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フレームから外板まで木製! 原付ミニカーを自作する「りひと工業自動車部」

 1970年代から1980年代初めにかけて、一時人気になったことがある原付ミニカー。原付バイクと同じ排気量50cc以下のエンジンなどを使った、1人乗りのパーソナルな自動車です。

 このミニカー、メーカーが作る量産車とは別に、自作してナンバーを取得し、楽しんでいる愛好家も存在します。その中で、フレームや外板を木製にしたミニカーを作っている「りひと工業自動車部」の代表者に話をうかがいました。

  •  ミニカーとは、総排気量20cc超〜50cc以下または定格出力0.25kW超〜0.6kW以下の原動機(エンジンもしくはモーター)を搭載した、1人乗りのコンパクトな自動車。3輪もしくは4輪で安定感があり、屋根付きで雨風をしのげる点が原付バイクより優れた点です。

     1970年代〜1980年代初めにかけて一時ブームになったことがありましたが、運転には普通自動車免許が必要なことから次第にユーザーが軽自動車などに流れ下火に。しかし最近は、一部のコンビニで配達サービスに使われているトヨタ車体の「COMS(コムス)」など、パーソナルな電気自動車として再び注目されつつあります。

     名前は「りひと工業自動車部」といいますが実際の会社組織ではなく、兵庫県で大学時代の同期4人が集まって活動している、もの作り集団だとのこと。「欲望のままに」作りたいものを作る、ということを目標にしているそうです。

     ミニカーを自作しようとしたきっかけは、バイク通学をしている時、雨でびしょ濡れになるのが最大の要因だったのだとか。当初は、市販のミニカーやキャビンスクーターを入手することも考えたそうですが、価格面で断念せざるをえなかったといいます。

     その後、バック(リバース)ギアのついたエンジンや作業場所、作業時間が確保できるようになり、ミニカー作りに取り組み始めます。「学生時代にロボコンや多脚ロボットを作った経験もあり、メッサーシュミット(KR175/KR200)やほかのミニカーの構造を調べるうちに不満が出てきた部分もあります」と、自作に至った経緯も語ってくれました。

     ミニカー作りで重視している点は「部品の汎用性が高いこと」だといいます。「高性能なワンオフエンジンや、特殊な材料が入手できれば高性能な車両を製作できますが、故障した際に対応が難しくなります。通勤用の車両を開発するのが目的なので、故障した時を考えなるべく簡単に入手できる部品やエンジンを選定しています」

     ちなみにエンジンはタフで知られるカブ(ホンダ・スーパーカブ)系のもの、ワイパーなどはピザの宅配などで使われているジャイロキャノピーのものを流用しているのだとか。現在までに2台のミニカーが作られました。

    「りひと工業自動車部」の自作ミニカー1号機(りひと工業自動車部さん提供)

     最初に作られた1号機は、後ろ半分がホンダ・スーパーカブそのまま、といった感じ。試作的な側面が強いためか、初期の段階ではフレームがむき出しで屋根もないスタイルとなっており、前輪はスクーターから流用しています。

    後ろはカブそのままな1号機の給油風景(りひと工業自動車部さん提供)

     燃料タンクは後部のフレームに小さいものが取り付けられています。ガソリンスタンドで給油する姿を見ていると、なんとも不思議な光景。

     2号機はフレームから自作したのでカブではなく、坂道発進やバック走行にも対応できるようクラッチのついた中国製ATV(全地形対応車)のエンジンが使われています。

    自作ミニカー2号機(りひと工業自動車部さん提供)

     形式は前2輪、後1輪の3輪車で、昔のオート3輪とは逆のレイアウト。これについては「カーブの際に横転しにくい」「前1輪だと足の間にタイヤがあり乗り降りが不便」「後2輪にするとディファレンシャルギアが必要になって部品点数が増え、重量増と故障の元となる」という3つの理由から選択されたとのこと。

     開発手法は試行錯誤している部分が多く、完全に確立されているわけではない、といいます。最新の2号機では、設計に3DCADソフト「Fusion360」を使い、エンジンなど既製品と実際に乗る人の体をモデリングした上で、1号機を寸法測定したデータをもとに配置。フレームはその隙間に当てはめるようになっているのだとか。

     製作については「とても大変でした……」と語るように、設計に9か月、製作に3か月〜4か月とほぼ1年以上を費やした2号機。材料を切り出すために図面を実寸法通りに印刷し、書き写す作業だけでも「印刷した図面は数センチの厚みになり、書き写すだけで丸々2週間以上かかりました」といいますから、想像以上に大変です。

     もちろん、必要な強度を確保しなければいけないので、組み立て作業自体も大変だったとのこと。木材を接着剤で貼り合わせるだけでなく、強度が必要な一部には鉄の部品や溶接も用いられているそうです。

     運転している際は、やはり注目を集めるそうで「子どもに指さされて『ママなにあれー』と言われたことや、周囲を走っている車の人から笑顔で手を振られることは多いです」と話してくれました。その反面「警察官は概ね目を合わせてくれません」というところが興味深いですね。

    本格的な車らしくなった2号機(りひと工業自動車部さん提供)

     現在は2号機が破損したため、新たに3号機の設計を進めているのだとか。作ってみたいミニカーの構想はたくさんあるそうで、3輪ではなく4輪のミニカーについても「安定性や収納力に魅力を感じており、今後開発する可能性はあります」とのこと。

     一般の自動車を開発するには色々と大変ですが、ミニカーの場合は比較的自作しやすい面があり、かつてのミニカーブームでも車メーカー以外の企業が参入し、様々なモデルが誕生しました。りひと工業自動車部さん以外にも、個人レベルでミニカーを自作している愛好者もいます。

    「Maker Faire Tokyo 2018」に参加した1号機(りひと工業自動車部さん提供)

     YouTubeの「りひと工業自動車部」チャンネルには、1号機を作って走行するだけでなく、東京で開催された展示会「Maker Faire Tokyo 2018」に参加した際の動画も投稿されており、何もないところからミニカーを形にしていく様子が紹介されています。自分だけのオリジナルな車を設計し、作る醍醐味を味わうのも楽しいかもしれませんよ。

    <記事化協力>
    りひと工業自動車部さん(@XLfLJMz5GLNEjGS)

    (咲村珠樹)

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