想のロボットが大好きだったという人物。

     そんな工学系としてのルーツがある一方で、大学は美大に進学し6年間油絵を専攻。一見すると矛盾ともおもえる経歴ですが、それこそが自身の作風の特徴。最初に述べたように様々な機械のイラストを描かれています。

    幼少期から乗り物と空想ロボットが大好きだった投稿者。

    美大にて6年間油絵を専攻したと経歴の持ち主でもあります。

     また、「役に立たないことを肯定する」というコンセプトにより生まれた作品には、様々な反応があるとのこと。

     「作品をSNSに投稿した際に、『こんな形で上手く動くわけがない』『非効率だ』といったコメントが寄せられることが時にあります。確かに機械のイラストを描きながら、『役に立たないことを肯定する』というのは、矛盾しているように聞こえるかもしれません。機械というのは、『役に立つかどうか』という評価軸にさらされた存在ですから」

     「ただ、私たちも同様に『正解の形』というものはありません。私の経歴のように多くの矛盾があります。そういったある意味非効率的で、そして矛盾に満ちた部分を認めることが出来れば、『生きづらさを感じたり、外部の評価に苦しむことから少しでも解放されるのではないか?』と考えています」

     昨今は「多様性」という言葉が国内外で注目されていますが、作品を見た人たちの反応それぞれが、時代を反映していると言えるかもしれません。

     ちなみに最後、作品に託す願いとして「小難しい言葉を並べましたが、私の作品を見て少しでもワクワクしたり、クスっとしてもらえれば何よりですね(笑)」と教えてくれました。

    見ている側がクスッとするコミカルさも特徴。

    思わずワクワクする世界観。作品には様々な多様性があらわれています。

     なお、10月1日から27日にかけて行われている東急ハンズ渋谷店の「ゆけ!!俺のロボ展 ~ジパング編~」にて作品展示が行われているそうです。とんかちしょうねんさんが作りあげる不思議な世界。お近くの方は、ぜひ足を運んでみてください。

    <記事化協力>
    とんかちしょうねんさん(@tboy1123)

    (向山純平)

    あわせて読みたい関連記事
  • 華の会メール・バナー
    PR

    オトナ世代の恋愛マッチング

  • 華の会メール・バナー
    PR

    趣味でつながる30代からの恋愛マッチング \華の会メール/

  • 「見ざる・言わざる・聞かざる」を物理的に再現!1人で3猿をこなせるマスク
    インターネット, おもしろ

    「見ざる・言わざる・聞かざる」を物理的に再現!1人で3猿をこなせるマスク

  • “あのファミレスのロボ”が家庭で活躍 ベラボット3台導入の一般人に驚き
    インターネット, おもしろ

    “あのファミレスのロボ”が家庭で活躍 ベラボット3台導入の一般人に驚き

  • 40代の携帯ゲーム機
    ゲーム, ニュース・話題

    スーファミ、CDプレイヤー、PHS……「40代の通ってきたデバイス」に共感

  • もしも「食べられるガラス」があったら? アクリル製のリアルな“試作品”
    インターネット, びっくり・驚き

    もしも「食べられるガラス」があったら? リアルな“試作品”を美大生が製作

  • 数式を組むとシーラカンスが浮かび上がる?実在しない「シーラ関数」が話題
    インターネット, おもしろ

    数式を組むとシーラカンスが浮かび上がる?実在しない「シーラ関数」が話題

  • わーおしゃれなTシャツ……かと思いきや?夫が繰り出した斜め上の愛情表現
    インターネット, おもしろ

    わーおしゃれなTシャツ……かと思いきや?夫が繰り出した斜め上の愛情表現

  • セブンの「配送ロボット」実験開始 八王子・南大沢エリアが対象
    社会, 経済

    セブンの「配送ロボット」実験開始 八王子・南大沢エリアが対象

  • アスキーアートは手打ちで作れる!?まさかの方法で生み出される「モナー」
    インターネット, おもしろ

    アスキーアートは手打ちで作れる!?まさかの方法で生み出される「モナー」

  • 画像提供:架空昭和史作家 西川真周さん(@mashunishikawa)
    インターネット, おもしろ

    家のトイレが巨大ロボのコクピットに!昭和とSFが融合した「架空昭和史」の世界に夢…

  • ジュラシックなフタ押さえ!モササウルスが割り箸をくわえてカップ麺をガード
    インターネット, おもしろ

    ジュラシックなフタ押さえ!モササウルスが割り箸をくわえてカップ麺をガード

  • おたくま編集部Editor

    記事一覧

    おたくま経済新聞・編集部による監修or執筆

    ▼こちらのライターの最新記事▼

  • 防災について学べる「巨大地震のサバイバル」
    アニメ/マンガ, イベント・キャンペーン

    朝日新聞出版、「巨大地震のサバイバル」を特別公開 防災の日を前にWEBで無料配信…

  • 顔ハメパネルで“信金さん”に変身
    企業・サービス, 経済

    伊藤沙莉さん、顔ハメで“信金さん”に!? 新CMでコミカルな演技披露

  • テレビアニメ「野原ひろし 昼メシの流儀」
    アニメ/マンガ, 放送・配信

    「野原ひろし 昼メシの流儀」アニメPV公開 主題歌はMega Shinnosuk…

  • 山梨から“青いうどん”登場 富士山を表現した「青い富士山うどん」発売
    商品・物販, 経済

    山梨から“青いうどん”登場 富士山を表現した「青い富士山うどん」発売

  • 新幹線の1車両を貸し切った「日清焼そばU.F.O. ソースエクスプレス」を2025年8月23日に運行
    イベント・キャンペーン, 経済

    新幹線で「U.F.O.」を実食!特別列車「ソースエクスプレス」8月23日限定運行…

  • スーパーで「ピュアポテト」を手にした横浜さん
    商品・物販, 経済

    「今年一、肉体的に辛かった」横浜流星さん 湖池屋「ピュアポテト」新CMで全力疾走…

  • トピックス

    1. 松屋「担々麺ハンバーグ」を実食 記憶が混乱するレベルに美味しい……!

      松屋「担々麺ハンバーグ」を実食 記憶が混乱するレベルに美味しい……!

      松屋は8月19日から一部店舗限定で「担々麺ハンバーグ」を販売中です。鉄板にのったハンバーグに担々麺が…
    2. 7億円の当せん番号決定の瞬間を目撃!「サマージャンボ」抽せん会参加レポ

      7億円の当せん番号が決まる瞬間を現地取材!サマージャンボ抽せん会レポート

      1等・前後賞合わせて7億円が当たる「サマージャンボ宝くじ」と、1等・前後賞合わせて5000万円が当た…
    3. 加藤茶、伝説の“カトケンゲーム”に挑戦 新番組「第三学区」放送開始

      加藤茶、伝説の“カトケンゲーム”に挑戦 新番組「第三学区」放送開始

      お笑いタレントの加藤茶さんが、まさかの“自分ゲー”に挑む。テレビ神奈川の新番組「第三学区」(だいさん…

    編集部おすすめ

    1. たいちくんX投稿より

      ゆりにゃさん元パートナー、Xで未練吐露→ネットの反応は冷ややか

      インフルエンサー・ゆりにゃさんの、公私にわたる元パートナーである「たいちくん」こと齊藤太一氏が、8月17日に自身のX(旧Twitter)を更…
    2. 匿名質問文化を支えた「Peing-質問箱-」終了 2017年の誕生から8年

      匿名質問文化を支えた「Peing-質問箱-」終了 2017年の誕生から8年

      匿名で質問やメッセージを送れるサービス「Peing-質問箱-」が、2025年8月29日をもって終了することが発表された。運営は8月15日付で…
    3. マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗を訪れた記者が感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドのポケカ騒動 期間中の店舗で感じた“異様な雰囲気”

      マクドナルドは8月11日、ハッピーセット「ポケモン」のポケモンカードキャンペーンを巡る混乱について公式サイトで謝罪しました。期間限定カードを…
    4. 「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      「珍しい苗字」より盛り上がる? 地域特有の苗字をまとめた地図が話題

      大学進学や就職で交友関係が広がると、今までの人生で見たことがない苗字を持つ人と知り合いになることがよくあります。見慣れない苗字に遭遇したとき…
    5. 「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      「オラと博士の夏休み」初のスマホ版がでたゾ!でも日本は対象外……

      累計販売90万本を超える人気作「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』~おわらない七日間の旅~」が、初めてスマートフォンで遊べるようになり…
    Xバナー facebookバナー ネット詐欺特集バナー

    提携メディア

    Yahoo!JAPAN ミクシィ エキサイトニュース ニフティニュース infoseekニュース ライブドア LINEニュース ニコニコニュース Googleニュース スマートニュース グノシー ニュースパス dメニューニュース Apple ポッドキャスト Amazon アレクサ Amazon Music spotify・ポッドキャスト