編み目の柔らかさもあり、ふっくら、ほっこりしたフォルムが魅力のあみぐるみ。ハンドメイド感あふれるアイテムですが、素材は毛糸だけに限りません。細いミシン糸を使い、極小サイズのあみぐるみ作品を作っている作家さんもいるのです。
大きさわずか数ミリという作品を作っているのは、あみぐるみ歴9年になるつのだかつとしさん。自らを「あみぐるみすと」とし、Twitterに様々な作品を発表しています。
筆者が驚嘆したあみぐるみは、パンダをモチーフにした作品。指先にちょこんと乗った数ミリの姿と同時に、これくらいクローズアップすると編まれているミシン糸の表面に毛羽立ちがあるのが確認でき、毛糸のあみぐるみをギュッと縮小したかのようなディティールが見てとれます。
小さなサイズにも関わらず、使われているのは白と黒2色の糸。この小ささで糸替えまでできるのにはびっくりです。
つのださんに話をうかがうと、使っているのはレース編みなどに使われる25号(0.35mm)という細いかぎ針。ミシン糸も100番という細さ。
ミシン糸は、重さ1ポンドの素材をどれくらいの長さにしたかを基準に番手が決まっており、数字が大きいほど細くなります。通常のミシン縫いに使われるのが50番~60番程度なので、100番がどれだけ細いか、想像がつくのではないでしょうか。
かかる時間は「はかっていないのでなんとも言えませんが、おそらく20~30時間くらいだと思います」とのことです。細かい作業ではありますが、編み始めるともくもくと進めてしまいそうですね。
これだけ糸が細い分、編み始めとなる“作り目”も1ミリ以下という極小サイズとなり、作るのが難しいとのこと。つのださんは「作り目が一番の山場で、作ることに慣れていないと難しいです。できてしまえば、それ以降は比較的スムーズに編み進めていけます」と話してくれました。
例として、豆柴(犬)を作る様子を見せてもらいました。糸が細いので、あまり大きな力をかけると切れてしまいそうに見えます。
茶色と白の糸を使い分け、柴犬の頭を作っていきます。大きさは指先の4分の1あるかないか、という感じ。細かく、神経を使う作業です。
編みあがった頭と、手足と胴体部分。これをさらにつなげていきます。小さくても形が整っているのは、土台となる“作り目”をしっかり作っているから。
完成した豆柴は、手のシワに隠れてしまうような大きさ。さすがに中にパンヤなどを入れる余裕はありませんが、ミシン糸の弾力で形が維持されています。
小さい中にもデフォルメされた姿が可愛い、つのださんのあみぐるみ。ゼムクリップや5円硬貨の穴をくぐって遊ぶ様子は、ミクロな中にも楽しげな声が聞こえてきそうです。
あみぐるみの魅力は、糸とかぎ針だけで表現できるところ、とつのださんは話します。「慣れてくると、編み図を見ないで頭の中でイメージしながら編めるようになります。そうすると、紙にペンで書くように、糸とかぎ針で表現できるようになります」
さすがにミシン糸で極小サイズの作品をいきなり作るのは無理ですが、温かな印象のあみぐるみ作りに挑戦してみたいと考える方も少なくないはず。どのように取り組んだら、うまく編めるようになれるのでしょうか。
編み方が上達する秘訣について、つのださんは「とにかく楽しむことです。あと、ただ編み図を見ながら編むのではなく、なぜそのように編むのか、などの意味を考えながら編むと上達が早くなると思います」とアドバイスしてくれました。
新型コロナウイルス禍で“おうち時間”が当たり前となった現在、新しく手芸を始める人も多くなっています。あみぐるみ作りは、きっと新しい趣味として挑戦しがいのある趣味になるかもしれません。
ミシン糸のあみぐるみは作り目ができれば7〜8割は完成したようなものだと思ってる。 pic.twitter.com/a9jjkzDFq8
— 角田勝年 / つのだかつとし / Katsutosi Tsunoda (@amigurumist) April 3, 2022
<記事化協力>
つのだかつとしさん(@amigurumist)
(咲村珠樹)